【ショートショート】なんで私をフォローしないの?
「はぁ、全然おもしろくない」
イイねもフォロワーも増えない。
なんで?
毎日発信してるよ?
読んでもらえそうな時間にだって発信してるのに。
全然反応が返ってこない。
「おなじ時期に始めたあの人なんて、もうフォロワー100人いったのに」
ありがとうございますの言葉と一緒に流れてくるフォロワー数が増えた報告。
そりゃあ、嬉しいよ。
嬉しいけど……
「なんであの人だけ」
いろんな人と交流している内容を見るとイライラする。
増えていくフォロワー数やイイねの数とおなじように、あの人への憎しみが増していく。
私だってがんばっているのに。
なにがいけないの?
フォロワーが増える方法を試しているのに。
努力が実らないのに続けるとかバカらしい。
面倒くさくなってきた。
「あーあ。このままやめちゃおうかな」
どうせSNSがなくても死ぬわけじゃないし。
翌日。
職場に新しい人が入ってきた。
「よろしくお願いします!」
おお、すごく元気な子だ。
彼の若々しさにすこし圧倒されつつも
仕事を教えていく。
「今日入った新人君。元気ね〜」
「たしかに!わからないことはすぐ聞いてメモをとるし、一生懸命覚えようとしているのが目に見えてわかるから、ついついがんばれ!って応援したくなっちゃうのよね〜」
それに積極的に声をかけてくれるし。
他の職場の方の会話に、たしかにと思った。
なんであんなに一生懸命になれるんだろう。
まあ、職場に慣れるためでもあるだろうけど、
多分あの元気さは、彼の性格でもあると思った。
「ねぇ、どうしてそんなに元気なの?」
「へ?」
夕方。
出勤初日が終わった彼に質問してみた。
「いや、なんていうか、すごく真面目というか。誰にでも積極的に声をかけているから元気だなと思って」
「あぁ、なるほど。それはうちの婆ちゃんの影響です」
「お婆さん?」
「はい。うちの婆ちゃん。すごく厳しい人で。家の中を走り回るだけで怒るんです。静かにしなさい!って」
おぉ、それはそれは。
「それで、あいさつするときは必ず自分からしなさいって言われていて。待っていてもあんたを知ってくれる人なんていないんだから。自分からあいさつして自分を知ってもらいなさいって」
「待っていても、知ってくれない……」
「よく知らない人に近づこうとしないのとおなじだと思うんです。相手のことを知らないと警戒しちゃうんですよね。仲良くなれそうか。それとも自分を傷つける悪い奴なのか」
その警戒をといて大丈夫と思ってもらうために
自分から積極的に声をかけていく。
「それが大切だなと思って、心がけています」
「そっか」
私はなにか勘違いをしていたようだ。
SNSで反応がないって文句ばっかり言っていたけど、よく考えたら私、他の人と交流していなかった。
発信して、はいおしまい。
そんな状態だった。
自分が発信したいことだけして
あとは来るのを待つなんて
「ラクをしすぎだな」
そりゃあ、誰も私に興味を持たないわけだ。
「ありがとね!」
「へ、なにがですか?」
「ううん。なんでもない!」
ちょっとやり方、変えてみよう。
まずは、
「はじめまして」から。
「なんで私をフォローしないの?」
―おわり―
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