見出し画像

事業領域を"日本酒"から"包丁"に変えた理由 (前編)

みなさんこんにちは!

Tashinam(タシナム)というMADE IN JAPANブランドを運営している松家です。

今週 4/20(土) お昼12時から第一弾商品「完全無欠包丁」をMakuakeにて先行販売いたしますので、ぜひチェックいただけますと幸いです🙌

先着50名様限定で¥10,000近くお得にご購入いただけるのでぜひ!

今回、新プロダクトをリリースするタイミングで、なぜ事業領域を「日本酒」から「包丁」に変えたのか?をまとめたおきたいと思い、筆を取っています。

4/20(土) お昼12時からMakuakeスタート!!!!

ご存知ない方のためにご説明すると、弊社は3年間ほど日本酒事業を営んでいたのですが、そこから市場を変え、今春から包丁事業をスタートしようとしております。

日本酒市場から撤退する話は、SNSで面識ある方にはしておりましたが、詳しい説明をしたことがありませんでした。

最初の日本酒事業

この前編では「なぜ日本酒事業をやめたのか?」をメインにお話ししたいと思います。

これから日本酒で起業をお考えの方や、既に事業をされている方、また中小の製造小売業に従事されている方にとっては学びある内容だと思いますので、ぜひご一読ください!

日本酒事業をやめた理由・反省

日本酒事業を撤退した一番の要因は「自分の愚かさ」にあります。

幾つもの考え不足が積み重なり、その結果、徹底を余儀なくされたので、全ては自分の過ちが招いた結果だと、深く反省しております。

しかし、そんな結論では身も蓋もないので、下記に具体的なエピソード・反省をまとめます。

 委託製造先からの突然の取引中断

まず一つの目のアクシデントは、委託製造先の酒蔵様から風評被害を理由に製造を中断されてしまったこと、これが最も直接的なきっかけとなりました。

ただ、これは撤退を考えるきっかけになっただけで、そのような状況を招いたのは、商流を正確に理解せず委託製造先を検討した自分に過失があります。

お取引は無くなってしまいましたが、どの酒蔵様も私達と真摯に向き合っていただきました。感謝しかございません。

では、何が起きてしまったのか?

そもそも日本酒の製造小売業を、新規参入者がゼロから行う手段は、基本的に1つしかありません。

既存の酒蔵様に共同製造を依頼し、商品を仕入れて販売する、この方法が最も一般的な方法です。日本酒業界ではPBやOEMと呼ばれます。

この数年間で、劇的に増加した日本酒ベンチャーのほとんどは、既存の酒蔵に製造を委託して、商品を製造・開発しています。

弊社も同様に、当初は既存の酒蔵様とお取引をし、Whitedropという商品を製造・販売しておりました。(リリース直後のnote、懐かしい)

しかし、ブランドをリリースしてから1ヶ月後に、取引先の酒蔵様から「製造・取引を中断する」と突然告げられました。

売り上げが伸びておらず商売にならないから、という理由であれば理解できるのですが、リリース後1ヶ月しか経過しておらず、初動の売上は好調だったので「なぜこのタイミングで中断するのか??」と驚きました。

その時期はコロナ禍だったため、オンライン上での面談の場しか設けられませんでした。そのため的を得た中断理由を理由を聴くことが出来ず、悶々とした時間を過ごしました。

そこで、直接お話しできないのもおかしいと思い、アポイントメントなしで直接酒蔵に伺いました。大雪が降る中で何時間も待ち、ようやく社長様がいらっしゃったので突撃し、理由を聴きに行ったことを、今でも鮮明に覚えています。

その日はとんでもないほど雪が降っており寒かった

断言されてはおりませんでしたが話から察するに、酒蔵様の取引先である「酒販店様」に理由があるようでした。

どういうことかと言いますと、そもそも酒蔵は、対消費者に向けて直接商品を販売しているのではなく、対事業者に向けて商品を販売することが一般的です。

つまり、お酒を酒蔵に代わって消費者に販売する「酒販店」が、酒蔵の主要なお取引先となります。

弊社が委託製造を依頼していた酒蔵様の、主要取引先である「酒販店様」が、弊社との協業関係に大きな懸念を示したようで、それが結果的に、製造中断に影響したのだと推察しております。(あくまでも推察であって断言された訳ではないです。)

酒販店からすると、取り扱いのある酒蔵が、別会社の商品を製造すると、取引本数が減少し商売に影響が出るため、そのような懸念を示したのでしょう。

また、弊社商品は価格・商品内容・販売方法などにおいて、かなり斬新だったため、新しいものに対する嫌悪感のようなものがあったのではないか?と考えております。

375mlで1万円ほどの価格だったWhitedrop、日本酒としては異例の内容

酒蔵様としては一番のお取引先である酒販店様に悪く思われたら、たまったものではありません。商売が破綻してしまう恐れがありますからね。

こうして、弊社は商品の継続的な製造が困難になりました。その後、長い時間をかけて、様々な酒蔵様とお話し、製造まであと一歩まで辿り着いたことも何度かありましたが、結果的に同様の理由で断られてしまいました。

本来であれば、昨年の秋にリリースする予定の日本酒事業がありましたが、同様の理由で中断せざるを得ない状況に。同じ過ちを踏まないようあの手この手を使って改善を心がけたのですが、全く無意味でした。

2年前にどこかへ逃げたくなって、なぜか飛騨高山に辿り着いた時の写真

日本酒で起業する場合に限った話ですが、この失敗から学んだのは「知名度ある酒蔵を、協業先に選んではいけない」ということです。

これだけが理由とは思っておりませんし、そもそも自分の考え不足が招いた結果です。しかし、この協業先を誤ったことで、多くの時間を無駄にしました。

もっと俯瞰して業界の構造を理解し、アプローチする酒蔵を検討するべきだったと反省しております。

とはいっても「知名度のない酒蔵を選べば良かったのか?」を問われると、そういう訳でもなく、味わいのクオリティが担保できかつ知名度がない酒蔵は、そう簡単には見つかりません。

ものすごく美味しければ、市場における知名度は高いはずですからね。

また、抽象度を高めて振り返ると「商流に逆らわない」ということは商売をする上で非常に重要だと感じました。

物流の話は関係ないが、わかりやすい図だったので添付

どういうことか?というと、前述のアクシデントは、日本酒市場の商流に逆らって、商売を行おうとしたことに原因があります。

日本酒の商売は、酒蔵がお酒をつくり、酒販店がそれらを仕入れ一般の消費者に販売する、というのが基本的な流れです。

この件で僕が犯した過ちは、酒蔵と酒販店との強い取引関係がある中で、それに逆行する形で、取引関係を結ぼうとしてしまったことです。

酒販店と深い関係にある酒蔵に「弊社とオリジナル商品を共同開発して欲しい」と頼んでも「いや、既に今の受注分のお酒を製造するので精一杯だし、懇意にしてくれてる酒販店から変な目で見られたくない。」と考えるのは至極当然のことでしょう。

日本酒ベンチャーの方々は本当にすごい。

既存の商流をよく理解して商売をしないと、事業が成立しない可能性が高くなることが、今回の件でよく理解できました。
(ごく稀に、商流に逆らっても成立している事例はありますが、何年間も時間をかけてようやく成立させたケースがほとんどで、ヒト・モノ・カネが不足しているベンチャーには向いていないと考えてます。)

また、取引相手に明確なメリットがなければ成立しないということも、当たり前ですが再認識しました。

それまではどこか「自分は若いから応援してもらえる」などという甘い考えを持っていましたが、現実は厳しく、コストに見合った対価がなければ、その取引は打ち切られてしまう、という当然のことを学びました。

この話、ものすごく当たり前だと思うんですけど、いざ当事者として、目の前のことに一生懸命になっていると、冷静に思考できなくなってしまうんですよね。

今後は「市場の商流における因果関係」を、深く理解した上で新しい事業に着手しようと、強く胸に刻みました。

見えない勝ち筋、競合の増加、メンタルの悪化

「事業戦略を考えられていなかった」ことが撤退を余儀なくされた二つ目の理由です。

こういう本をたくさん読んでおくべきだった

当然の話ですが、自社商品の便益がその市場・カテゴリーにおいて最も高くなければ、商売は成立しません。

しかし、起業したてのビジネス1年生がこの原理原則をしっかり理解した上で、事業をつくることはとても難しいです。

まさに僕も、この原理原則をしっかり踏まえ事業を立ち上げなかった結果、事業撤退することになりました。

立ち上げたWhitedropという商品は、商品のビジュアルや味わいに関しては、素晴らしいクオリティでした。もう2度とあのようなクリエイティブな商品はつくれない気がします。

今でもクリエイティブ面は唯一無二だったと自負できる

しかし、事業戦略を一切考えずに事業を立ち上げてしまったため、価格や販売方法などはかなりブレブレで、発売してから途轍もなく苦労しました。

自分達が狙おうとしているのは市場のどのカテゴリーなのか?そのカテゴリーで現在受け入れられている商品は何か?その商品と比較しどういった点で勝ることができるのか?勝るために講じるべき打ち手は何か?こういったことを整理して考えられていませんでした。

このような状況で事業をスタートしてしまうと、まさに暗闇の中を闇雲に進むことになります。

何度この表情になったことか…

無闇矢鱈にWeb広告を回してみますが、当然、費用対効果は合わず。

かといってオフラインで販売しようとしても、商品内容の斬新さが逆効果となり、一般的な日本酒の販路で販売することはできず。

そういったことを繰り返すうちに、何をやるべきなのかが全く分からなくなり、毎月数十万円単位で減っていく銀行残高を前にして、ただただ胃が痛くなる、そんな日々を過ごしました。

地獄です。もう2度と同じ経験はしたくありません。

豊富なビジネス経験を持つ方やスマートな天才であれば、最初から事業戦略をしっかり考え、適切に事業を前に進めることが可能なのかもしれませんが、それまでロクなビジネス経験がない学生起業家が、完璧な事業戦略を描き実現させるスキルはど当然備わっている訳がありません。

また、何を勘違いしたのか、1人で事業を立ち上げ運営できると過信していたことも、大きな過ちです。優秀な方を一人でも二人でも巻き込んで、ゼロから一緒に事業開発するべきでした。

このような状況をしっかり認識し「もう一度、日本酒市場で新規事業をつくろう」と考えたのが2022年の秋頃。

しかし、そのタイミングでは時既に遅し、無数の日本酒ベンチャーが生まれていました。

SAKE Street様から引用

若年層向け、小容量、高価格帯、海外志向、クラフトサケ、いたるカテゴリーで無数のベンチャーが登場し、「これから何をやれば良いんだろう?」と途方に暮れました。

「今、日本酒の事業を行って何になるんだろう?」「何を考えても、既にある商品・サービスと類似してしまう」「そもそも利益はしっかり出せるのだろうか?」「というか、こんなに新しい商品・サービスがあるのに自分がやる必要があるのだろうか?」

考えれば考えるほど、我々の日本酒市場における存在意義がわからなくなる。

新しい何かを考えても、結局は既にある商品・サービスと似たようなアイデアになってしまう。これを何度も何度も繰り返した末「日本酒市場で突出した事業をつくることは、もう難しいのではないか?」と考えるようになりました。

考えている間にも、会社の銀行残高はどんどん減っていきます。あの時の胃がキリキリするような感覚は、何度経験しても慣れません。

キャッシュがただ減っていく、本当にしんどい

しかし、事業として立ち上げてみないと何も分からない、という気持ちもありましたし、何より20代のほとんどを日本酒だけにコミットしてきたので、そう簡単に日本酒事業をやめられるわけありません。

やるだけやってみて、それで無理だったら諦めよう。

そう考え、起死回生の一手としてリリースしようと準備した事業も、前述の理由でリリースができなくなりました。

「まじ、何やってんだろうな…」と後ろめたい気持ちになりました。

起業して3年近く経ち、何もできていない自分に焦りと悔しさ、いろんな感情が込み上げてくる。

20歳で起業して気づいたら23歳になっていました。

大学も中退し、死に物狂いで頑張っていた

これはもう、無理だ。何かの糸が切れてしまい結果、日本酒の事業から離れることを決めました。

諦めなくても良かったのでは?という問い

以上、協業先とのトラブル・不完全な事業戦略・事業環境の変化、様々なことが重なり日本酒事業から離れることになりました。

日本酒事業から離れた直接的なきっかけは外部要因だったかもしれませんが、結局「諦めてしまった」ということに尽きると思います。

本来であればしっかり撤退ラインを決めて「ここまでやって上手くいく見込みがなければ撤退する」というように事業検証を行うべきですが、そんなスマートにはできず、ズルズル引きずった結果、やめざるを得ない状況になったというのが真実です。

こういった話をすると「松家くん、あれだけやってた日本酒やめちゃうんだ」とか「諦めずに日本酒一本でやんなよ」とか言われることが多いです。

しかし、この経験を経て自分は「日本酒」をやりたい訳ではなく「日本のプロダクトで世界を豊かにし、日本の未来に貢献したい」という想いが強いということを実感しました。

ただ「日本酒が好き」なのであれば、それをピュアに追いかけ日本酒に関わる仕事をすれば良いです。

そういった未来も、日本酒事業をやめようか悩んでいた時に、もちろん考えました。

しかし、僕が事業を通して行いたいのは「日本の伝統的なモノづくりを活かして、現代社会を豊かにする」ことです。

日本にある可能性ある伝統的なプロダクトを用いて社会を豊かにし、日本の未来に少しでも貢献する。

「日本酒」はそのうちの一つに過ぎない、と考えを改めました。

それまで、日本酒事業を辞めることに罪悪感を強く感じ、引くに引けなくなっていました。

しかし、日本酒に固執した結果、会社が潰れてしまったら本末転倒です。

諦めることでしか見えない景色がある

諦めることでしか見えないものがあるのではないか?そう考えるようになりました。

ネガティブな意味での"諦める"ではなく、新しい可能性を掴むため、ポジティブな意味での"諦める"と捉え、日本酒事業をやめようと決意しました。

ただ、日本酒以外に何をするのか?そんな時に辿り着いたのが「包丁」です。

後編に続く!


今週 4/20(土) お昼12時から第一弾商品「完全無欠包丁」をMakuakeにて先行販売いたしますので、ぜひチェックいただけますと幸いです🙌

先着50名様限定で¥10,000近くお得にご購入いただけるのでぜひ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?