中根すあまの脳みその79

すこし前のある日、意味もなくNEWDAYSをぶらついていると、「世にもおいしいブラウニー」なる商品が目に付いた。
「世にも」という言葉には、「とりわけ」「本当に」「またとないほど」といった意味がある。
そんな大層な言葉を枕言葉にくっつけたブラウニーとは一体どんなもんなんだと、考える。
そもそも焼き菓子を食べて、これは「特別に優れている」と感じたことはないかもしれない。人より焼き菓子が好きだと自負している私からすると、焼き菓子は焼き菓子として存在している時点で優れているのだ。焼き菓子を食べて首を傾げたことなんて、小学生の頃、バレンタインに料理下手な友人からもらった、生焼けのブラウニーを食べたとき以来、ない。焼き菓子って偉大だと私は思う。焼き菓子というカテゴリに含まれているだけで、ブラウニーは食べ物として「勝ち」なのである。適当に安いブラウニーを買って食べたとしても、ブラウニーは焼き菓子であるため、大きく期待から外れることない。ほぼ、ない。料理下手な小学生のつくったものならなんとも言えないが。
そんな、生まれた時点で勝ち組決定なブラウニーなのに、そこにさらに「世にもおいしい」などという最高級の謳い文句がついているのだ。もうそれは、焼き菓子の歴史を覆すほどの代物でないと説明がつかないじゃないか。
手に取ろうとして、ハッと我に返る。
これでは思うツボだ。このブラウニーの名付け親は、今の私のように、「世にもおいしいブラウニー」とはいかほどかと気になり、そのままレジに持っていくことを見越して、この名前をつけたのだ。実際に「世にもおいしい」くはなくても、売れてしまえばそれでいいわけだ。じゃあたぶん、こいつも他の焼き菓子と同じように、普通においしいのだろう。普通においしいだけなのだろう。
だけど、「世にもおいしい」という言葉をつけることで、こんな簡単に売り場から離れてしまう人間も存在するわけだ。私のように、この名前に引き寄せられ、そして、裏をかいて離れる、そんな人間だって少なくないだろう。名前だけなんじゃないかと、簡単に疑うことができてしまうのだ。そんなリスクをおかしてまで、自分で自分のハードルをとんでもなく上げてしまうようなこの名前をつけるだろうか。

結局、買ってしまった。
自分で自分を高く評価してみせるという行為は、ここまで人間の関心を生むのかと感心した。
ぜひ、みなさんにも「世にもおいしいブラウニー」について思いを巡らせていただきたいので、味の詳細な感想はまたの機会にするが、
今私のリュックの中には、「世にもおいしいブラウニー」がふたつと、「世にもおいしいチョコミントブラウニー」がふたつ入っている事実だけ、ここで明かしておこうと思う。

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