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俺たちを沼に引きずりこんだ抜群にセンスの良い先輩

いろんなところにいて、いろんな俺たちをいろんな沼に引きずりこんだ抜群にセンスの良い先輩について書く。この時点でなんのことやらわからない方には以降の内容は伝わらないと思う。

当時の俺たちにはアイデンティティがなかったから、芯があって飄々としている先輩に憧れてとにかくなんでも真似した。先輩はクラスのみんなの知らないかっこいいバンドをたくさん知っていて、俺たちはそれを聴いて自分までセンスの良い人間になった気分になった。先輩はミステリアスで、写真に写るとなんとも言えぬ独特な雰囲気があった。

俺たちには理解の及ばぬ宇宙的なシャツや民族衣装風の服を着ていたし、似合っていた。そして岩井俊二を敬愛していた。真似して観てみるものの俺たちには魅力がよくわからず先輩の得体の知れないすごさを再認識した。

先輩にはダントツお気に入りの後輩がいて、それは自分ではなかった。自分はいつも2、3番目だったけどなんか納得できた。先輩は自分のようなくだらない人間など気にも留めないのだ。

それで先輩はあるときあの窓から飛び降りて、みんなは口々に好き放題の噂をした。先輩のことお前らに理解できるはずがないし。もちろん自分にだって理解できなかったけど、とりあえずリリイシュシュみたいだなって思った。先輩と違ってセンスがないから。

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