プーランのパン屋さん日記〜何かをわすれてしまいそうで。
季節が冬から春に変わる時、少しだけこころがゆらめく。
いれかわっていく。
そのいれかわりのせとぎわで、何かをわすれてしまいそうで。
ゆらゆらゆらめきながら、でもあたらしい季節が始まる、ちょっとほっとする感じがする。
でも季節のいれかわりはどこなんだろう。
いつもわからないうちにいれかわっていく。
ちいさな子がお店にはいってきた。
「いらっしゃいませ!」
その子は、にこっとうなずいて「あんぱんふたつください!」と言った。
「はい!」
プーランはショーケースからあんぱんをトングでとって袋にいれようとする。
「あんこは何色?」
「ん?」
「あんこ何色ですか?」
「あんこは黒ですよ」
「んー」
「どうしたの?」
「そのあんぱんじゃない」
プーランは少しこまった。
「あんぱんだよね?」
「あんぱん」
「何色のあんこがいいのかな?」
「あのー」
「うん」
「ピンク色、うすい」
なるほど。
「さくらあんか」
プーランは考える。
「ちょっとまってね」
プーランは、奥に行き、白あんを少しボウルにとりわけ、しょくべにをまぜる。
こねる。
うすいピンク色になったあんをへらですくい、あんぱんの上にのせる。
「きょうはこれでいいかな?」
その子はニコニコわらって、「ちょっとちがうけどいいよ!」と言った。
プーランはさくらあんがのったパンをラップでくるんで袋にいれて渡す。
その子は袋をだいじにかかえてプーランをみて言う。
「ありがと」
「はい!」
その瞬間、季節がいれかわる。