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スケール(音階)練習が嫌いな人へ

「ウジェーヌ・イザイ(ヴァイオリニスト、作曲家)は音階を弾くことができた。その音階は、それまでに聞いたことのないほど、崇高なものだった。」 by J・ギンゴールド(イザイの弟子)


音楽に長くたずさわる人なら、この言葉の意味がよくお分かりになるでしょう。でも多くの人は、楽器の習い事の中の”やらされる練習の一つという認識かもしれませんね。どちらかと言えば嫌いな人の方が多いでしょうか。

簡単に説明するとスケールというのは、”ドレミファソラシド”のこと。ピアノの鍵盤で言うと、”ド”の鍵盤からでなくても、黒でも白でもどこの鍵盤からでも”ドレミファソラシド”を弾くことができます。

どうしていろんなところから弾くかというと、そのスケールの始まりの音が””だよー、という調性で曲が書かれているからです。クラシックでも、ポップスでもロックでもです。日本など、各国独自の音階もあります。

ピアノの場合、調によっては黒い鍵盤を弾かなければいけなくなり、指づかいも変わってきます。さらにそれを両手で同じことを同時に弾く段階になると、左右の指は対照についているので、左右で違う動きになるのです。

ただ、正しい音正しい指づかいで弾けるようにするのは、スケール練習のほんの序の口。真の目的はそこではありません。美しい音で、正確に、脱力、良いリズム感、フレーズ感、の使い方、呼吸感情、あらゆるスキルを詰め込んでいきます。

ちょっと待った、”ドレミファソラシド”に感情ってなに?という声が聞こえてきそうですね。曲の中で、音は上がったり下がったり、または同じ音を演奏します。作曲家たちは、音は上がっていくのか、どれくらい上がるのか、どんな速さで上がるのか、など音の動き感情を込めて表現しました。

同じ動きでも、曲や場面によって、表される気持ちは変わってきます。演奏者はその一つ一つを細かに表現するために、スケールを使って様々な練習(強さやリズム、速さや弾き方)をして、自分の中の引き出しにしまっておきます。それが表したい音で演奏するツールの一つになるのです。

学習者は、スムーズに弾けるようになったところでスケールの練習を終わりにしてはいけません。また、指導者も真の目的を把握して、学習者のレヴェルに合わせて意味のある練習の仕方を提示しなくてはいけません。

私はよく生徒に、「天にも昇るスケールを弾いてね。」というのですが、それぞれ想像力を働かせて、自分なりの”天にも昇るスケール”を弾こうとトライしてくれます。でもすぐに忘れてしまうので、繰り返し練習しなくてはいけません。

スケール練習は、創造性のゆりかごにもなれば、味気ない苦行にもなります。どちらになるかは自分次第音に深みを持たせると、自分が生み出す意味は大きくなり、練習はますます心躍るものになります。

いかがですか?スケール練習、したくなりましたか?





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