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研究の話②:生分解性プラスチックの話中学校の教科書でやったよね?微生物がつくる生分解性の高い洗剤はみんな違ってみんな良くて、中にはガンに効くかもっていうやつまでいる。

さて、研究の話シリーズ第2弾。(1弾を読んでくれたマニアックな人へ!)
修士課程で行った研究のお話です。この前のほうれん草のお話と全然違うことにお気づきでしょうか。
(勘のいいガキは嫌いだよ。)
一貫性のない研究キャリアは結構敬遠されます。そりゃあ、もっと長い時間一つのことに取り組んだ方が成果も出やすいしね。でもこうなってしまったのでしょうがないということで、許してください。

生分解性プラスチックのお話が国語の教科書だったかな?に出てきたような微かな記憶があります。普通のプラスチックは土に埋めてもずっとそのままだけど、生分解性のプラスチックは微生物が分解して土に還るから環境にやさしい!というようなお話です。

キーワードは「生分解性」英語では、Biodegradabilityと言います。環境負荷を考えて、生分解性の高い物質で既存の材料を置き換えられないか、という取り組みが世界で行われています。SDGsですね。(弟が、SDGsのGoal0は「人間を消そう」、と厨二病発言をしていました。それな!)

洗剤に含まれる界面活性剤も生分解性が問題になる材料の一つです。下水として処理できていない洗剤が、河川等に流れるとよくないのはイメージ通りかなと思います。科学合成洗剤も多くは石油由来の界面活性剤を含みます。意外にこれ、知られていないケースがあるんですけど。
界面活性剤は、洗濯洗剤や食器洗剤以外にも、化粧品や表面処理、乳化剤、食品、薬、いろんなところに使われています。

そこで登場するのが、微生物(植物細胞由来のものもある)が生産する界面活性剤、バイオサーファクタントです。

バイオサーファクタントは、もともと、微生物が外界の炭素源(主に糖)を体内に取り込む際に合成される二次代謝産物と考えられています。特徴として、与える糖源、育成環境、微生物の種類、株によって組成や立体構造がかなり異なるということがあります。

さらに、そのさまざまな構造の違いは、さまざまな特性の違いをもたらし、すごいポテンシャルを持っているのでは、と注目されているのです。

例えば、先述の食器用洗剤としては、ソホロリピッドというバイオサーファクタントを用いた商品がすでに販売されています。皮膚へのダメージが少なく、生分解性が高いバイオサーファクタントです。

化粧品の分野では、洗顔や保湿剤としての利用の可能性が模索されています。皮膚へのダメージを抑えることや、アクネ菌(にきび)の繁殖を化学合成洗剤より効率よく抑えるバイオサーファクタントも報告されています。

そんな色々な可能性を秘めたバイオサーファクタントですが、なんと、ガンに効くんじゃね?というやつまでいます。界面活性剤にはもともと細胞毒性をもつという特徴がありますが、通常細胞にはそうでもないのにガン細胞には強い細胞毒性を示すバイオサーファクタントがあれば、化学療法への応用が期待できるのではないか、ということです。

この研究のため、僕はイギリスで微生物を増やしたり、ガン細胞を増やしたり色々なものを増やす生活を送っていました。

1年しかなかったのであんまり深くは携われなかったけど、色々な応用が期待されてて面白いバイオサーファクタントのお話でした

世の中には不思議なものや面白いものがたくさんありますね。

こんな研究を経て、今はまた植物に戻ってきた僕ですが、博士の研究の話はもう少し詳しくなってから話します!沼。


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