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インタビュアーの選び方~「業界分野」や「経験」などで選ぶのは間違いの元~これだけはハッキリ言っておきたい!

前回まではインタビュアーのトレーニングについていろいろとご紹介しました。ご覧になっていかがだったでしょうか?

インタビューというのは基本的に「人に話を聞く」といういわば誰でもできることですので「自分でやればよい」と思われがちな業務です。それはそれである一面正しいのですが、しかし、世の中でインタビュー調査の評価が芳しくないのは裏返すと「インタビュアーのクオリティが高いとは言えない」ことに他なりません。そのクオリティの低さというのは多くのインタビュアーがその「自分でやればよい」の延長でおやりになっているということにこれまた他なりません。つまり自己流にすぎないのであってスキルのレベルが低いのです。「不都合な真実」を憚らずに申し上げますと、調査会社の社員でインタビューを行っている人は多くの場合、本連載で紹介したような専門的な教育・トレーニングを受けたり、多くの経験を積んでいたりするわけではない「普段はアンケート調査をやってる人」であり、エキストラです。

しかし、前回までの記事をお読みになればお判りになるかと思いますが、インタビューというのはそんなに甘いものではなく、それ相応の専門的トレーニングが必要な、極めて高度なスキルであるということが強く申し上げたいことです。マーケティングにおけるインタビュー調査の失敗は結局のところ企業の命運を左右することすらあるわけですから、甘く見てもらっては困るのです。

すなわち、ご自分でおやりになるからにはそれ相応のトレーニングが必要だということになりますし、それをやる余裕が無いのなら、プロに依頼をした方が良いということです。プロというのは「モデレーター」と呼ばれるインタビュアーとして独り立ちしている人たちで多くの場合、調査会社の外注パートナーとして仕事をしている人たちです。

しかし、プロと呼ばれる人、自称する人のレベルも一般的には正直言って高くないからこそインタビュー調査の評価が芳しくないわけですから、「プロの選び方」が問題になるわけです。

「話を聞けばよいのだから自分でできる」→「聞いてみたが上手くいかなかったのでプロに頼む」→「プロのはずが上手くいかなかったのでやっぱり自分でやる」→(無限ループ~インタビュアーのショッピング・ワンダリング)

というのが笑い話ではないこの領域の実態だと言って私は憚りませんが、しかし、インタビューの専門家でない限り、どんな基準でインタビュアーを選べばよいのかの観点や知識・経験をお持ちであろうはずもありません。それをよくご認識いただきたいのですが、しかし、そこでその「認識の不十分な方」からよく出てくるご要望は「この”業界”について良く知っている人」とか「この”カテゴリー”についての調査の経験がある人」ということになります。そのような要望を出される方々が知識や経験をお持ちでないからこそ、過去のインタビュー調査の不満体験の理由として、専門的な分析をしたわけではないのに、インタビュアーがそれらの条件を満たしていなかったから上手くいかなかった、という勝手な「思い込み」ができてしまうのです。

しかし一見正しそうに見えるこれらの条件が芳しいものではないこと、少なくともインタビュアーの選択基準としては優先されるべきではないことは、繰り返しご紹介している私オリジナルの「意識マトリクス理論」によって明確に説明ができるようになりました。そのような知識・経験とはとどのつまりが「企業側の観点」のものであり、それによって発生しがちな「アスキング」こそが「タテマエ」や「無意識の嘘」あるいは「粗雑な合理化」を発生させ、インタビューによって得られる情報の質と価値を決定的に下げてしまうということです。もし、それらのような知識・経験がインタビューの質を高める本質的な要素ならばクライアントサイドのマーケティング担当者が自らインタビューを行えばクオリティが高まるはずですが、それではうまくいかないからこそ、多くの場合、行われていないわけです。

もう一つの基準は「何グループの実施経験があるか」です。これはむしろ、インタビュアー側がアピールするものです。しかし、これも、一般的には経験はないよりはあった方が良いというくらいにしか私は重視しません。そこが本質ではないからです。端的にいうと、間違った「アスキング」の」インタビューを何千グループ、何万グループやっていたら、その「悪癖」が身についていて、C/S領域の傾聴にはむしろ有害だということです。つまり、世間で使われているインタビュアーの評価基準は、それが本質ではなく、せいぜい参考程度にしかならないということを私は申し上げています。では具体的にどのような観点、基準でインタビュアーの質を判断すればよいのか?という具体的内容を次回より説明したいと思います。

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