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鳥、背中を見て学べ

鳥と暮らしている。人に紹介するときはその鳥のことを鳥と呼んでいる。よく名前を訊かれるが、なんとなく教えたくないので教えない。教えないことと知りたいことは多い方が良い。

種類は文鳥で、雛のときから同居している。2021年の8月生まれだから生後7ヶ月。7ヶ月だと!あいつはとんだ人生ビギナーであるのに、20年以上シャバを生き抜いている大先輩に対して尊敬の色を示すということを知らない。

雛の頃は手のひらでコロコロ転がって寝ていたというのにその恩も忘れて大暴れ、握ろうとすると血が出そうな勢いのマジ噛みをお見舞いされる。 お前なんかちょっと前までご飯すら自力で食べられなかったというのに。

とにかく態度がでかい。「臆病な性格なので飼い主以外には怯えてしまうことが多い」と説明されたはずだが、誰にでもすぐなつく。旅行に際して友人のお店にカゴを預けたら、往来するお客さんたちの肩に乗り、我が物顔で振る舞って毛繕いをしバタバタと店の中を飛び回っていた。

家を空けることが多いので頻繁に友人のお店に預けていると、うちの鳥と顔馴染みになる面々も現れ始めた。そのうちの一人が長く鳥を飼っているとのことでいろいろと話を聞いたが、いわく「鳥は性格も行動も飼い主に似ます。うちのインコはとても慎重で人見知りです。おそらくうちの家族がみんなそういう性格だからです」と。

態度がでかくて誰にでもすぐなつき、我が物顔でリラックスしたと思ったらバタバタ動き回る……

鳥という鏡を通して自己紹介をしていたということになる。

そういえば友人から「騒ぎ方が鳥に似ているよね」と言われた。褒め言葉だと思っていた。あいつ尊敬の色を示す代わりに自分の行動をよく見て学んでいたというのか。まったく隅に置けない。可愛い以外の取り柄がない鳥だが仕方ないからまだ一緒に暮らしてやるか。

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