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Vol.8 「テクノロジーはアウトソーシングするには重要であり過ぎる」未来の百貨店のテクノロジー戦略

今回は、BOPISを軸に高い成長性を維持するTarget Corporationの戦略についての紹介となります。

BOPISはBuy-online-pickup-in-storeの略で、要はオンラインで注文して店舗で受け取るサービスを指します。小売業に従事されている方は、古くはclick-and-correctでも同じような構想があったのを覚えてらっしゃるかと思います。ユーザーの利用するデバイスがPCからスマートフォンに移行したことでこのトレンドは一層強くなりました。

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※"Here’s a Holiday Pick-Me-Up – Target’s Order Pickup is Now Faster and Easier"ページより引用

Target Corporationは、アメリカの大手小売業者で全国にディスカウントストアを約1900店舗運営しています。日本でディスカウントストアと聞くと安物の販売店を想像しますが、そうではなく品質の良いものをお得に買えるショッピングセンターとして愛されています。売上規模はおよそ13兆円で、アメリカの小売市場でも6位につけています。

Targetはコロナ禍においても11四半期連続して売上を成長させている企業です。2021年の売上成長率は12.7%と他の大手小売業者と比べても高い売上成長率を誇ります。これを支えているのが、BOPISなどの店舗からのフルフィルメントです。というのも、消費者がTargetのデジタルチャネルで注文する金額は、前年と比較をすると2倍になっていますが、これは純粋なECというわけではなく、店舗での受け渡し(BOPIS)や店舗からの即日発送(Micro-fulfillment)が95%を占めています。

このことにより、2022年には新たに6200億円を新規に投資して、30店舗を新たに開業、既存店舗も200をリモデルすることを決定しています。もちろんこれは伝統的な店舗やECを提供するのを意図しておらず、店舗をBOPIS、即日配送に対応したフルフィルメントセンターに転換していくことを意味しています。

デジタル技術により売上規模だけではなく、高い成長率を誇るTargetですが、同社のデジタル戦略は一朝一夕でできたものではありません。IT部門を2015年から率いてきたエグゼクティブバイスプレジデント兼CIOであるマイク・マクナマラ氏は、就任当時を振り返ります。「少しばかげているほど、企業規模に対してIT部門が巨大だった。」「2015年におけるTargetのIT従事者は約1万人で、そのほとんどが請負業者だった。」「テクノロジーはアウトソーシングするには重要であり過ぎる。」「私は容赦なく優先順位を付け、進行中の技術プロジェクトの数を大幅に減らすことによって、より大きなプロジェクトに集中し、ビジネスの成長と近代化を達成した」と述べています。まさに選択と集中によって、店舗をフルフィルメントセンターにすることに成功したのです。


次号は小売業界を刷新しつつあるMicro-fulfillmentについて紹介します。

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