見出し画像

~神話・民話の世界からコンニチハ~ 17 不死を求めて ギルガメシュさまとエンキドゥさま


こんばんは。今日は秋晴れが美しい良い天気でした。

私事ですが、月曜、火曜と所用のため、毎週火曜日朝の更新を、今回は日曜のこのときと致します。そして、申し訳ありませんが、コメントのレスポンスなどもちょっと鈍くなると思います。どうぞご了承のほどを。

さて第十七回は! 第十四回でエンキドゥさまと親友となり、第十五回でともに怪物フンババを倒し、第十六回でエンキドゥさまが死の別れとなり、死の恐れに取りつかれて不死の方法を求めるようになったギルガメシュさまのお話&インタビューです。

今回のお話

エンキドゥさまが熱病で亡くなってから、幾度目(いくどめ)かの朝を迎えました。その体が腐り始めるまで側にいたギルガメシュさまは、夜明けの光を見て、ようやくエンキドゥさまの死を認め、盛大な葬儀を行いました。ラピスラズリや金で出来た立派な像を作り、紅玉石の入れ物に蜜を詰め、青玉石の入れ物にはバターを詰め、これらを飾った物を太陽神であるシャマシュさまに供(そな)えました。

エンキドゥさまの葬儀を終えたギルガメシュさまは、ひとり悲しみを抱いて泣くために荒野をさまよいました。そして、自らにも訪れるであろう死について恐れるようになり、不死の力を求めて、その力を神々から与えられたという大洪水の生存者ウトナピシュティムとその妻に会おう、自らも不死の力を得ようと旅立ちを決意しました。

ギルガメシュさまは地の果てにある双子の山、マシュ山にたどり着きました。そこには門番のサソリ人間がふたりいて、何故ここへ来たのか問いました。ギルガメシュさまがこれまでの話をしますと、サソリ人間たちは

「この先の山は暗闇に包まれ、入ってしまえば出ることは出来ない」

とギルガメシュさまを引き留めましたが、決意は固く、サソリ人間たちは門を開きました。門の先の暗闇の中を120km歩いたのちに、宝石やブドウで満ちた木々がある楽園へとギルガメシュさまはたどり着きました。

長い暗闇を歩いた果てに、ふたたび太陽のもとへと現れたギルガメシュさまを見て、シャマシュさまは「お前はどこまで彷徨(さまよ)うのか。求める生命が見つかることはないだろう」と諭しましたが、ギルガメシュさまの不死の力を求める決意は変わりませんでした。

楽園をあとに、歩き続けて海辺の町に着き、ギルガメシュさまは酒場の女主人シドゥリに出会いました。旅の目的を聞いたシドゥリは、シャマシュさまと同じように「求める生命をあなたが見つけることは出来ないでしょう」と告げ、そのあとに「ひとはいつか死ぬものだから、生きていることを楽しみなさい」と諭しました。

しかしエンキドゥさまの死の悲しみを忘れられず、不死への思いにとらわれたギルガメシュさまは、海を渡る道を教えてほしいと頼みました。心中を察したシドゥリは、船頭のウルシャナビを紹介し、彼の船に乗ってギルガメシュさまは死の海を越えました。船は永遠の命を持つウトナピシュティムの住む島に着き、ギルガメシュさまを迎えたウトナピシュティムはどのように不死を得たかを話しだしました。

「知恵を司る深淵の水神、人間をお造りになったエアさまの夢により、洪水が来ることを知った私は船をつくり、自分と自分の家族、船大工、全ての動物を乗せた。6日間の嵐により人間は粘土になった。私の船がニシル山の頂上に着地して7日目、鳩、ツバメ、カラスを放ってみた。私は船を開け乗船者を解放した後で神々に生贄を捧げると、その匂いにつられて多くの神が集って来た。今回の洪水を起こし、人間を滅ぼすことを決めていたエンリルさまは、生き残った人間がいたことに腹を立てたが、エアさまは『洪水など起こさずとも、人間を減らすだけでよかった。ウトナピシュティムに夢を見させただけで、私は何もしていない。彼らがただ賢かったのだ。今は助かった者たちに、助言を与えるべきであろう』と話した。そしてエンリルさまは私と妻に永遠の命を与え賜った」

話し終えたウトナピシュティムは、永遠の生命が欲しければ、大洪水のときに彼が起きていた6日6晩を起きてみよ、と試しました。しかしギルガメシュさまはすぐに眠ってしまいました。

ウトナピシュティムに起こされ、眠ったことに気が付き、不死の方法を教えてもらうことを諦めたギルガメシュさまは、帰りの船に乗ろうとしました。

そのときウトナピシュティムの妻が取りなし、ウトナピシュティムは土産としてギルガメシュさまに若返りの植物「シーブ・イッサヒル・アメル(老人を若くするの意)」が海の底にあることを教えてやりました。ギルガメシュさまは足に石の重りを付けて海底を歩きその植物を手に入れましたが、帰還途中、泉で水浴びをしている間に蛇がその植物を食べてしまいました。ギルガメシュさまは泣き悲しみ、船頭のウルシャナビと共に不死への思いを諦めてウルクへと戻りました。


……結局不死にはなれなかったという、とても切ない神話。そして、ギルガメシュさまを導く酒場の女主人シドゥリや、永遠の生命の秘密を明かすようにウトナピシュティムに取りなす妻といった、優しい女性の助言によって展開が進むというところも魅力のひとつのような。イシュタルさまのような方だけじゃないよ、神さまじゃない、身分の低い女性たちにも素敵なひとがいたよ~、と粘土板に物語を残したひとびとの声が聞こえてくるようです。

それでは、インタビューと参りましょう!

すー: ギルガメシュさま、エンキドゥさま、よろしくお願いいたします。

ギルガメシュ: 本当に、英雄は大抵がそうであるとはいえ、大変な生きざまだったなあ、俺。

すー: そうですよね。ギルガメシュさまのこの叙事詩は、英雄譚という華々しい一面だけを描いたものではなく、若く初めは暴君だった人物が、友を得て、自分の敵と戦い、大切なひとを失い、不死という大きな目標を求めても、叶わず徒労に終わるという人間の生のほろ苦さを描いているようにも見えます。

ギルガメシュ: 酒場の女主人シドゥリに諭された「いつか死ぬのだから、生きることを楽しみなさい」という言葉が、不死を求めた俺にとっての旅の成果だな。その言葉で、エンキドゥのいない日々を耐えられる気になったんだ。

エンキドゥ: それほどまでに、悲しんでくれた……。オレは良い友を持ったぞ、ギルガメシュ。

ギルガメシュ: 今はこうしてふたたびともにあることが出来たのだ。生きているあいだの不死など無くとも、大切な者は、先に死んで見えなくとも影がそばにいる。そのことで十分とすべきなのだろうな、エンキドゥ。

エンキドゥ: おう!

すー: そうしておふたりが死したのちに、粘土板で伝説が残されたことにより、長い年月を経たのちにひとびとに語り継がれ、愛される最古の神話のひとつとなったわけですね。……ロマンを感じます。次回もどうぞ、よろしくお願いいたします。

次回予告

第十八回は、別の流れのストーリーとして、死後の世界である冥界に行ったエンキドゥさまを呼び戻そうとするギルガメシュさまのお話です。お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーからsweet*basilさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?