中根すあまの脳みその2

電車に乗ってこれを書いている。わたしは電車に乗っているのが嫌いではない。ぎゅうぎゅうづめの電車はもちろん嫌だが、わたしがよく利用する、昼過ぎのあまり人がいない時間帯の京王線、一番端っこの席は実に快適だ。電車に乗っている間は外の世界に関与しなくていいし、自分のすきなことができる。読書するもよし、眠るもよし、そして今のようになにか書くもよし。わたしは電車に乗っている時間がそれなりにすきだ。
ふと顔を上げると、目の前に座る50代くらいの女性、眠り込んでいる。座席の前には大きなスーツケース、白いフォーマルな雰囲気の服を着ている。結婚式だったのだろうか。小さい頃から世話を焼いていた姪っ子の結婚式。しあわせいっぱいの姪っ子の笑顔をみて、それをうれしく思いながらも、なんだかちょっと切ない帰り道、そんな感じだろうか。
座席がたくさん空いているにも関わらず、ドアにもたれて立っている若い女性。イヤホンをして何かを聞いているが、目には光がないように見える。それもそのはず、彼女は複雑な悩みを抱えているのだ。数年前から思いを寄せる職場の上司とやっと結ばれたはいいものの、ひょんなことからその上司には妻子がいることが分かる。イヤホンから流れ出すのは、ちょっと前に流行ったロック(愛する人のすきなバンドのヒット曲)。どうしようもない思いにうんざりしながら、電車に揺られている、そんな感じだろうか。
電車にはいろいろな人が乗って、降りて、どこかからどこかへの『移動』という中途半端な時間を共有する。それぞれの人にそれぞれのドラマがあって、同じ電車に乗っているのだ。
そう考えると、なんてことない通勤、通学の時間がちょっとだけ楽しくなったり…しないか。そんな単純じゃないよね、みんな。わたしが単純なんです。たのしくなっちゃうんです。
そんなわたしはもちろん、自分自身にもドラマを求める。わざと難しい本を読んでみたり、携帯の画面をみながらそっと眉をひそめてみたり。わたしと同じような考えを持つ誰かさんが、わたしに物語をつくってくれないかなって。
あ、前に男の人が乗ってきた。さーて、この人の今日はどんな日だったんだろう。
え?終点新宿?お、降りなきゃ!!

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