中根すあまの脳みその109

部屋が散らかっている。

これはあまり知られたくなかった情報である。しかし、今これを綴っているのがまさにその、散らかった部屋であり、この場所の酷い有様から目をそらして他のことについて語ることが憚られるほどの惨状であるため、仕方なくこれを読んでいるみなさんにお知らせしたのである。イメージダウンの原因になっても仕方がない。そのくらいの罰は与えたほうが良いだろう、自分自身の怠惰に。

かつて私の部屋は綺麗であった。
これに関しては、母親の証言もとれているので私の妄言ではないと自信を持って言い切れる。
そもそも私は生活のほとんどをリビングで過ごしていたので、自室が散らかる理由もなかった、というのが正直なところだが、それでも、物が増えたらきちんとどこかに収めていたし、いらないものはこまめに捨てていた。潔癖では決してないのだが、ふとした瞬間に自分の居る環境が整頓されていないと猛烈に嫌気がさすことがあるので、それを避けるべく居心地のいい環境を保とうという意欲があった。

私のそのスタンスが崩壊したのは今年の春あたりだろうか。
要因はふたつある。まず、新調した本棚のサイズが想定外に小さかったこと。
入らないのだ、今ある本が。もうひとつ同じものを購入するなどの対応を迅速に行えばこのような結果にはならなかっただろうが、金銭的にも労力的にも、それは躊躇われた。
本棚に入らなかった分の本を、仕方なく本棚の横に積み上げる。その光景を見たときに感じた、恐ろしいほどのやるせなさ。脱力感にも似たそれは、私から気力と体力を著しく奪った。それでも、本は物凄いスピードで増えていく。もう正直どうでもいい。どうせ本棚には入らないのだ。私はそのうちに本を積むことさえ煩わしくなり、至る所に本を放置するようになってしまった。

そして、そこに追い打ちをかけるように発生した、ドラえもんグッズ問題。
私はかの国民的キャラクター、ドラえもんがとても好きだ。それ故に街中でかわいいグッズを発見するとついつい家に連れて帰ってしまう習性がある。そんなこんなで集まったネコ型ロボットたち。少し前まできちんと綺麗に飾っていたのだが、あることがきっかけでドラえもんコーナーを保つことが難しくなってしまう。私は、浅井企画の先輩たちとドラえもんについておしゃべりするYouTubeチャンネルに出演しているのだが、その撮影に私のドラえもんグッズを同行させていた。別に誰が求めたわけではない。自分で勝手に、そうすることを選んだのだ。少しでも動画が賑やかになればいいという私なりの気遣いだったのだが、それが後に身を滅ぼすことになる。
撮影は2週に1回程度。その都度、部屋に棲むドラえもんたちを一斉に持ち出す。当然、綺麗に整頓されたドラえもんコーナーは跡形もなくなってしまう。するとどうなるか。撮影後に、またもとの場所に戻さなければならないのだ。初めのうちは健気にもそれを果たしていた。しかし私は、2週間後にまた破壊されると分かっていてそれを構築する、その作業の惨さに気づいてしまう。人間にとって一番の拷問とは、穴を掘って埋める、その作業を繰り返すことだと言う。埋めることが決まっている穴を掘る苦痛と、破壊することが決まっている空間を構築することの苦痛は、極めて似通っているように思えた。やがて私は、大量のドラえもんグッズを手提げの鞄に詰め込んだまま、放置するようになる。

よほど強い意志がなければ、生活するだけでその場所は散らかる。そうと分かっていて、その場所を綺麗な状態に保ち続けるのは、虚しさとやるせなさが付き纏う作業である。
もう、いい加減この環境に嫌気がさしてきた私ではあるが、まだ大掃除をしようとは思えない。
何を隠そう「めんどくさい」からだ。

誰か私の部屋掃除してくれ~。

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