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問題は「東京vs地方」ではなかった!成長する田舎と衰退する田舎の溝を作るものとは?

「都市と地方の格差は今後ますます開いていく」

そんな話をよく耳にします。一方で、これからは地方と地方の格差も開いていく時代に突入します。もしかすると、こちらのほうが、より深刻な問題かもしれません。

地方活性化のプロフェッショナル、木下斉さんとの対談レポート第2弾です。

木下斉さん

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エリア・イノベーション・アライアンス代表理事
まちづくりの専門家で、内閣府地域活性化伝道師も務める。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、00年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。2009年一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、2015年、都市経営プロフェショナルスクールを設立。事業開発・連携、人材開発、情報発信の3つの柱をもとに日本全国のまちづくりに携わっている。

小林大輔

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株式会社SUMUS(スムーズ)代表取締役社長
住宅メーカー、リノベーション会社を中心に経営コンサルティングを行い、500社以上のクライアントをサポート
地域そのものをリノベする「まち上場」を実現させるコンサルティング案件が多く、サービス継続率は96%と高い実績を誇る。

「首都より豊かな田舎まち」が当たり前の時代に

まず、海外に目を向けてみます。ヨーロッパにおいて、地域別の平均所得をみると首都は1位ではないことも少なくありません。

例えば、フランスでは、シャンパーニュ地方にあるエぺルネという街がパリを抜いて平均所得一位。モエ・エ・シャンドンをはじめとするシャンパンのブランド企業が拠点とするまちです。

イタリアでは首都ローマがある中部よりも、ミラノなどを含む北部の平均所得が高くなっています。

また、億万長者が多いと言われるオランダでは、最も裕福な地域とされる北ホラント州に首都アムステルダムも含まれますが、自治体別の所得ランキングにはその名前はありません。また、オランダでは、都市部の住民の資産合計が下がっているのに対し、地方の裕福な農家の存在が際立ってきています。

日本では、最も平均年収の高い都道府県はやはり東京都。ところが、経済成長率でみると東京は下位。東京の一人勝ちが永遠と続くわけではなさそうです。

これからは東京より豊かな地方が出てくる可能性も十分あります。地域格差は「大都市vs田舎」という軸で語られることが多いですが、これからは伸びる田舎と、衰退する田舎の格差がますます大きく、深刻化していくのではないでしょうか。

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木下:ヨーロッパでは、農業関連製品などの付加価値を200~300年かけて上げてきた地域が圧倒的なアドバンテージを持っています。

ブルゴーニュだと、生産量が半分になれば値段は2倍~3倍になる。どうしても売れるから需要がどんどん増えて供給は減り、昔ではありえないような金額になってくる。作っている人たちは(生産量が減っても)全然何とも思ってないですよね。
シャンパンとかを作っているエペルネは人口2万3000人のところで6400億円産業をやっていてめちゃくちゃ豊か。こういうことが普通に通用しています。


ブランド生産品を作り、ロールモデルとなる農家がまちを引っ張る!


木下さんは、今後とくに農林水産業に強い地域が上がってくると言います。その言葉通り、世代交代を経て、これまでとは全く違った視点から新たなビジネスを展開し、地元を盛り上げている人々の存在が際立っています。

例えば、北海道の江丹別にあるブルーチーズ「江丹別の青いチーズ」。

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画像引用:「江丹別の青いチーズ」オンラインストア

放牧、牧草のみのこだわりの酪農を行っている「伊勢ファーム」。その牛乳を使ったブルーチーズは名だたるシェフたちから引き合いが殺到。国産の食材で初めて、ANAとJALの国際線ファーストクラス機内食に採用されるなど、全国で大注目されています。

江丹別はもともと人口80人ほどの小さな村。北海道の中でも田舎と言われるような地域です。しかし、この場所で成功を納め、豊かに暮らす彼らの姿をロールモデルとして、移住をしてくる人も出てきているそうです。

木下:完全グラスフェッドの牛だけの牛乳で作ったブルーチーズというのがなかなか国内に存在しないカテゴリで、今めちゃめちゃ伸びてるんですよね。親、お兄ちゃん、自分、3世帯がめっちゃ豊かに生活ができる経済環境ができる。
そうすると、「あんな人のいない旭川の郊外でめっちゃ幸せそうに生活してるじゃん」って言ってパン屋をやりたいとか、レストランをやりたいって移住してくる人とか出てきて、80人の集落がここ数年で100人ぐらいになってるんですよ。

また、これまで農林水産業といえば、日本国内、特に東京を向いて品を送るという考え方が浸透していましたが、さらに視野を広く、輸出を前提とした仕組みに切り替える人々も出てきています。

小さくても、マーケットをしっかりつかむコンセプトを体現している。インターネットが発達し、そうした情報が遠くにいる人にも届けられるようになったことで、人でも物でも生き方でも、そのカテゴリに興味がある人達が強く惹きつけられることが起こっています。

今田舎をもりあげている彼らは元々、「まちおこし」をしようと思って立ち上がったわけではないかもしれません。しかし結果としてまちの魅力を世界に発信する存在になり、人々を呼んでいることは間違いありません。

そうした際立った存在がある地域とそうでない地域。今後の発展に大きな差が出るのは想像に難くありません。

「半径200メートルのまちづくり」を語ろう

まちや地理の話になると、どうしても「都道府県」単位で語られがちです。

京都はすごい!福岡はすごい!
〇〇県は魅力度ランキング最下位だ…

しかし、都道府県というのは実は中途半端な括りなのです。スケールメリットを考えるには小さいし、一方で生活圏で考えたら大きすぎる。

私はよく「半径200メートルのまちづくり」という話をしますが、歩いて周れるくらいの規模で考え、限られたリソースを一点集中させたほうが一気にまちの価値を上げることが可能です。

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木下:そこはもう我々がやる時もそうです。最初からいきなり何ヘクタールの再生とかって役所はすぐ書きますよね。でもそんなのできるはずがないと思っていて。何百メートルのところで集中投下する方が絶対に成果は早いです。

ただ、こうした小さな規模でまちを作っていこうとすると、「民主主義」や「みんなで決める」ということが難しくなります。みんなでやろうとすると、できるだけ不平等がないようにとまとめるようになり、結果的に薄まってどこにでもあるような取り組みになりがちです。

そこに住む、たった一人の確信犯が立ち上がる。周囲の人を巻き込みながら、濃く濃く動く。強烈なコンセプトで、ときに一人の人にだけスポットライトがあたることもあるかもしれません。

それが「半径200メートルのまちづくり」には必要なのです。

新しい地主がまちを作る時代

まちづくりは、今その土地に住んでいる人たちが行う取り組みとして認識されていることが多いですが、もう1つの可能性を私は考えています。

それが、企業でも個人でも良いのですが、まとめて村を買ってしまうという方法。実際に私もある廃村をまるごと買っています。廃村や限界集落と呼ばれている土地で半径200メートルほどの規模であれば、都内のマンション1室を買うよりも安い値段で購入できます。

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一度衰退してしまった土地を、一気に再生する。自分自身が新しい地主としてゼロからまちを作っていくのです。

実はこの考え方は、アメリカの自治体による中心部再生にも近いところがあるそうです。

木下:(アメリカでは)計画とか言わないで、まず公社で全部買ってしまいます。その後に計画を立ててバーンとバリューアップして高めで売り抜けて、これぐらい儲かりましたみたいにやる。
日本って、投資をする前に計画を立てるでしょ。あのやり方はダメなんです。投資する前に「私たちはこれをします」って宣言して、他の人の欲の爪が伸び始めたところで、用地買収なんかできないわけなんで。

都道府県あるいは市区町村ごと買おうとするのは難しいですが、スポット的に空いている土地は日本全国に3,000ヶ所ほど(独自調べ)あります。

これはちょうど上場企業の数と同じくらい。それくらいまちを小さくみることで、問題もクリアになり、キレ味鋭いコンセプトを展開できるようになります。

これまで地主と言えば、先祖代々その土地を受け継いできた人々でした。もちろん今もその流れを汲み、自らが住むまちの未来を考えて変化し続けている人もいます。

一方で、人口が減り、衰退してしまったまちや村もあります。そうした土地の未来を作るのは、あなたかもしれません。

あなたなら、どんなまちを作ってみたいですか?

株式会社SUMUS 代表取締役
小林 大輔

▷対談レポート第一弾はこちら!

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カネなし、人脈なし、知名度なし…。そんな地域でも、大丈夫!むしろ弱者だからこそのまちづくりがあり、それは強者には真似できないものです。
これからの時代のまちづくりの新戦略です。

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