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【京大吹零会 起業家インタビュー】AironWorks Co., Ltd Co-Founder CEO 寺田 彼日さん 経営管理大学院 2013年卒

「京大吹零会」とは、京大出身(在学中も含む)の起業家を集めた、起業家コミュニティです。京大には変人が集まると言われるように、京大出身の経営者も変わった人が多いので、周りに理解されず、孤独になってしまうこともあります。そんな「吹き零れ」たちが集まり、経験をシェアして切磋琢磨する、唯一無二の会です。メンバー同士の交流を促すため、また、これから起業したい方に吹零会メンバーを知ってもらうため、隔週で「京大吹零会 起業家インタビュー」をオンラインで放送中。このイベントで収録した起業家たちの講演内容を書き起こし記事としてお送りします

【要チェック!】
公開インタビューのスケジュールや、記事を見て「起業したい!」と思った方のための「京大・起業相談デスク」についてはコチラをご覧下さい

学生時代のこと。

高校のときは部活に打ち込んでいました。テニスをしていたので、勉強を全くしておらず、1年浪人しました。大学院から京大なんですが、京大のビジネススクールは新卒の学生と社会人と留学生が同じくらいの比率で約90人在籍している特徴的な構成です。

元々起業する予定でしたので、ビジネスの基礎理論を学びつつ、実務をインターンで経験できるっていうプログラムが魅力的でした。交換留学の制度もあって、グローバルなビジネスをしたいなというのは元々の構想だったので、ぜひ京大に入りたいと思ったんです。 

ビジネススクールで実際に起業に役立つ知識とかって学べるものなのか?と思う方も多いと思います。具体的に何かがすぐに役に立ったかというと、そもそも大企業の経営理論などをベースにしており、スタートアップに特化しているわけではないので即効性はありませんが、大きく2ついいところがありました。

1つ目は、網羅的に、ファイナンスだったり組織論、経営戦略、マーケティングを学べるので、何か困ったときに引き出しが増えるところです。ダイレクトにすぐ役立つというよりは知識のインデックスができたのは非常に役に立ちました。

2つ目は人と会えるというところ。同級生、先輩・後輩、講師の方々も実務経験のある方がたくさんいらっしゃったので、そういった方との出会いは起業後、ダイレクトに役に立ちました。

起業のこと。

10年ほど前、2014年に片道切符でイスラエルに行って、すぐ事業を始めたんです。クリプト、今で言うWeb3の技術を使って、事業を興したい人が誰でも資金調達できるような仕組みを作りたいと始めたんですけど、法規制の問題だったり、ブロックチェーンの技術的な課題だったり、そもそも時代がちょっと早すぎたというところもあって、事業自体は順調には立ち上がらなかったんです。

方向転換し、オープンイノベーションのプラットフォーム作りをやってきました。なぜいきなりイスラエルに行ったのかよく聞かれます。元々世界で事業を展開したかったんです。
大きなきっかけとしては、京大大学院の在学中にトルコに半年間交換留学をしまして、当時(2012年頃)のトルコはOECD諸国の中でGDP成長率がトップで、凄く成長していたんです。
 
実際に留学してみると、非常にエネルギーを感じるとともに、日本の存在感が薄れていってるのを強く感じて危機感を持ったんです。みんなが使ってる携帯がBlackBerryだったりサムスン、PCはMacで、使ってるアプリはYouTubeとかFacebook、Googleとか。車も中国・韓国のメーカーが中心で、トヨタですら結構マイナーな存在だったんです。
 
このままでは日本の将来は結構危ないなと。世界を目指して事業をやらないと、とシンプルに思いました。じゃあその拠点はどこか? スタートアップのエコシステムがあり、技術的に秀でているところでやった方が世界で勝てる可能性が高いのではないか? と考えました。

シリコンバレー、エストニア、ルクセンブルク、イスラエルなどが候補になりました。ITの世界で本当にNo.1を取るんだったら、イスラエル人・ユダヤ人はITや金融業界の先駆者で世界的に成功していることもあるし、技術的に進んでいて、かつ日本人が全くいないのはイスラエルだったので、とりあえず行ってみようか。はい、思いつきですね 笑

ご想像の通り、行ったら行ったで大変でした。住むところとかも行ったらどうにかなるかと思っていたら、どうにもなりませんでした 笑

当時からAirbnbがあったので、そこに泊まりながらビザの手配とかをして会社の登記をしました。でも、ビジネスビザを取るのに時間がかかるんですよね。一応90日までは観光ビザで滞在でき、年間トータル180日まではいられるので、ヨルダンやブルガリアなど近場に出て、観光ビザを更新して、また戻ってきてビジネスビザが取れるまで耐えるみたいなことを半年ぐらいやって、ようやく取れたっていう感じです。

申請書類も膨大で、60枚とか用意しないといけなくて。大学の卒業証明書とか学位とかがちゃんとないとビザ取れないのでそういうのを手配して。頑張って作っていったら、役所の窓口で「お前誰やねん」みたいな追い返され方をして、それを5回ぐらい繰り返して……。
 
さすがに嫌になってきたので、知り合いのツテをたどって、経済産業省の次官に根回しをして内務省に一報入れて貰うと、一瞬でいけました。そういうあの手この手を使いました。海外とかだとそういう力も必要なんです。真正面から行くと断られるのがイスラエルです。東南アジアとか、まだまだこれから成長していく国も同じようなものだと思いますけれど。
 
当時は、狭い部屋に2段ベッドを置いて、共同創業者と暮らしていました。そんな生活が2年半ほど続きました。お金がなさすぎて、日銭を稼ぐためにそんな激安アパートをAirbnbで貸し出して自分は野宿するといったこともしてました。

全く推奨しませんし、今だとあまりないかもしれませんが、自分は2年間程は役員報酬を取らずに事業に取り組んでいました。向こうに行くまでに3年はなんとか死なない程度の貯蓄をしてから取り組んでたんです。

 日本に帰ろうという気持ちは全くなかったです。私が起業家がかっこいいなと思った原点は、戦後の起業家の方々の伝記を読んだこと。焼け野原の何もない状態で、地元の神戸だとアシックスの鬼塚さんとか、靴を売り歩くのに駅で野宿してたら自分の靴を盗まれたみたいな話を読みまして。今や世界的なメーカーになった会社でも起業家はそういう状況でやってたんだから。 自分は飯も食えてるし、全然余裕だなみたいな。そうやって苦しい時期を乗り越えました。
 
これまでオープンイノベーションのプラットフォームを作り、大企業とスタートアップの共創を推進してきました。イスラエルの技術を活用して新しい事業や研究をしたいような会社とスタートアップをマッチングして連携を進めていくのです。そこで得たノウハウをもとに、インキュベーションを事業化して、自社開発のプロダクトに注力しています。

自社のサービスは、サイバーセキュリティに関する従業員レベルを上げていくような訓練システムとAIを活用した防御システムを作っています。イスラエルってセキュリティ技術がとても進んでいるので、ホワイトハッカーのナレッジをAIに学習させ、企業を擬似的に攻撃してもらいます。攻撃することで見つかったセキュリティスキルの弱い従業員をトレーニングしていくような仕組みです。その教育プログラム自体もAIで自動でできるようにしているんです。顧客は大手の金融や製造の企業向けに提供しており、イスラエル、日本、イギリス、シンガポール、アメリカで展開を進めています。


イスラエル人とウクライナ人中心の海外の開発チームで開発に取り組んでおり、非常にレベルの高いプロダクトが作れている状況です。競合がアメリカの2社で時価総額7,000億円とか1兆円超えるような相手です。でもそことコンペになっても負けないような状況になっていてプロダクト力で勝てるはずなんです。
 

営業力をしっかりつけて組織的に売っていければ、競合を倒せる可能性はあるんじゃないかなという手応えを感じていて、お客様からの評価も非常に高いです。サイバー攻撃の被害って全世界的な課題なので、国・地域関係なく広げていけるはず。この分野で世界ナンバー1を取りたいなと、今その入口にいます。
  

20代にしておくべきこと

自分の経験を振り返ると、やはり将来こうしたい、という目標から逆算して何かやるべきことを考え、どんどんチャレンジすると良いのかなと。しっかりと勉強するのもいいですし、私の場合は起業しようと考えてスタートアップでインターンをしました。仲間作りみたいなところで京大には優秀な学生が多いので、利害関係のない友達を増やしておくみたいなところは非常に重要かなと。
 
もう1個はやっぱりマクロのトレンドってめちゃくちゃ重要だと思うんです。学生で起業っていうと身近なテーマになりがちだと思うんですけど、世界の動向にも目を向けて、今後世界を変えるような技術って何なんだろう? といったメガトレンドをちょっと俯瞰して、自分がコミットするべき領域っていうのを見つけるのもいいのかなと思います。視野を広げるためには、世界を見るしかないです。イスラエルでもいいですし、どこか人が行かないようなところに飛び込んでみるといいかなと。
 
2014年からイスラエルに行って3度、紛争が発生しました。それらを全て経験しました。2021年、自宅から見えるところに1,000発ぐらいミサイルが飛んでくるということもありました。直近でも、家から600mぐらいのところにミサイルが着弾して爆発したこともありました。朝ミサイルの爆発音で目覚めるみたいなことがあるんです。ガス爆発や、花火の爆発音が突然鳴るという感じです。


日本の平和っていうのが普通じゃないということ、平和というものの価値をすごく感じました。

この日本の平和が長く続くよう、経済面で新しい価値創出をして、日本人がスタートアップでも世界で活躍するのが当たり前になるような道筋を切り拓いていきたいと考えています。


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