Jリーグにフォーカス1「真夏のように熱い魂と魂が昇竜」2024 J1 第2節 川崎フロンターレvsジュビロ磐田



1、嵐の序章~浜松の風~


 素晴らしい試合であったので、中立の立場のミニレビューという形で、この試合を振り返りたい。

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 久々にJ1の試合をフルタイム90分間。いや、105分にも及ぶ凄まじい試合でした。前半もスコアがかなり動いた試合でしたが、川崎がボール保持するも磐田のブロックを崩せず、攻めあぐねた。

 そこを磐田の速攻とも、攻守でのスプリントともいえる魂のランのハードワークで、4松原 后 選手、37平川 怜 選手、10山田 大記 選手、7上原 力也 選手を中心とした崩しから50植村 洋斗 選手のプロ初ゴールとなる左足一閃のコントロールシュートが、左隅に突き刺さる。

 更に新加入の37平川 怜 選手が、プレスでボールを奪うと4松原 后 選手のピンポイントクロスで、11ジャーメイン 良 選手のヘディンシュートでの得点をお膳立て。23シーズンでのJ2でも多く生まれた4松原 后 選手のアシストで、追加点

 まだまだ勢いにのる磐田。まるで川崎の崩しのように、誰がタッチしたか磐田の試合を見慣れていないと追えない高速のパスワークで、川崎の守備ブロックを無力化。ただただ立ち尽くすしかできないというイメージがしっくりくる高速のパスワークで、11ジャーメイン 良 選手が、この日2得点目で、リードを0-3としてアウェイの磐田の勝利で、大勢が決したように感じたが、川崎も意地をみせる。

 磐田が、0-3というリードで気を良くしたのか、軽率なバックパスで、ボールを失うとそこからカウンター。ここまでは、分厚いブロックを築いて、川崎の攻撃を防いでいたが、そこには、広大なスペースがあったが、磐田も懸命に戻りつつ、防ごうとするが、スピードに乗らせて、スペースの与えられた川崎の攻撃を防ぐことはできない。

 その過程で、何度か防ぐチャンスがあったようにも見えたが、最後はこぼれ球に反応した9エリソン 選手が、開幕戦に続く得点で、1点を返す。こういった決定機をしっかり決め切るストライカー。今季の川崎の攻撃を牽引するのではないかと感じられた。23マルシーニョのスプリントも効いていた。

 その後も点が入っても不思議ではなかったが、前半のスコアは1-3で、アウェイの磐田のリードで終える。この時は、まだ後半がより凄い試合になるとは夢にも思わなかったが、両チームとも攻撃的なチームで、今となっては納得であるものの次は、後半を振り返りたい。


2、魂(水色)と魂(水色)の闘い~灼熱の魂(水色)~


 後半の頭の入りも川崎が勢いを持ってはいる。磐田の0-3から1点返されたが、まだ2点あるという(そう思ってなくても生じてしまう)気の緩みという隙を見逃さないホームの川崎。セットプレーのチャンスで、後半頭から入った16瀬古 樹 選手の右足から繰り出されたボールにまたしても9エリソン 選手が頭で決め切る。フリーで打たせてはいけない所で、放たれたヘディングシュートは、ノーチャンスで、そのままゴールネットを揺らす。これで、1点差。勝負は分からなくなる。

 川崎も磐田のように左サイドのクロスから形を作る。足を懸命に伸ばしたり、ブロックしたりと、ゴール前で体を張る磐田の選手達。しかしながら、ここで決め切るのが川崎の決定力。最後は、23マルシーニョが押し込んで同点。

 前半だけで、一時期は0-3となっていたスコアもホームの川崎が、30分だけで追いついた。磐田が、前半の0〜30分で3点決めれば、川崎も前半の30〜後半の15分で3点返して見せた。

 両チームのスコアが、激しく動いた通り、両チームの選手の消耗は激しく、ボールを持てていなかった事で、長い距離を走る事の多かった磐田の選手に疲れが見えて、磐田は、10山田 大記 選手、37平川 怜 選手、14松本 昌也 選手が下がって、31古川 陽介 選手、99マテウス・ペイショット 選手、13藤川 虎太朗 選手が順次投入された。

 このまま川崎が逆転するかと思われたが、先制ゴールの50植村 洋斗 選手の芸術的なスルーパスが通って、一瞬の隙を見て裏にスピードに乗って抜け出した11ジャーメイン 良 選手が、1チョン・ソンリョン 選手が手を引っ込めたものの残った足が僅かに当たった末に、VARが入って、PKの判定となった。

 このPKを11ジャーメイン 良 選手が、難しいコースにコントロールショットを放ち、緩いシュートでも1チョン・ソンリョン 選手が絶対届かないコースへと突き刺さった。緩く蹴っている事で、緩やかな放物線を描いて、1チョン・ソンリョン 選手のはるか上を通過して決まった。

 このゴールを見た川崎も怒涛の4枚替えで、最後の勝負にでた。PKと交代を経て、時間こそ5分立っているが、ほぼPKの直後のプレーで、今度は、川崎がPKを獲得した。

 ここまで川崎の得点で、アシストを記録している16瀬古 樹 選手のスルーパスに、4枚替えで入った1選手であった20山田 新 選手が裏へ抜け出すと、磐田の壁である36リカルド・グラッサ選手より先にタッチして、ライン際で前にでようとしたところで、36リカルド・グラッサ 選手のアフターとなってしまった事で、倒されて川崎にPKのチャンスが訪れる。

 誰が蹴るかという事で、主張があったが、ボールを話さない20山田 新 選手。ハットトリックがかかっていて蹴りたがっていた9エリソン 選手も蹴りたいと主張していたが、最後の最後に20山田 新 選手が折れて、ボールを渡そうとするも、9エリソン 選手が、そこまで蹴りたいなら蹴ってこいとすぐにボールを渡し返して、背中を推す。

 その押して貰った力をボールに乗せた20山田 新 選手のPKは、11ジャーメイン 良 選手と同じコースに強烈なPKシュートを突き刺した。最終的には、ほぼ同じ位置に突き刺さっているが、直線的なシュートの軌道なので、1川島 永嗣の手の近くを通るも、スピードとコースが素晴らしく、ノーチャンスのPKシュートが決まった。

 この時後半の40分。残り時間はAT込みで10分ぐらいを想像するかもしれないが、試合を見ていれば納得のAT9分もあった。流石に後半だけで4得点。更にVARの確認があれば、納得のいく時間であった。

 勝負は、ATへ!


3、壮絶の打ち合いの先に~脈打つ魂~


 ここまで来ると、魂(気持ち)と魂(気持ち)のぶつかりあいだ。どっちが勝つのか。AT9分。何が起こっても不思議では無かった。

 そして、その何かが起こった。ロングパスに競り勝った99マテウス・ペイショット 選手の落としたボールは、再び11ジャーメイン 良 選手の下へと転がる。川崎の選手もついてたいて競り合うと、なんとなんと11ジャーメイン 良 選手の前へと転がって来る。

 これを冷静に流し込んで、勝ち越したかと思われたが、なんとVARが介入。その結果、まず11ジャーメイン 良 選手の得点の前に11ジャーメイン 良 選手のハンドが合った事で取り消し、しかしその直前に30瀬川 祐輔 選手のハンドがあったことで、PKの判定となった。

 複雑な判定であったことで、主審の飯田 淳平さんのPKを指すリアクションにも力が入る。凄まじい歓声や声。磐田の選手も得点が入っているのになぜPKと抗議するが、冷静に状況を伝える7上原 力也 選手。

 キッカーの11ジャーメイン 良 選手にも苦笑いを浮かべるも、ここまで3得点のメンタルは、それだけでは乱れない。今度は、1チョン・ソンリョン 選手の動きを見極めて、先に動いた1チョン・ソンリョン 選手の逆に冷静にコントロールショットを放ち、PKを決め切った。

 VARが入って、ATに得点があったことで、ATは更に伸びた。試合時間は、105分を越える。途中川崎のセットプレーのチャンスがあったが、1川島 永嗣 選手を中心とした磐田は、3度目のリードを、今度こそ守り切った。

 両チーム合わせて、9得点入った壮絶な打ち合いは、J1に戻って来た磐田に軍配が上がった。

 川崎は、立ち上がりの3失点を悔やまれるが、筆者である岡山サポである私には、磐田の壮絶な粘りや攻撃的サッカーを凄さを嫌という程、体験している。

 野球のような面白い試合は、川崎が意地を見せるも、磐田が、自分達のサッカーを貫き、激闘を制することができたと言えるだろう。

 2024シーズンのJ1でも記録にも記憶に残る試合になったと言えるかもしれない。それぐらい面白い試合であった。


4、チーム評(川崎)


 川崎は、敗れはしたものの9エリソン 選手は、得点王に絡むのではないかと感じた。まず、90分間走り切れるスタミナやスピードもあって、シュートも迷いなく、厳しいコースに決め切れる。頼れるエースの誕生だ。

 ただ、一方で、中盤のチャンスメークする部分や1対1で突破する部分に関しては、やはり連覇していた時ほどの勢いというか怖さがないのも事実だが、当時の選手達の多くは、海外で活躍している選手ばかりなので、比べてはいけない。

 しかし、PKを決めた20山田 新 選手やスタメンの2高井 幸大 選手といった生え抜きの選手が、しっかり主軸として試合に絡んでいる。こういった選手を育てる土壌こそが、川崎の強さだ。そう考えると、川崎の時代が再び来る気がしてならない。

 新旧のベテランや若手のバランスが良く、長い間上位進出を狙い続けてきた川崎にとって、悔しい敗戦となってしまったが、4-1-2-3の前から行くスタイルを体現できるクラブは、J1でも少ないですし、このスタイルで、孤高の強さ、極地へち辿り着いて欲しい。そういった夢や浪漫のあるクラブが、川崎というクラブである。


5、チーム評(磐田)


 そして、壮絶な打ち合いを制した11ジャーメイン 良 選手は、1試合で、J1でのシーズンキャリアハイを更新しての4得点。今後を戦う上で自信を掴むことができたことは、大きなプラスとなるだろう。

 更にJ2でもSBの得点やアシストの多い磐田スタイルは、J1でも通用した。この試合でも4松原 后 選手が2アシスト。ルーキーの50植村 洋斗 選手も1ゴールとPKに繋がる長いスルーパスを通すなど、今季の磐田の両SBは、まさに大車輪の活躍となった。

 磐田の得点力は、両SHだけではなく、両SBにもエンジンがある4WD車のようなエネルギーを感じた。後は、そのパワーを如何に攻守でコントロールできるかである。

 磐田の守備のエースと言える36リカルド・グラッサ 選手も対応に苦しんだ守備に不安こそあるが、攻撃スタイルで、ここから勝ち点を積み重ねて行く。そういった予感を感じられる勝利となった。


6、最後に~余韻と共有~


 正直、サッカーの魅力が詰まったとても面白いゲームであった。0-3から追いついた川崎の意地も凄かったし、2度追いつかれても3度目のリードを手にした磐田の前を向く強さも際立った。

 勝ち点3を手にして自信を掴んだのは磐田かもしれないが、川崎としても0-3からでも追いつける底力。そして、最後まで諦めずにチームを後押しする熱いサポーターの力を内外に強くアピールした。

 川崎と磐田の悪い所も良い所も出た試合であったが、サッカーでもこんなに得点が入るという事に驚かされたし、今後の両チームが、この試合を経て、どう変わっていくのか。とても興味が沸く、魂の1戦であった。

 本当に熱い熱い最高の試合でした。ありがとうございました。

文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino


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