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身体にやさしいお菓子作りが呼び込むこだわりを持ったお客さん〜Petit bonheur・明石さん

「杉の雫」から辿る、今回の対談は、Petit bonheur(読み方:プチ・ボヌール)より店主の明石さんが登場します。明石さんは、秋田市で焼き菓子の専門店を営まれていらっしゃいます。今回、杉の雫を店頭にて取り扱ってくださっています。また、商品開発の段階からアドバイスをいただいてまいりました。

今回の対談テーマは「こだわりについて考える」。明石さんならではの温かいお話をたくさん伺うことができました。なんと二人の出会いは「ママ友」としてだったとか!仕事と家庭の両立についてまで及んだ対談、どうぞお楽しみください。(*対談記事内、敬称略)

Petit bonheurにて

対談相手を務める「杉の雫」開発担当者・高嶋とインターン生・三政のインタビューはこちらから!


住宅地の一角でオープンしたお菓子屋さん

高嶋
「明石さんがこのお店をオープンした時は3年前ですよね。前からやりたかったことを実現した形でしょうか」

明石
「お菓子作りを勉強していた頃は、お菓子教室っていう教える方の仕事がしたいなと思っていたんですが、やっていくうちにお店もやってみたいなって始めましたね」

高嶋
「それを実現させてしまうところがすごいですよね」

明石
「今の風潮的に個人で経営している人が増えてきていますよね。そして、女性の方も。お金がなくても、工夫次第ではできるのかなっていうところから、今ある資金で出来る範囲からやってみようということでお店をやってみました」

高嶋
「こだわっているかわいいお店ですよね」

明石
「ここは居抜き物件だったんです。もともとは大家さんが営んでいた定食屋さんでした。居抜き物件であることが私の条件だったので、いいタイミングで貸していただきましたね」

高嶋
「でも今や定食屋さんだったとは思えない内装ですよね」

明石
「知り合い伝いにリノベーションを担当してくださる方を見つけて。それでイメージをお伝えして、その通りにつくっていただいた感じですね。細かいところはその方の感性で作っていただきました。その方が、タイルが好きな方で!今どき珍しいとは思うんですけど、タイルの装飾がたくさんありますね」

高嶋
「本当に素敵ですよね!ヨーロッパのような内装!」

明石
「インテリアもお友達に好きな方がいたので、選んでいただきました。お店の準備はありとあらゆることが必要なので。一人では大変だし時間が足りなかったり、時間があっても思い通りにならなかったり…もあるから、チームワーク良くまとまったかなと思います」

高嶋
「明石さんが作るお菓子と(内装の)雰囲気が合っていると思います!」

明石
「本当にありがたいです」

美味しさはそのままに、身体にもやさしく

高嶋
「いろんなお菓子をこれまで食べてきましたが、私は明石さんが作るお菓子が一番好きです笑」

明石
「あら、ありがとうございます!うちのコンセプトとしては、健康に気を遣ったものを作っています。前職が健康志向の強い食堂にいたので、そこから強い影響を受けたとは思います。実際に健康的な野菜の量で作った定食を作るとなると、相当な量の野菜を切っていました。あれを(個人が自宅で)毎食食べるのも大変だし、作る方はもっと大変ですよね笑」

高嶋
「でも、お菓子のような嗜好品でも身体にやさしいものを作っていこうというのがこのお店のコンセプトですよね」

明石
「前職でも健康的で秋田らしいスイーツの開発を担当していましたね。だから、ここでも同じレシピではないんだけど、秋田産のえだまめを使ったパウンドやほうれん草のペーストを使った蒸しケーキを作っていくうちに、やっぱりそっちの方(健康志向)に偏っていっちゃって。お店を始める時に、立地もあまり良い場所とは言えないし、近くにお菓子屋さんもたくさんあるので、特色のあるものがいいなということで『健康に気を付けたスイーツ』にしました。かと言って、美味しくないと続かないと思うので、そこら辺のバランスは大切にしています」

高嶋
「本当に美味しいです。それなのに身体にもやさしいなんて!」

明石
罪悪感なく食べられて、毎日食べても負担のないものをと思っています。お菓子はあくまで嗜好品で、ほっとするような時間に食べるものなので、美味しくないと意味がないかな、と。スイーツは食事以外のちょっとした息抜きとして召し上がるものなので、基本的には美味しい味じゃないといけないというところは外せないですね」

「ちょうどいい商い」のすゝめ

明石
「ちょっとしたプレゼントでも、珍しいからといって選んでくれる方もいます。週三日しかやっていないので、忙しい方だと買いに来られないのでね。やってみて初めてそんな風に買ってくれる方もいらっしゃるんだなあと思いました」

高嶋
「ここの商品を気に入って、その日しか買えないからってわざわざ足を運んでくださるんですもんね」

明石
「私の個人的な都合で週三日の営業なんですけどね笑」

高嶋
「でも一人で全てをやっていくとなると…」

明石
「それ(週三営業)しか無理だなあと思ったの。作るのも自分で、売るのも自分で、ってなると」

高嶋
「だから本当によくやっていらっしゃるなあと思います」

明石
「とんでもない!」

高嶋
「3年も続けていらっしゃるのは素晴らしいことですよね。長く続かないお店も多い中で…」

明石
「そうですね、飲食店としては3年が目安なんて言われたりもしますけど…無理しないペースだからできるのかも。1ヶ月もお休みすることもあるんですよ、子供の受験を理由に!そんなお店もないですよね笑」

高嶋
「自分も家族も体を壊したらやっていけないですよね」

明石
「常連さんも納得してくれるんです、『うん、それなら!』って。本当にありがたいことです。これからもそんなペースで続けていけたらいいですね。ここだからこそできることです。みんなに喜んでもらえて、私も嬉しいっていうね」

三政
「お話を伺いながら、ちょうどいい商い、心地よいビジネスという感じがしますね」

明石
「店を作っていくコンセプトの一つの中に、あくまで子育てをしながら、というのがありましたから」

高嶋
「それは重要ですよね」

明石
「うん、どちらも大事っていうね。どちらかが犠牲になるというやり方じゃなくできる。そうとなれば、自分の店を持つしかなかったですね」

高嶋
「仕事を優先させて家庭を我慢させてしまうことも、働いているとありますね…」

明石
「多少はありますよね…」

三政
「そこが難しいところではありますよね」

こだわりがまた誰かのこだわりと出会う時

対談当日は、クリスマスイヴ。一人のお客さんがご来店され、丁寧に時間をかけてお菓子を選んでいる姿がありました。

高嶋
「こちらのお店にはこだわりのあるお客さんが多くいらっしゃるんですか」

明石
「それはあるかもしれないですね。あとはもらいものとして食べて気になったから、と言って来てくれる方も割といます」

高嶋
何気ない消費にこだわりをもった方がいらっしゃっているのかなと感じました。身体にやさしい、とか、渡す人のことを思って…」

明石
「だから妊婦さんに渡すために、出産祝いに、妊婦さんご自身が…と使ってくれる方もいますね。意外と贈り物として使っていただくことが多かったなって気付きましたね。

普段自分で食べるものとして買っていかれる方は、同じお菓子をリピートする方も多いです。例えば、ナッツのタルトだけ…とか!毎週それだけ買っていく方なんかもいらっしゃいますね、本当にありがたいです」

高嶋
「自分で食べても美味しいし、送っても喜ばれますね」

三政
こだわりを持ったお店だからこそ、誰かにあげたい、特別なものを渡したい、という方に選ばれているんだなあ、と感じましたね」

明石
「以前お客さんで、息子さんが生前にナッツが好きだったから、仏前にナッツのタルトを供えたいんだけど…っていう方がいて。息子さんのお嫁さんもナッツが好きな方だし、そのお客さん自身も好きなものを仏前にあげたいって思ったんじゃないかなあ。気持ちが伝わるように、って」

三政
誰かに渡したくなるお菓子ってあたたかいなと思って。この美味しさをこの人と共有したい、という気持ちにさせてくれるお菓子を作っていらっしゃる明石さん、本当に素敵だと思います。自分だけで美味しさが完結せずに、誰かと分かち合いたいと思う味ということですもんね」

明石
「ありがとうございます、まっすぐに言われちゃうと照れちゃいます…笑」


というわけで、今回の対談はここまで。こだわるけれど、無理しないペースで。明石さんの思いが詰まった焼き菓子屋さんPetit bonheurについてお話を伺いました。改めて、明石さんありがとうございました。