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ミツバチ⑨巣の建築

「芸術の技ながら人の手によるものではない。これを成せるのはこの小さな生き物たち。」by G・ホイットニー


六角形のハニカム構造で知られるミツバチの巣。ミツバチたちはどのように作っているのでしょうか。今回はミツバチの巣についてのお話です。

養蜂(ミツバチの飼育)の場合はミツバチたちに養蜂箱の中に造巣してもらいます。ミツバチたちは雨に濡れるのがいやなので、自然の中でも屋根のある場所に造巣します。木の内部の空洞や、枝の下に作ることもあります。

図1 ミツバチの巣

図1は、養蜂の巣板では場所が足りなくなってしまって分割板というところにできてしまった巣の写真です。自然の巣はこんなハート型の巣が何枚か縦に並びます。まだプロポリス(後で説明します)で補強していない、真っ白なレースのような巣です(図2)。

図2  新しいキレイな巣

この巣の材料は働きバチ自ら分泌する「ミツロウ」です。ハチの腹部の各節から、ロウがシート状に浮き出てきます。それを後肢でペリッと剥がして加工していきます。ロウが体から出るものだなんて、大変な驚きでした。

このミツロウも、昔の人はロウソクを作ったり、をしたり、湿気を防いだりするものに利用してきました。写真の巣房はまだ浅いですが、この後もっと深くしていきます。この一つ一つの巣房の中に女王バチが卵を産んで、羽化するまで子供たちが育っていきます。また、ミツや花粉の貯蔵に利用します。

巣はまだ完成ではありません。ハチたちはこの上から「プロポリス」を塗りつけていきます。プロポリスは、働きバチが植物のつぼみ、新芽、樹皮から集めた樹脂成分と自らの酵素成分を含む分泌液と混ぜ合わせて作ります。

外勤バチ(働きバチの仕事については下記リンク別の回を参照してください)たちはミツや花粉などに加えて樹脂も集めてきます。粘着性があるので集めてきたハチは内勤バチに剥がしてもらいます。”ハチヤニ”とも言われます。よく養蜂箱のふたや内部の板などがプロポリスでくっついてしまうので、道具を使ってはがしてから作業をします。

ミツバチはこのプロポリスを巣の壁や隙間に塗ったり、不要な穴を埋めて補強します。また、プロポリスには抗菌作用があるので、ウイルスやバクテリア、細菌の侵入を防いだり、巣内で死んだ仲間などの腐敗を防いで巣内を清潔に保っています。古代エジプトではミイラの防腐剤にも使われたそうです。

「プロポリス」の語源はギリシャ語と言われています。プロ(防ぐ、守る)、ポリス(都市)。つまり「敵の侵入を防ぐ城壁」という意味です。都市であるミツバチの巣を修理、補強しながら細菌の侵入を防ぎ、守っているのです。

そして、忘れてはいけないのは六角形のこの形。正六角形が集まった造りは隙間が生まれないので上からの圧力にとても強くなります。この構造を「ハニカム構造」と言い、人間は飛行機、レーシングカー、ロケット、新幹線、ラジエーターや建築物にもこの構造を参考にして用いています。

ハチたちがどのようにこの正確な形を成形しているのかは、ずっと研究されているようですが、よくはわからないようです。熱の作用で自然にできるとか、触角を物差しのようにしているとか、諸説飛び交っています。とにかく道具などなしで作業しているのですから、完璧な職人技ですね。私たちにとっては非常に不思議なことですが、ハチたちにとっては普通のこと。ハチたちの普通に近づきたいと思って観察を続けます。

さて、次回はハチの何についてお話ししましょうか。



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