中根すあまの脳みその199


すっかり夏めいてきて、暑さに顰めた顔のその裏に高鳴る気持ちを隠しながら過ごしている。
ここ数日体調を崩していて、それも、夏の訪れと同時に熱を出してしまったために、寝苦しさの原因が夏のせいなのか熱のせいなのか分からずにいたのだった。回復し、初めて外に出た時には、世界は完璧に夏で、仕組みはわからないがタイムトリップをしたような感覚に陥った。

暑い日に乗る電車というのは難儀なものである。
言うまでもなく弱冷房車は敵である。
歩いて移動をしているときには気づかないのだが、動きを止めた瞬間に体内に蓄積された熱は汗へと変化を始める。駅構内を移動した末に腰を下ろした先が、弱冷房車などという夏を舐めきった空間だった場合、新宿までの道のりの中で私という存在はどろどろと溶けてなくなってしまうだろう。
しかし、弱冷房車ではない、冷房の効いた車両もまた、敵なのだ。
いくらなんでも効きすぎだ。私が乗り込んだのは電車ではなく、冷蔵庫の中だったかと、本気で疑ってしまう。時間が経過すればするほど体は冷え、冷蔵庫ではなく冷凍庫だったかと首を傾げる始末である。
弱冷房車と!普通の車両の!中間の!温度に!設定してくれ!
京王線の端っこの席で、心の中の私が両手を広げてそう叫ぶ。紛れもなく夏である。

聞こえてくるのは、てめえで調節しろという声。
残念ながら、夏場に薄い長袖の上着などを携帯する、優雅な心は持ち合わせていない。
そんなのは粋じゃない。夏に失礼だ。
文句を言いつつも、内心どこか浮かれている。
今日も私は、暑さに顰めた顔のその裏に高鳴る気持ちを隠しながら過ごしている。

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