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マレーシアの消費動向と年齢分布図

マレーシアの人口は約3,300万人で、平均年齢は30歳前後(2022年マレーシア統計局)となっており、日本と比較して若者の割合が多い国です。

先細りの日本
釣鐘型のマレーシア

一般的に1990年半ばから2010年代に生まれた世代を指す「Z世代」は、マレーシアの人口の26%を占めています。この世代はデジタル技術とインターネットとともに育ち、デジタルネイティブ世代として世界的に認知されています。特に最初トレンド情報やニュースなどの情報収集方法において、他の世代とは異なる特徴があると言われておりZ世代がマーケティングにおいて注目される理由は、ミレニアル世代(1980年から1990年半ばまでに生まれた世代)の次に消費層になると期待されているからです。

娯楽・エンターテイメントの分野では、ストリーミングサービスが主流となり、SNSではTikTokが最も人気です。

tiktokは若者向けからビジネス層にまで広がっている


Z世代の娯楽・エンターテイメントにおいては、サブスクリプション型の動画・音楽配信サービスが中心となっています。音楽では、Spotifyが最も人気であり、CDの購入が主流ではなくなっています。また、日本でも大人気なK-POPはマレーシアのZ世代にも非常に人気があります。動画では、Netflixなどのストリーミングサービスが日常的に利用されており、映画館への足も運ばれています。しかし、スマートフォンからの動画視聴の普及が映画館の魅力を奪ったわけではありません。TikTokは、若者に人気であり、マレーシアの総選挙でも重要な役割を果たしています。2022年のマレーシア総選挙においても、政治家はTiktokを利用してZ世代にアピールしてきました。マレーシアでは選挙権年齢が21歳から18歳以上に引き下げになり、有権者数が前回2018年の総選挙と比べて4割以上増えました。そのため、Z世代の取り込みが重要になったのです。TikTokは今後、マレーシアの若者市場において最も可能性のあるソーシャルメディアになることが見込まれます。

インフルエンサーは絶大な人気を誇り、専門職の人材不足への懸念も存在しています。マレーシアのZ世代は、ミレニアル世代や他の世代とは異なる仕事への期待感を抱いています。2020年に求人情報メディア大手のJobStreet Malaysiaが行った「The Law of Attraction(引き寄せの法則)」と題する調査によれば、Z世代はワークライフバランス、メンターシップ、専門能力開発の機会など、近代的な職場環境に関心を持っています。しかしながら、Z世代の一部は新型コロナウイルスの大流行により社会人生活や学業の始まりを中断された経験を持っており、これは仕事に対する価値観に影響を与えています。コロナ流行後、多くの企業が在宅勤務やハイブリッド型の勤務形態を採用するなど、従来のワークスタイルが大きく変化しました。この状況を受け、Z世代はフレキシブルなワークスタイルがより自由で効率的な生産活動につながると考えています。さらに、マレーシアのZ世代の多くは将来的に起業を考えており、ソーシャルメディアやライブ配信、NFTなどのデジタル技術を活用することで、従来の方法よりも効果的かつコストを抑えた仕事が可能であると見ています。

AI生成などで大量コピーできる昨今、NFTが注目されてる


そのため、彼らが注目する主要な仕事はコンテンツクリエイターやインフルエンサーです。TikTokは、彼らが求めるビジネスに利用できる最も強力なプラットフォームの一つと予想されています。しかしながら、一方で、より多くのZ世代がインフルエンサーや起業家を目指すことが選択されると、医師やエンジニアなどの専門職での人材不足が懸念されています。

Z世代はコストパフォーマンスを重視し、ほとんどがECでの購入を好みます。オンラインショッピングやゲームアプリなどが広告の対象となっており、多くのマーケターがその動向に注目し、アプローチを開始しています。Z世代は現時点ではミレニアル世代と比較して自ら収入を得る能力がありませんが、親の経済力を利用して自分で購買意思決定を行います。また、将来的には市場の主流となることが予想されるため、ブランドの魅力を彼らに刷り込むことは重要です。オンラインショッピング利用者の85%は実店舗の価格を比較し、82%は送料を考慮しています。また、配送速度も重視されており、利用者の5人に4人が購入前に配送速度を考慮しています。このように、EC業界でZ世代を引き付けるには価格と利便性の両方を考慮する必要があります。

また、Z世代は一般的に2つのグループに分けられます。

⚫︎ユースグループ(19〜24歳、1995〜2003年生まれ):インターネット普及率が高く、スマートフォンの所有率も高いです。社会に出始めたこのグループは購買力が上がっており、ネットショッピングに関心が高まっています。過去1カ月にオンラインショッピングを経験した人の割合も高く、主に衣料品・アパレル、デジタル家電、化粧品・フレグランスを購入しています。

⚫︎ティーンエイジャーグループ(12〜18歳、2004〜2010年生まれ):トレンド商品を追い求める層であり、親のサポートのもとで購入することが可能です。

また飲食店にも若い人や家族連れの方が多く見られます。

回転寿司チェーンのSUSHI KINGに長蛇の列
若者の街Bukit Bintang地区(ブキビンタン地区)の活気がとにかくすごい


一方でマレーシアの高齢者人口は、2030年までに年平均4.5%拡大する見込みです。

クアラルンプール発 2023年11月16日 マレーシアの大手金融RHBバンク傘下のシンクタンク、RHBリサーチは11月8日、マレーシアにおける65歳以上の高齢者人口が、2022年から2030年にかけて年平均増加率4.5%で拡大し、増加率としては調査対象国の中でシンガポールに次いで高くなるとの予測を発表しました(RHBリサーチ11月版地域報告書)。

長期的には、世界銀行の推計に基づき、マレーシアの高齢者人口の比率は2056年までにおおよそ20%に到達するとされています。これには平均寿命の延長と出生率の低下が背景にあります。2022年時点のマレーシアの平均寿命は73.4歳で、年齢中央値は30.4歳であり、65歳以上の構成比は7.2%にとどまります。

RHBリサーチは、「マレーシアの経済成長率は、ベースライン予測で2022年の8.7%から2056年には1.8%まで低下する」と予測し、「人口動態の急速な変化により、経済成長の維持のために、雇用、年金基金の持続可能性、所得保障、医療、高齢者介護といった分野で政策課題が深刻化する」と述べました。人口の急速な高齢化は、労働力人口の減少を意味します。25歳以下の人口の年平均増加率は2019年から2030年にかけてマイナス0.7%であり、26歳から64歳の人口は同1.5%にとどまります。これは経済成長の鈍化のリスクとなります。

労働力不足への対応として、高齢者向け訓練や年金システムの改善が必要です。

現在のマレーシアの退職年齢は60歳で、フィリピン(65歳)、シンガポール(62歳)、韓国(65歳)などより若いです。また、「寿命が延びたにもかかわらず、従業員積立基金(EPF)の全額引き出しは55歳」だとし、早期に引き出し額を消費した場合には不安を残す制度設計であることを示唆しました。また今後、「年金貯蓄の不足による退職年齢の遅れや高齢者介護支出の増大が見込まれる」と予測され、「離職した低所得層は、子供か年金に依存せざるをえない」と見通しました。マレーシア人が老後の経済的安定性を確保するためには、将来的により長く働く必要があります。したがって、働き続けたいとする高齢者のために、例えば高齢者雇用を促進するための訓練や生涯学習の機会増加といった戦略的な政策策定が重要であることを指摘しました。加えて、EPFへの拠出する労働者の割合を増やし、退職後の貯蓄を維持するための措置の導入も促しました。

同レポートでは、高齢化先進国として日本を取り上げ、「介護のさまざまな分野で日本の高い技術が生きており、新たな産業を発展させるとともに、高齢者ニーズに柔軟に対応する社会の構築にも貢献している。高齢化がさらに進む中、エイジテック業界は高い成長可能性を秘めている。アジア諸国でも、介護産業の成長に向けた長期目標を設定しつつ、技術インフラを高齢者産業に統合する取り組みを講じるべきだ」と提言しています。

マレーシアでは、新型コロナウイルス感染拡大も1つのきっかけとして、ヘルスケア分野におけるデジタル化や人工知能(AI)などの新技術の導入が加速するとともに、シニア向けサービスの専門施設ニーズも増えつつあります。

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