中根すあまの脳みその58

電車で私の正面に座っていた女の子。
いや、じろじろ見ているとか、そういうわけではないので安心していただきたいのだが、どうしても可愛かったので、そのお話をさせていただきたい。

その子はスマホで何か動画をみているらしかった。イヤフォンをしていたし、スマホを横向きに持ち、あまり画面に触っている様子のないことから、ほぼ確実であると言える。
繰り返しになるが、じろじろは見ていない。
お化粧が薄めで、服装もカジュアル。ごく普通の素朴な女の子といった雰囲気。
電車で女の子が動画をみている。特に気にすることのない、日常の風景。
だが、その子は少し違った。

何が言いたいのかというと、その子は、マスクで顔の下半分を隠した状態でもわかるくらいに、楽しそうに、嬉しそうに、動画をみていたのだ。目が、これ以上ないくらいにきらっきらしていた。
そのことに気づいたとき、私はその子のことを心底、かわいいなあと思った。そう思わせるくらいの、目の輝き、表情、だったのだ。
そして、気になってしまった。その子が何をみて、何を感じて、こんなにかわいいことになっているのか。気になる、ものすごく気になる。聞きたい。聞いてしまいたい。
何見てるんですか~って。YouTuberの誰かか?アイドルか?動物か?食べ物か?アニメか?映画か?可能性は無限大!わかんないよ~!教えてよ~!

…気持ち悪い。

己の気持ち悪さを自覚しつつ、考える。
彼女がみている動画が、どんなジャンルのものであったとしても、こんなにも素敵な表情を引き出しているその動画はすごい!ということ。動画を生み出した人に是非ともみせたい、この表情。きっと嬉しいだろうなあ。
そして、憧れた。
自分がつくったもので、人をこんなにもきらきらさせられたら、それはなんという幸福だろうか。…今の自分ではその境地には到底及ばない。
きっといろいろな方法があって、いろいろな努力や工夫があるのだと思う。
うーん、もっと知りたいし、もっと考えたいと思った。
彼女のあの表情に出会えてよかった。


ふと、彼女が画面を触る。違う動画を見始めたようだ。
すると、あのきらきらした、素敵な表情から一変、なんだか睨んでいるような、険しい表情になってしまった。

私は心の中でつぶやく。
勉強になりました、と。


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