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2021年10月の記事一覧
中根すあまの脳みその116
その日は、雨が降っていた
加えて気温は真冬並み。秋物の上着では凍えてしまう、室内にいても、だ。
その日は、1限から4限まで、連続して授業があった。ただでさえ憂鬱なのに、窓の外の淀んだ空を見ると、さらに気分が沈んでしまう。
1限の授業は漢文。ふくよかな体型に高めのツインテールがインパクト抜群なこの授業の先生が、私はどうにも苦手であった。私は、まるで人生のように長い100分をどうにかこうにか耐え抜き、
中根すあまの脳みその115
物騒な本を読んでいた。
心理的にも空間的にもゆとりがある、午後の京王線である。その日、私は、八の字眉のしろくまが縫い付けられた赤色のスウェットに、ふたつのお団子をくっつけた頭という、能天気で間抜けな格好をしていた。この格好は、その後下北沢の古着屋の店員さん(下北沢を牛耳っていそうな風格がある)に、「下北も捨てたもんじゃない」と言わしめた渾身のコーディネートなのだが(正直、その店員さんが褒めていた
中根すあまの脳みその114
私の朝は、命がけである。
どれだけ早く眠りについても、どれだけ深い眠りについても、気持ちの良い目覚めがもたらされたことなど、産まれてこの方一度もない。布団に入ったときのしあわせな気持ちなど綺麗さっぱり消し去られ、目が覚めるとまず「今日も目覚めてしまった絶望」に苛まれる。人格すら違うような気がする、眠りにつく前の自分と目が覚めたときの自分とでは。諦めがつくまではその場から動けない。出発の時間が近づ
中根すあまの脳みその112
私は、傘をさしても雨に濡れる。
自分が人より傘の扱いが下手であると悟ったのはつい最近のことである。それは、午後から急に激しい雨が降り出したある日。ばしばしと叩きつけるように降る雨を電車の窓から確認し、リュックの中の錆びた安い折りたたみ傘では全く意味をなさないことを確信した私は、駅構内の300円均一店でビニール傘を買う。大抵の雨であれば、湿気と雨で髪の毛が崩れて嘆くことが分かっていても、そのまま浴