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デニーズで、時計が7分進んでいた

今年のクリスマスイブは、大好きなバンド「キセル」のライブを見た流れで、いとこ夫妻と思いがけず朝まで過ごした。特に強い動機もなくノリもなくカラオケに行くでもなく、だらりとしゃべってたまに爆笑しながら、30代3人で、眠い目をこすりながら夜を明かした。こういう夜って、なんだかすごくいい。

夜明けの定番の流れで入店したデニーズは、朝4時から清掃のため閉店するという。3時に入店した私たちはそそくさと頼んで、ダラダラおしゃべりをして。時計をみたらもう4時を過ぎていた。

店員さんからそそのかされることもなかったので、結局時計が4時5分を過ぎたくらいからゆっくり退店の準備をして、お会計を済ませて店を出た。
朝すぐに清掃に入りたいだろうに、意外と余裕持たせてくれるもんだななんて、ちょっとありがたい気持ちを持ちながら店を出た。

ふと時計を見ると、現在時刻は4時2分。
あれ?もう4時10分くらいだと思ったのに。
そうか、あの時計、進んでいたのか。とそのときに気がついた。7分ほど進んでいたのだ。

始発は4時27分。きわめてビミョーーーーな時間だった。
結局それから私たちは25分間を、24時間営業のスーパーをぐるぐるして過ごしたわけだが(意外とあっという間に時間は経った)、
7分進んでいる時計には、それぞれの時間にそれぞれの意味合いがあるんだろうな、と思った。

朝4時にはこうして、閉店時間に居座ろうとするお客さんの背中を嫌味なく押す装置になっているわけだし。
出勤前に朝食を食べるという人なら、時計に従って少し早めに退店したら、思いの外早く出勤できたりするのだろうし。
お昼、12時から13時までの限られたお昼休みで昼食を食べる人は、7分進んだ時計を見て焦って、結局コンビニでコーヒー買う時間くらい得られるかも知れないし。食事提供が遅れたら、焦りながら時計を指差して「もうこんな時間だから急いでよ」なんて言ったら、店員さんに「あ、あの時計進んでるんです」と返されて。そんな時に初めて、デニーズ時間を知るのだろうか。

そして翌日、もうデニーズ時間を知ってしまったら、「あの時計は少し進んでいるんだよな」という認識を持ってしまって、結局余裕を見てしまって次の予定に遅刻してしまったりするのだ。デニーズ時間は、知らない方が人生を豊かに生きられる気がするのだ。知ってしまったら、もう元の自分ではいられない。
一番怖いのはデニーズ時間が、突然電波時計になって、忠実な時間になってしまったときだ。7分進んでいると思っていた時計が進んでいない。これは地獄だ。

デニーズで進んでいた7分。
これは、時間泥棒ととらえるべきか、プレゼント時間ととらえるべきか?
私は後者と捉えたい。クリスマスだったしね。

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