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ミツバチ⑦真社会性

「天の下のどこに政治でミツバチに勝る国があるだろうか。」by バルタス


前回までにミツバチの家族と役割についてお話しましたので、よろしければご覧ください。今回はその社会性について少し補足的に説明します。

ハチやアリなど集団で暮らす昆虫は、役割や階級があるのでよく人間の社会と照らし合わせがちですが、人間のそれとは質の違うものだということを前にお話しました。動物の社会性のうち、高度に分化が進んだ「真社会性」と言います。

大きな特徴は、やはり繁殖の仕方です。子を産むメスは女王1匹のみ。女王以外のメス(働きバチ)の生殖本能は、女王が出すフェロモンによって卵巣の発達とともに抑えられます。フェロモンとは、動物の体内で作られる化合物で、同じ種の仲間の反応を引き出す働きのあるものです。

何かの都合で働きバチの卵巣が発達して、働きバチが卵を産んでしまうことがあるのですが、女王が元気なうちは(それもフェロモンで判断する)、女王バチの匂いのしない卵を全て壊します。

働きバチは子孫を残す機会を手放す方向に”進化”しました。ダーウィンの進化論では説明できない、進化が求める行動に背いているようにも見えます。しかし、驚くほど大きな規模のコロニーを見れば、この制度の力がわかります。

働きバチは、自分の姉妹たちをたくさん育てます。ハチの場合、親子間よりも姉妹間の方が共通の遺伝子をたくさん持っています。それは、「半倍数性」という遺伝子の伝え方によるものです。

 ミツバチ半倍数性

オスは染色体を1組(16本)持つ、未受精卵から生まれます。つまり遺伝子100%女王バチで、父親はいません。そして遺伝子は次代のオスには伝わりません。メスはその2倍の染色体(32本)を持つ、受精卵から生まれます。遺伝子は半分オスに、半分メスに由来しますが、オスの遺伝子は100%娘に伝わります。そうすると姉妹間では平均75%同じ遺伝子なのです。

少々頭がこんがらかりましたね。でも、私たち人間の23組46本の遺伝子が父から23本、母から23本受け継ぎ、その組み合わせのことを考えると、姉妹間の75%というのはあり得ない確率ですよね。

このように、働きバチは不妊階級となり、姉妹を育て増やすことが遺伝子を広げることになったのです。真社会性の動物はハチやアリ、シロアリやカメムシの一部など昆虫に目立ちますが、なんとなんと、哺乳類にも「ハダカデバネズミ」という,
土の中に棲むハダカで出っ歯のネズミが真社会性を持つのだそうです!

さてさて、驚くべきミツバチのお話、まだまだ続きますよ。




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