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研究の話③:下水サーベイランスの話。下水からコロナが検出されるというのは聞いたことがありますか。そのコロナウイルス自体に感染性はないとされているんですが、下水のコロナを調べれば感染の拡大状況を測れるのではないかという期待があります。

修士を終えて、博士課程の進学先を探している間に、地元に帰って実家から通える大学で研究室のお手伝いをさせてもらっていました。

そこでお世話になることになったのが、工学部で環境系の研究を行っている研究室です。(まただいぶ違ったところにきましたね)

下水サーベイランスという言葉を聞いたことがありますか?

新型コロナの流行で、感染状況把握の手段として注目された技術です。

新型コロナウイルスは、感染者のかなりの割合で糞便へのウイルス排出が観察されています。また、感染症を発症していない無症状の患者からもウイルスを検出したという報告もあります。

糞便の集まる下水を調査して、そのウイルス濃度を調べれば集水域の感染状況が推定できるのでは、というのが下水サーベイランスの基本的な考え方です。(感染状況には、初期感染の発見、遺伝子型の観察、遺伝子変異の発見などを広く含みます)

PCR検査や抗原検査は人間が病院に行って診察検査を受ける必要があります。一方で、病院に行かない人間もトイレには行きますので、そういった行動バイアスが排除できるのも利点と考えられるかもしれません。

もちろん、本当の患者数の推定がウイルス濃度によってできるのか、という部分は議論があるところで、それぞれの患者が出すウイルス量も様々なので、量的な関係は集水域の特性や下水の集水手法にも左右されるところがああります。

私が関わっていた下水サーベイランスのデータはHPに公開されていますが、これを見るとかなり感染状況を反映しているように感じますね。

検体の集め方から、処理法、分析手法、などなどまだまだ研究が進められている分野で、今後の展開にも期待ですね。
インフルエンザや、ノロウイルスにも類似の技術が応用され、感染予防に役立っていくことが考えられています。

これこそ下手なことが言えず、一般的な内容になってしまいました…

コロナウイルスは本当に人類にとって災難で、大変な思いをたくさんした方が多いと思います。しかし、下水サーベイランスの研究にとっては、詳細な患者の疫学情報という、いままで取りたくても取れなかった情報がたくさん入手可能になり、一気に発展の可能性を大きくしたと言えます。

いま、コロナが一旦落ち着いているからこそ、今後の活用に向けても議論が深めていくことが求められています。

マニアック研究紹介、誰が読むんでしょうか?
でも書いてて楽しいのでOK。


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