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インターンシップもビジョンもいらない。中小企業の「採用」は通常業務と切り離してはいけないワケ

「採用って、本当に大変で……」―

中小企業の経営者の方々からよく耳にする言葉です。僕は全国各地、その土地に根付く「地場工務店」に特化したコンサルティングを行っています。クライアントは、従業員数10名~50名程度の小規模事業者が大半です。この規模の会社さんだと、日常業務だけで毎日やることが山積みです。

加えて採用も…となると、そんな余裕はほとんどなく、皆さんすっかり及び腰になっています。さらに地方の小さな会社ばかりですので、採用競争力は乏しく、採用が「ただ大変なだけ」で終わっているケースが大半です。

僕自身も中小企業の経営者ですので、採用の難しさはよく分かります。だ、よくよく話を聞いていると、お金も時間もないはずなのに、お金と時間に余裕がある大企業と同じような取り組みをやろうとしているパターンが多いということに気づきました。

採用のために特別なことをやらない

中小企業はお金も人も時間も余っていませんので、通常業務プラスアルファで採用のために何かをしようとすると、会社も社員もあっという間に疲弊してしまいます。

だからこそ、僕は採用活動において「採用業務を通常業務と切り離して考えない」ことをすごく大切にしています。

例えば弊社の場合はコンサル会社ですので、お客様先で様々なテーマの研修を行います(マーケティング、営業、経営戦略など)。ここで扱う内容を少しだけアレンジして、選考時のワークとしても使っています。

そのメリットは2つ。

① 選考のために特別なプログラムを作らなくて良い
② 既存社員の育成につながる

①はそのままです。僕も採用支援に入りはじめてから知ったのですが、会社説明会や選考のワークのためにわざわざプログラムを新しく作っている企業が少なくありません。もともと自分たちが使っているもの、持っているものを応用すれば、準備はグッと楽になるはずです。

また、②の「既存社員の育成につながる」という点について。まだお客様先でのこの研修の実務経験が少ない若手社員にとっては、採用イベントのファシリテーションを行うことが、実践トレーニングの一環にもなっています。人に教えることこそが上達の近道。これは、コンサル業界以外でも応用可能な考え方だと思います。

ある日のワーク。

僕たちは時間もお金も足りていないことを自覚して、一石二鳥・三鳥を目指していかなくてはいけません。

社長の稼働も同じです。採用イベントとなると社長が前に出て話さなくてはいけない、と思われがちですが、イベントに社長が出るのではなく、社長がいるところに学生を呼べば、負担はグッと減ります。

例えば、採用があろうがなかろうがご飯は毎日食べますので、そのうち1回を採用候補者との「社長メシ」にしても大変ではないはずです。

採用に「ビジョン」は必要ない

ビジョンという言葉をよく耳にするようになりました。会社は理念・ビジョンを掲げ、それを胸に経営するべきだという考え方はすでに広く普及しています。

採用においても社長がビジョンを語り、目指すべき未来を示すことで、候補者の共感を呼び、優秀で価値観の合う人材を獲得できると言われています。

僕自身、ビジョンの大切さを説く書籍「ビジョナリーカンパニー」には感銘を受けましたし、ビジョンを持つ意義もその価値も感じています。しかし、ビジョンというのは、経営者がぶれないために、そして社員が迷わないためにこそ大切であって、必ずしも採用で語らなければいけないものではないと思うのです。

そもそも、ビジョン、ビジョンと言葉ばかりが先走っている印象がありますが、この「ビジョン」という言葉も実は曖昧です。1年後の未来を指しているのか、10年後の未来を指しているのか、人によって使い方も様々です。 仮に10年後の話をしていたとして、これだけ世の中が激変する中で、10年後の未来を正しく予想できる人がどれだけいるのでしょうか?

もちろんビジョンが刺さるメンバーもいるでしょう。でも、ビジョンが刺さらないメンバーがいたっていいと思うんです。

社長が未来を語っている横で「でもそれ、本当にできるんですか?」と穿った見方をする人がいてもいいし、未来なんてよく分からないけどとりあえず目の前のことに一生懸命頑張る人がいてもいいんです。

採用に取り組むにあたって、社長に「では10年後の未来を考えてください。ビジョンを示してください」と言うと、急に採用に対してのハードルが上がります。すべてを用意しなければ採用がはじめられない、と思うといつまでたっても及び腰のままです。

だからこそあえて僕は言いたい。
採用にビジョンは必要ありません。

よくビジョンに共感して採用した人材は辞めづらいとも言われますが、そんなこともありません。様々な会社の採用をお手伝いさせていただきましたが、ビジョンを語ったほうが退職者が少ない、という相関関係は見られませんでした。

誤解のないように強調しますが、ビジョンにコミットすること自体は素晴らしいことです。しかしビジョンは採用においての絶対条件ではありません。

「ビジョンがなければ採用ができない」という思い込みを壊したいだけですので、すでにビジョンがある場合は採用の場面で語っていただいても全く問題ありません。

ただ、弊社は採用活動の一環として、僕がビジョンを大々的に語るようなパフォーマンスはとっていません。僕が前に出て話さなければいけないと、いつまでも僕の時間が採用に割かれてしまうからです。できるだけ負担の少ない採用活動を行うために、僕が前にでる機会は極力減らそうとしています。

インターンシップも必要ない

もう1つよくある誤解が、「新卒採用をはじめるなら、インターンシップをしなければいけない」というものです。

新卒採用において広報活動の解禁日は大学3年次の3月1日とされています。しかし実際にはそれ以前からインターンシップという形で学生とコミュニケーションをとり、優秀な学生に対しては3月になった瞬間に内定を出し囲い込むという手法が横行しています。素直に3月になってから採用をしようとすると、すでに時遅し、というわけです。

そこで、新卒採用をはじめるのであればインターンシップから用意しなければいけないと考えられがちですが、これもただの思い込みです。

インターンシップを開催するとなれば、プログラムを考えたり、ファシリテーション役の社員の時間を確保したり、会場を用意したり、とにかく大変です。わざわざそんな大変な思いをする必要はないのです。

各社がこぞってインターンシップを開催するのは、広報活動の解禁前から学生と接触し、彼らの中で自社の認知度を上げていくことが目的ですので、よく考えれば必ずしも職業体験という形式である必要はありません

インターンシップという形式にとらわれず、飲み会や社長メシ、ゴルフのお供などもっとカジュアルな企画でいいんです。

僕は麻雀が趣味なので、採用でも「麻雀就活」というイベントをやっています。

中小企業は、大企業と同じやり方で戦ってはいけない

世の中で一般的に語られている「採用論」のほとんどが、東京にある大きな会社の話です。何万人の応募を集めたとか、何百人採用できたとか……。たしかにスゴイとは思いますが、小さな会社がその真似をしても、ただただ疲れて、途中で力尽きるだけです。

弊社のクライアントである地方の工務店、あるいはまちづくりの中でご縁をいただいた地方の小さな会社やお店。

一般的には知名度もなく、採用競争力は乏しいですが、どの会社も素晴らしいポテンシャルを秘めています。他社に負けないこだわりと、自社の強み、そして誠実な仕事ぶりで長く地域の方々に愛されてきた会社ばかりで、そこで働く人々も皆、プライドを持って、誇り高く働いています。

こんなに素晴らしい会社、かっこいい人々ばかりなのに、求人票で比較されれば、規模や条件が劣るからと除外されてしまうのです。こんなにもったいないことがあっていいのでしょうか?

日本では、全企業のうち99.7%が中小企業だと言われています。そしてそのほとんどが、今、人材不足で悩んでいます。しかし問題なのは、会社の規模や立地ではなく、戦い方なのです。

戦い方を変えることで、地方の会社であっても、小さな会社であっても、優秀な人材を獲得できるチャンスは必ずあります!

そして、優秀な人材と素晴らしい会社がきちんと出会うことができれば、日本を支える中小企業はもっともっと強くなり、ひいては日本の社会や経済に良いインパクトを与えることも期待できます。

そこで僕が経営者として、そして地方の会社を支援するコンサルタントとして試行錯誤してきたリアルな採用をまとめた実験レポートを、一冊の書籍としてまとめました。

2023年2月発売!時間とお金をかけずに欲しい人材を集める「SNS採用」
https://www.amazon.co.jp/dp/449554134X

目指したのは、「ちょうどいい採用」。

「採用ってこんなにお金がかかるの?」ー僕の採用活動も、そんな驚きからのスタートでした。

採用本を読んでみても、書いてあるのは都会の大企業向けのノウハウばかり。ならば自分で考えてみようと採用にマーケティングを取り入れ、運命の1人を見つける方法を模索してきました。

今まさに、採用に悩んでいる経営者の方々にお読みいただき、現状を打破するきっかけにしていただけると嬉しいです。

時間とお金をかけずに欲しい人材を集める「SNS採用」

株式会社SUMUS 代表取締役
小林 大輔


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採用の仕事

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