パパの靴|ショートストーリー

日曜日の朝早く、私はそっとベッドを抜け出し玄関でパパの革靴を履く。ひそやかに行われるその行為を私は誰にも話すことはない。

自分の足をそっと大きな靴に滑らして、パタパタと静かに玄関を歩いてみる。

パパの靴は、濃い茶色の皮で出来ていて、その茶色が靴と混ざり合いまるで古びた素敵な手紙のようなのだ。わたしのスニーカーは飛べそうな軽さだけど、パパのはずっしりとした重みがある。

まるで紳士になったかのように歩くと、パパが好きな雨の中を歌って踊る、あの映画の人みたいな気持ちなる。

パパは私が朝小学生に行く前に家を出てしまうし、夜帰ってくる時間に私は夢の中にいるのでなかなか会えない、この靴にも。

そっと靴を脱いで、きれいに並べる。私の足の2〜3倍は大きな靴、私もいつかこのくらい大きくなるのかな。
ひそやかな私の楽しみな時間を誰も知ることはないのだ。

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