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【省エネ・脱炭素】住宅性能は地域ごとにローカライゼーションされていく~Replanフォーラム2024 in 宮城を開催しました

2024年3月22日(金)、宮城県仙台市にて、Replanフォーラム2024 in 宮城『選ばれるは、つくれる。』〜地域工務店の役割と未来〜を開催しました。

世界と比較して遅れに遅れている日本の住宅性能。「省エネ・脱炭素化」を掲げながらも、法整備は一向に進まない現状もあります。

国による強制力をもった移行が進まない以上、これからは、各県・各市にあわせた住宅を自治体や地域の工務店が先導してローカライゼーションしていく流れに変わっていくと予想されます。

すでに県や市単位で独自の基準を設定し、脱炭素化社会の実現に向けて先進的な取り組みを成功させている地域もあります。

そうした取り組み事例をご紹介しながら、脱炭素社会に向けてそれぞれの地域で連携して、地域社会に貢献しながら持続可能なビジネスモデルを構築するための方法を考えていこうと企画したのが「Replanフォーラム」です。


そもそも「Replan」とは?
→北海道の住宅の断熱性能の歴史をつくってきた住宅マガジン

「Replan」とは、1988年に北海道の住宅雑誌として札促社 が創刊した住宅マガジンです。地域で活躍する工務店や建築家の取り組みを積極的に取り上げ、「豊かな暮らしを支える」情報を発信し続けています。

そんな中でも特に力を入れているのが「断熱性能」と「デザイン」という2つのテーマです。

今でこそ気密・断熱といったキーワードが家づくりで日本中で注目されるようになってきましたが、Replanでは雑誌を創刊した36年前から断熱性能に関する情報発信を続けています。手前味噌にはなりますが、北海道における住宅性能の引き上げの一翼を担ってきたメディアです。

寒冷地だからこそ、断熱性能が家の中での暮らしぶりに大きく影響します。北欧住宅など世界でも最先端の高性能住宅を研究し、それを地域に浸透させる取り組みを続けてきました。

雑誌の刊行だけでなく、行政とビルダー団体等が連携して断熱性能の地域基準を設定することに関与したり、まちづくりに携わったりと様々な活動をしています。

北海道の家は断熱性能が高く暖かい。というよりも他の地域の家が寒すぎる。

この「Replanフォーラム」は、北海道における住宅の断熱性能・省エネの向上のための取り組みを、東北をはじめ日本全国へ広げていこうとはじまりました。

地域社会に貢献しながら持続可能なビジネスモデルを構築することは、今後すべての地域の住宅産業の命題となります。

「北海道は寒いけど、家の中はむしろ暖かい」と言われる通り、北海道の住宅は、高い断熱性を誇ります。冬場のヒートショックでの死亡率は全国平均と比較しても低いのです。

北海道の住宅性能が高い背景には、もちろん「寒すぎて、家が暖かくないと暮らせない」ということもありますが、暮らしやすい住宅をつくるために早い時期から地域をあげて住宅性能の向上に取り組んできたことがあります。

道独自の高い性能基準を設定し推進してきたことで、省エネでありながら、快適で心地の良い住まいを実現する住宅が広がっていきました。

しかしこれは、違う見方をすると「北海道の家が暖かい」のではなく、「北海道以外の地域の日本の家が寒すぎる(=住宅性能が低すぎる)」と言い換えることができるかもしれません。

日本の住宅性能はグローバル基準と比較して圧倒的に低いということはすでに多くのところで指摘されている通りです。実際に、今、日本で当たり前に建てられている標準レベルの家でも、欧州では性能が低すぎて一切建てることができません。

夏は暑くて、冬は寒いのが当たり前。冬場は家の中にいるのに外にいるのと同じような厚着をして、暖房をフル稼働して震えながら過ごしている…そんな光景が身に覚えのある方も多いのではないでしょうか。

断熱性能の低い家では、ヒートショックが起きやすかったり、免疫力が低下したりと健康面への悪影響も大きく、さらにエネルギー消費も甚大になり、省エネ・脱炭素化を目指す社会の流れにも逆行してしまいます。

省エネ基準法の改定など色々なかたちで議論がされてはいますが、そのスピードは非常に遅く…、また太陽光の設置といった自然エネルギー活用の話になりがちで、家そのものの性能を上げるといった議論はさらに遅れています。

少なくとも、グローバル基準に適合するような高い住宅性能が日本全体の基準として法律で義務化されることは、今のところはありません。

なぜ、北海道は地域独自の高い性能基準を浸透させることができたのか?

では、今後どうなるかと言うと、国が先導してグローバル基準まで引き上げてくれることは期待できないため、都道府県や市区町村などの自治体単位で考え、独自基準を作っていくことになります。

すでにそれを実施しているのが北海道であり、それ以外にも鳥取県や北九州市なども地域基準を設け、脱炭素化に向けた省エネ住宅の推進にいち早く取り組んでいることで有名です。

ここで少しだけ裏話を……。

北海道がいち早く地域独自の基準を設けて、脱炭素化・住宅の高性能化に向けて動けた理由の1つが、「大手ハウスメーカーがほとんど参入してこなかったから」です。

大手ハウスメーカーがつくる家は、九州でも関東でも東北でも、基本的には同じような仕様です(オプションやグレードの差はもちろんありますが)。そしてその仕様は、日本の低すぎる住宅性能基準が前提となっているので、そのまま北海道に持ってきても、寒すぎて住めないのです。

結果的に北海道では、地元の工務店やビルダーが地域に合わせた住宅を建ててきた、という歴史があります。そのため、自治体や工務店、そしてメディアが連携して「北海道の住宅のための基準をつくる」という動きが取りやすかったのです。

これからは、北海道や鳥取県のように各県・各市にあわせた住宅を自治体や地域の工務店が先導してローカライゼーションしていく流れに変わっていくと僕たちは考えています。

脱炭素化社会に向けた地場工務店の役割・地域連携を考える「Replanフォーラム」

そこで、脱炭素社会に向けてそれぞれの地域で、工務店同士が、また民間と行政が連携して、より良い未来をつくっていく方法を考えようと企画されたのが、「Replanフォーラム」です。

第1回目は宮城県・仙台市で開催しました。仙台市の脱炭素に向けた取り組みを紹介するほか、「省エネ・脱炭素」「心豊かになる付加価値の創造」「地域工務店同士の連携」の3つのテーマについて講演を行いました。

15社・28名の住宅工務店様をはじめ、東北電力様などにもご参加いただきました。

●「仙台市の脱炭素化に向けての動き」

仙台市地球温暖化対策推進課の横田一馬氏より、「仙台市の脱炭素化に向けての動き」と題し、脱炭素社会の加速に向けた仙台市独自の取り組みや令和6年度の補助金制度についてお話しいただきました。

●「省エネ・脱炭素」の取り組み

東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻・准教授の前 真之氏をお迎えし、「省エネ・脱炭素」をテーマに、断熱・気密や太陽光、パッシブ設計など性能面の重要性や、鳥取県などさまざまな地方自治体の取り組みについてご講演いただきました。

●「住宅工務店の生き残り戦略2024」

僕からは、「住宅工務店の生き残り戦略2024」と題し、住宅市場や競合企業の変化など、住宅産業の現状を紹介し、どのように成長戦略を立て「心豊かになる付加価値の創造」を行っていくのかについてお伝えしました。

●「地域工務店同士の連携」について

青森県のミライエプロジェクトとしても活動される、(株)ヤマノアーキデザイン代表の工藤晃史氏をお迎えし、「地域工務店同士の連携」による安定受注の獲得や、契約に至るまで顧客にどのようなアプローチを行っているのかについてご講演いただきました。

脱炭素に向けて地域を先導する工務店を応援します!

もう一度言いますが、日本の住宅は世界と比べてかなり遅れています。それは「暮らしやすさ」という意味でも、「省エネ・脱炭素」という視点で見ても、です。

2025年に義務化が予定されている断熱性能基準も、グローバル基準と比べてあまりにも低く、その差は開く一方です。

国が変えてくれるのを待つのではなく、都道府県や市など自治体独自の動きに変えていきたい。その必要性を啓蒙し、地域を先導する地場工務店の方々を応援したい。

そんな想いで「Replanフォーラム」はスタートしました。今後は青森県、秋田県、福島県などでの開催を予定しています。

北海道から東北へ、そしてさらに関東・関西へと脱炭素社会に向けて、そしてより良い住まいづくりに向けて、省エネ住宅推進の取り組みを波及させていきたいと考えています。

地域社会に貢献しながら、持続可能な事業を展開する新しい“選ばれる”工務店像を一緒に探していきましょう!

▶「Replan」


株式会社SUMUS 代表取締役 /  「Replan」代表
小林 大輔



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