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秋田らしさの追求からみんなが驚くお酒をつくる〜秋田県醗酵工業・佐々木さん

「杉の雫」から辿る、今回の対談は、秋田県醗酵工業株式会社より佐々木さんが登場します。秋田県で蒸留酒製造のパイオニアである秋田県醗酵工業さん。杉の雫の製造を担ってくださっています。

秋田県醗酵工業株式会社にて(左:株式会社サノ高嶋、右:佐々木さん)

今回の対談のテーマは「杉の雫の製造技術に迫る」。秋田県醗酵工業さんが長年培ってきた技術や商品開発について詳しくお話を伺いました。昨年、話題になった「秋田杉GIN」の開発秘話についても教えていただきましたよ!(*対談記事内、敬称略)

対談相手を務める株式会社サノ開発担当者・高嶋とインターン生・三政の対談はこちらから!


秋田県醗酵工業の技術と「杉の雫」

高嶋
「今回、杉の雫の製造を担ってくださるのが、秋田県醗酵工業さんです」

佐々木
「そうですね、ラボスケールから実製造スケールまでのスケールアップを担当させていただきました」

実験室から生まれた「杉の雫」を、製品として世に送り出すための量産化には秋田県醗酵工業さんが培ってこられたノウハウが使われています。

高嶋
「秋田県で蒸留酒といえば、秋田県醗酵さん、という感じですよね」

佐々木
「そうですね、県内でお酒を作っていらっしゃる会社さんはたくさんあるんですが、蒸留酒は多くないと思います。元々弊社は、アルコール自体を製造していた会社でもあるんです。清酒だけを作っている会社さんよりは『蒸留』というところに馴染みはあったと思いますね」

高嶋
「ちなみに御社の創業は何年になりますか」

佐々木
「昭和20年4月に合成清酒、焼酎及び原料アルコールの製造会社として設立されたので、2021年で創業77年ですね」

高嶋
「その頃から清酒ではなく、アルコールや蒸留酒をメインに製造なさっていたんですね」

佐々木
「元々原料アルコールや、それを原料とした甲類焼酎や合成清酒を製造する会社としてスタートし、途中で湯沢市内の酒蔵さんを合併して清酒の方も作り始めました。その都度、いろんな免許を取得して、今ではリキュールやスピリッツも作りますね。ワインを作っていた時期もありました」

高嶋
「やっぱり県内の酒蔵さんとは製造現場も違いますよね」

佐々木
「そうですね、他の酒蔵さんと比べると工場感はありますよね」

実際に「杉の雫」を蒸留する製造現場も見学しました

「秋田らしさ」の追求と「秋田杉GIN」が誕生するまで

高嶋
「御社は、特に秋田の物を使って製品を作る取り組みをされていらっしゃるんですか」

佐々木
「そうですね。今スーパーのお酒コーナーに行くと普通に九州のお酒とか、いろんな地域や種類のお酒がありますよね。その中で秋田県にある弊社が一体何をしていくかとなると、やはり秋田のものにこだわっていかないと、というのはあります。一昨年から販売している『秋田サワー』だったり、秋田のものを何かしら使って秋田県醗酵ならではのお酒が作れないかという取り組みをずっとしていますね、それがまさか『秋田杉の葉っぱ』にたどり着くとは…!」

秋田県醗酵工業さんは、秋田杉の葉とボタニカルを使用したクラフトジンを製造されています。昨年は、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)の洋酒部門にて最高金賞を受賞するなど、ご存知の皆さんも多いはず。

高嶋
秋田杉の葉に着目した理由はあったんでしょうか」

佐々木
秋田らしくて香りに特長がある、という点に注目しました」

高嶋
「佐々木さんが感じる秋田杉の良さについてお伺いしたいのですが…秋田杉って意外と県外には知られていないっていうのが事実なんですよね」

佐々木
「秋田杉を使ったものと言われて、ぱっと思いつくのが、やっぱり『曲げわっぱ』ですよね。でも杉自体あまりプラスに捉えられることが多くないと思います、スギ花粉とか。でも学生時代の卒論のテーマが「杉」だったこともあって、爽やかな香りのイメージを私は持っていますね」

高嶋
「2021年は御社の秋田杉GINがNO.1を受賞されたということで、全国的な秋田杉の知名度も上がったのかなと思います。本当に有難いことだなあ、と!笑」

佐々木
「そうですよね、あれだけ商品名に秋田杉をドンと謳ったものもなかったので。他にも杉をボタニカルの1つにしたジンはありますが、弊社のように秋田杉を主戦力とした商品はあまりなかったと思います」

佐々木
「ずっと『森林浴のような』というのをコンセプトにレシピを作ってきました。紆余曲折を経て…という感じですね笑」

高嶋
「試作や試飲をたくさんされたという話は聞いたことがありますが…」

佐々木
「そうですね、実製造を担当するためのレシピがなかなか決まらなくて…結構ヤキモキしました」

高嶋
「配合のバランスなどもあるんですよね」

佐々木
「あれは…大変ですね…レシピ開発を担当していただいた方に相当な数を試していただいて良い配合となりました」

高嶋
「そこで『森林浴』を想起させる味に辿り着いたんですもんね…」

佐々木
「最初からレシピ開発に携わった皆が海外に売りたいっていうのはありました。私や当時の製造部長は、そんなに簡単に製品が売れるわけがないという話もしましたが…とにかく、海外のジンの規格に合うような設計をしました。日本で乙類焼酎をベースに製造したジンは、海外の一部では地域で定めるジンの規格に当てはまらないんです」

高嶋
「対象としては、海外の人も見据えているんですね」

佐々木
「そうですね、ジンをいつも飲んでいる人たちが飲んで『美味しい』と思うジンを作る、という姿勢が賞をいただいたところにつながっているんじゃないかと思いますね。『ジン風』ではなく、明らかに『ジン』であり、特色は秋田杉であると言えるものを造りましたね」

商品開発の難しさと今後の目標

高嶋
「本当に一つの商品を作り上げるのも大変ですよね」

佐々木
「先達がいなかったので…平成14年頃から弊社もどんな農産物からでも乙類焼酎を作れるようにはなったのですが、ジンのようなスピリッツの製造に取り組んだのはここ数年でした。前に造ったことのないものを造るのはやはり大変な部分はありますよね」

高嶋
「そうですよね、いろんなところを見て考えて商品開発しないといけないですからね」

三政
「商品開発で行き詰まった時など、どうしていらっしゃいますか」

佐々木
「いろんなパターンの人がいるとは思いますが、私は基本的に『手を動かす』ですかね。長らくやっていると、基本的な配合や、こんな味になるだろう、みたいな見当があるので、配合を重ねていきます。こんな感じで作ってみようかな、と手を動かしていると、なんとなく味がまとまっていくことがありますね。いろんなものは煮詰まった先にしか出てこないと思うので。大体追い込まれていって、いろんなことを試して物ができるという感じですね」

高嶋
「これからこんな商品を作りたい、という目標などはありますか」

佐々木
「今会社の中でやろうとしているのは、『秋田の特産品などを活かしたお酒を造る』というところですね。そこが弊社の至上命題なので。ここ数年は秋田の原料を使った特色のあるお酒を作っていきたいです。杉の葉っぱは『杉の葉』というだけで、ある程度のインパクトがありますからね。あれは、インパクトに味が負けなかったので、評価をいただけたというのはあると思いますけど…インパクトだけで、中味が伴っていないのは難しいですよね。インパクトと味が釣り合う、みんながびっくりするようなお酒を造っていきたいですね」


…秋田県醗酵工業の技術や商品開発のストーリーにまで踏み込んだ対談はここまで。「秋田らしさ」の追求が斬新な商品開発につながっていることを知ることができました。改めて、佐々木さん、秋田県醗酵工業さん、ありがとうございました!