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【京大吹零会 起業家インタビュー】株式会社ミツカリ 代表取締役 表 孝憲 さん 法学部 2006年卒

「京大吹零会」とは、京大出身(在学中も含む)の起業家を集めた、起業家コミュニティです。京大には変人が集まると言われるように、京大出身の経営者も変わった人が多いので、周りに理解されず、孤独になってしまうこともあります。そんな「吹き零れ」たちが集まり、経験をシェアして切磋琢磨する、唯一無二の会です。メンバー同士の交流を促すため、また、これから起業したい方に吹零会メンバーを知ってもらうため、隔週で「京大吹零会 起業家インタビュー」をオンラインで放送中。このイベントで収録した起業家たちの講演内容を書き起こし記事としてお送りします

【要チェック!】
公開インタビューのスケジュールや、記事を見て「起業したい!」と思った方のための「京大・起業相談デスク」についてはコチラをご覧下さい

学生時代のこと。

僕は高校からアメフトをやってました。東京都立の戸山高校っていう学校があるんですけど、そこでアメフトに出会って。同級生と一緒にモチベーション高く部活に打ち込んで、割と強いと言われてた世代だったんですけど、最後の3年生の試合は1回戦で負けてしまったんです。

僕らに勝ったチームがそのまま関東で優勝したんですよね。たった4点差だったのかな、けっこういい試合をしてたので、客観的に見ると僕らもかなり強かったんじゃないかなと思うんですけど当時の自分には消化できず、1回戦で負けたという大きな傷が残りました。

そうなるとちょっと大学でもやりたいなと思っていたときに、京大の選手が以前から熱心に勧誘してくれたんです。京大のアメフト部は京大に受かる可能性が1%でもあって、アメフト部がある高校にはほぼ全て、いや、全て勧誘に行くんです。

すごく熱心に勧誘してくださったし、アメフトを一生懸命やってるんだなというのを感じたので、ぜひ入りたいなと。受験勉強をものすごく頑張って、一浪はしたものの何とか受かることができました。

アメフト部では良いことも辛いこともたくさん経験しました。辞めて何か大学生ならではのこと色々やりたいなって思ったことも何度もありましたけど、結局どっぷり4年やって、めでたく留年もしてその留年の1年間はコーチという形で現役生とぶつかりまくっていました。

アメフトの魅力ですか? スポーツとして頭と体と両方使うし、みんなが思ってるほど頭じゃなくて根性の方が実は大事なスポーツなんです。京大が勝つのは頭が良いからじゃなくて、受験勉強を地道に頑張れる根性があるから勝てるんじゃないでしょうか。凡事徹底というか、未曾有のプレッシャーがかかった場面でも何とかやり切れる力みたいなものが、勝つためには必要なんですね。加えて、助け合うチームという要素もすごく大事だし。語りだしたらキリがないですね。


卒業後は、モルガンスタンレーという会社に入りました。投資銀行部門が有名なんですが、私は債券部と言って、知的な仕事というよりドブ板営業みたいな、とにかく足を動かしてお客さんを回って売るという仕事をしていました。飲み会が欠かせないので毎日のように西麻布や六本木でお酒を飲んでました。当時たくさん西麻布に行ったおかげで起業後、あまり心乱れずに済んでると思っています 笑

かれこれ7年ぐらい、30歳を超えるぐらいまでモルガンスタンレーでバリバリ営業してました。そもそもこの会社を選んだ理由ですが、あれほど熱意を注いだアメフトで負けてしまったときに、「負けたチームの人たちにはもらえないぐいの給料もらわないとあかんだろう」という謎の鬱屈とした思いがあったんですね。とにかく高い給料が欲しいなと。

アメフトの世界にはNFLという頂点があるんですけど自分には次元が違う世界だったので無理だとして、似たような生き方ができないものかと。活躍すればそれだけ給料がもらえるとか、1年目から個人にフォーカスが当たるとか、そういう要素っていうのは自分にとって大事でした。外資系がドンピシャだったし、トレーディングの部門なら1年目で本当に1億円もらえる可能性があるような世界だったんで。


でも入社して3-4年経ったころから、迷いがあったんです。ある程度給料もしっかりもらえて結果が出てくると、楽しいんだけど、なんだろう、自分の仕事の意味みたいなものが見えにくくなってきました。誰を助けてるのかわからないみたいな。周囲の先輩はすごくいい人だし、尊敬する方だったんですけど自分の人生がそうなっていくのか?と考えたときに、ちょっと違うのかもな……とふと思ってしまった瞬間があったんです。会社を辞めようかなと思ったタイミングです。

かと言って、起業を考えたことはなかったです。多分面白いんだろうなとは思いましたが、特に強い思いもないし、親や親戚で起業してる人もいなくてサラリーマン家庭だし、何か怖いものに思えていました。

選んだのは留学です。何となくかっこよさもあるし海外住んだことないし、将来に対する考えを保留にして行ってみようかと。

アメリカ・カリフォルニアのバークレーっていう学校に行きました。サンフランシスコから車で30分くらいのところにあるんですけど、当時はサンフランシスコにオラクルやTwitterなどが本社を構えはじめていて、スタートアップブームの全盛期のようなタイミングでした。お前どんなアイディア持ってんのみたいな、もうそんな会話しかないみたいな状況で、自分もいつしか起業への興味が高まっていきました。

起業のこと。

僕が留学して良かったと思うのはすごくたくさんの人に会えたことです。当時はVCか起業家になろうと考え始めていたので、どっちの道が心震えるかっていうことを、結構な人に会ってテストのように試したんです。その最中、明らかにそのプロダクト100%売れないぞってことが、学生の僕にもわかるものを、めちゃくちゃ熱烈に語ってる人たちがいて、内心で「この人たち、多分バカだな」と思ったんですけど、嫌いじゃないなって思ったんです。こんな生き方は幸せなんじゃないかなって。

VCとして人の応援をするのも良いけど、起業家としての人生を生きる方が幸せになるイメージがすごく湧いたっていうのが、一番大きな決断のポイントでした。

そこからは一気に物事が進んでいきました。UCバークレーの授業って、もう起業ありきで、会う人が全て「お前のアイディアは何なんだ? それはどうやったら実現するのか?」と聞いてくるし、アイデアを説明したらしたで、ユニットエコノミクスを考えようとか、値付けを考えてみようとか、そんな話ばっかりでした。5月に卒業式だったんですけど、その月には日本で会社を立ち上げられそうでした。
今私が取り組んでいる「ミツカリ」というサービスは、1人1人の性格・相性・感情を分析して、組織の力を最大化するための製品です。


性格の検査っていうものと、日々の感情を取るような調査、たとえば「今会社に対してどう思ってますか」っていうものを2種類作っています。得られたデータを企業側に提供して、「今、組織の中にどういうスタッフがいるか」という理解を促進し、それに基づいて相性の良い人を採用しましょうとか、企業側の方が今まで思ってもみなかったような方、極端に言えば「あなたの会社は実は暗い人の方がいいですよ」といった提案をしています。新しい採用軸みたいなものを作り、人と組織のミスマッチを解消したいんです。今、5,000社が利用していて40万人分ぐらいのデータが集まってきています。

人と組織の問題ってすごく面白いと自分の経験から感じていたんです。京大を受けようと思ったこともそうだし、僕はアメフト部では力を出せたけど、アメフト部には合わなくて、でも違うところで活躍している人もたくさんいました。就職した会社でも、実力は凄くあるけど組織とマッチしないで力を発揮できていない人もたくさん見てきました。特に仕事となると、人事担当者が学歴とか偏差値とかのスコアで人を判断しますよね。それがミスマッチの基になってると感じていました。

社会全体の適材適所が実現できたらいいんじゃないかと。社員のデータをちゃんと取って、どういう社風なのか可視化するってことや、その社風にマッチする人を採用していくってことが当たり前になっていけば、もっと社会が元気になるんじゃないでしょうか。

20代にやるべきこと。

絶対自己分析ですね。僕自身も留学の前に就活塾に行ったりしましたし、自分でも自己分析のツールを作っているからか、余計にそう思います。自分がどうやったら幸せになるか? 自分の人生を楽しく生きるにはどうしたらいいか?ってことを見つめるというか。

それが最後の最後まで多分給料だ、お金だ、大きな組織だって人って、少ないと思うんですよね。ある程度は必要だから、お金は要らないとは言わないけれど、数値でわかりやすいものにとらわれすぎずに自分の身体感覚とか直感を信じようとすれば、自己分析が必要だと思うんです。


その上で、ピンとくるものは絶対にやり込むっていうこと。表面上だけではわからなくて、一定の時間をかけないとわからないことって結構あると思って。昔だったら3年とか言ってましたけど、今の時代でも1年ぐらいは何か、いろいろ苦しみながらもやってみて、何かそれをちゃんと体で味わう、知識だけじゃなくて本当に理解できることが大切じゃないですか。

直感を信じるって20代だと働いた経験もないから難しいと思うんですけど、それまでに様々な学校を選んで受験しただろうし、家族の中でどういう決断した、どういう授業が好きだったとか、ヒントは色々ありますよね。適当に選んで生きてきましたって口では言う人も多いですけど、絶対そんなことないんです。たくさんの方の自己分析を一緒にやってきたなかで必ずと言っていいほど選択した理由の何かその材料が出てくると思いますし、社会人に入ってる段階だったらもう1個、就職活動っていう選択もしてるんでかなり多くのことがわかるんじゃないかなと思います。

若い頃にお金を稼ぐということも、意外と大事じゃないですか。僕も贅を尽くしたわけじゃないですけど、大体こんなもんだろうなって見えるというか。1万円のホテルと5万円のホテルは全然違うけど、10万円のホテルと20万円のホテルって多分そんなに変わらないですよね。そんな高いホテル、泊まったことないですけどね。

高いものに憧れなくなる、高価な消費をすることが自分の感動ポイントじゃないとわかってきたら「お金じゃないな」ってなって別の価値観を追いかけられるし、あのときあれだけ無駄な金使って遊んだから今は真面目にやろうみたいになるのもいいですよね。だから若いときにお金を稼ぐってのは、いいことなんじゃないかなとは思います。


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