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兵器ハバネロ(2)

文章長いですm(__)m


(前回の最後の方)
父上が畑に植えてたハバネロを母上がパプリカと間違えて食べたのです。


(本文)

「これぇみろ、このいろこのちれぇなごど!こどすのはづものくってみっからな」( 訳 これ見てよ、とっても色がきれい!今年初のパプリカよ。さっそく頂いてみるわね♡)と言った母上は、包丁で二等分にしたハバネロを、一片は手に持ち一片はくちに入れ咀嚼しました。

即、両手をブンブン振り回しながら楽しげにエアなわ飛びを始めた母上。

あまりの美味しさにはしゃいでいるんだと思い、母上よ、いつまでも若々しく健やかでなによりと思い、その無邪気さを微笑ましく見守ってたのですが、いつまで経ってもエアなわ飛びが止まらない。

キツく目を閉じて歯を食いしばって汗をかいてる様子に、尋常じゃない何かが起きてると感じて、怖かったけど近寄り「お…おーい…」と声をかけました。

「アピャー!」と突然、涙と鼻を垂らしながら悲鳴をあげ、水道へ向かい勢いよく水を流し何度も何度も口をゆすいでいました。

パプリカが母上の身体に何らかの介入を果たしていることは確かなようですが、一体なにが起こっているのか?どうして差し上げたら良いのか?全く分からなかったので見守るしかありませんでした。

しつこくくちをすすいだことでハバネロの成分が薄くなり、更に水で冷やされたため、母上は辛さで麻痺した口角と舌を少しだけ動かせるようになり「あんだこへ、こんなかへぇ〜はふりかくっふぁふぉふぉへぇ、ぐへぇ!」( 訳 なんでしょうこれは、こんな辛いパプリカ食べたことがないわ、きゃ〜!)と、わたしが有している日本語読解能力の守備範囲をゆうに超えた異次元レベルの日本語(東北版)が発せられました。

(まさかなぁ、しかし、あり得るかもね…)と思ったわたしはグーグル先生で画像検索し、そこでようやく母上の身に何が起こったのか知りました。

パプリカと思ってたのは実はハバネロだったのですね。

しかし画像、見れば見るほどよく似てる…(-。-;

よりによって母上が育てていたパプリカのすぐ隣の畝で、父上がハバネロを育てていたんです。

やってくれましたね(-。-;

父上いわく、地元の某大型ホームセンターでハバネロの苗を買ったそうですが、商品名にはハバネロと記載されてなく「激辛唐辛子」とだけ書いてあったのでハバネロとは思わなかったそうです…ってか、父上はハバネロとは何かも知らなかったようですけど。

わたしも、その商札を見たので確かですが「激辛」と書かれてある時点で父上よ、何らかの対策とれや〜💢

それで…。

グーグル先生の助けにより母上がド偉いものをくちにしたというのは分かりましたが、ハバネロと言えど所詮は食べ物、けっして毒ではなかろう…だいじょぶだいじょぶ。

と、少し安心したわたしは、当の本人の苦しみをよそに、この状況をちょっと面白がっていました。

くちの中の痛みが少し和らいで、落ち着きを取り戻したのち、今度は手に持っていた方のハバネロが、ことの発端からくちの中の痛みが落ち着くまでの間、ずっと手のひらに攻撃を仕掛けていたという事実と向き合うこととなりました。

「いででででででー!」と叫びながら手に持っていたハバネロを放り投げまた蛇口をひねり、ハバネロを持っていた方の手を流水でながしました。

しかし、あんなに両手をブンブン振り回してたのに手放さなかったとは…母上の頭の中では手の中にあるハバネロはまだきれいな輝きを放つ採りたてのパプリカに他ならなかったのでしょう…なんという食い意地の汚なさ(2週間前のシュークリームを食べた人と間違いなく親子だね)

ひとしきり水で流してから「おらあどねる」( 訳 わたしはあと少し寝ますね)と言って寝室に入っていきました。

母上が寝室から出てきたのは8時間後「やっと良くなったけど、まだ痛い。手の方が酷い」(めんどうなので東北弁略)と言っていました。

8時間を要してもまだ癒えてないとは、相当のダメージだったみたいです。

それ以来、うちの家族の中でハバネロの概念が「兵器」として書き換えられました。

食材やスパイス、添加物という認識はどっかに吹っ飛びました。

当地方のお年寄りの方々がよく言っていたのですが、言うだけじゃなくしっかり実行していたのですが「傷口を舐めると治りが早くなる」という根拠の薄い迷信のような治療法がありまして、わたしも子供の頃は転んで擦り傷をつくって帰ってくると、祖父や祖母に傷口を舐められた記憶力があります。

なんだったのでしょうね?犬や猫が傷口を舐めることからヒントを得た、例えば格闘技(?)で言うところの蛇拳とか猿拳(あるの?)とか虎拳(あるの?)のような流れから生じた特殊療法だったのかはよく分かりませんが、今でもご年配の方々が傷口を舐める光景を見ることがあります。

うちの母上もバリバリその、舐める特殊療法信者の一人でして、反射的に痛いところを舐める癖があるんです。

んで、やっちゃいました。

せっかく痛みが和らいできた舌で、まだハバネロ成分による攻撃を受けている手の平をペロリと舐めてしまったんです。

途端に口の中の痛みが再燃🔥

流水で洗い流すところからやり直してました。

もう付き合い切れないので母上より先に寝ることにしました。

そんなカタストロフを見たわたしは、例え害獣と言えどもハバネロという兵器を用いることを躊躇するようになりました。

でも、あまりにも酷いときは使うこともあるかも。

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