ミツバチ④女王バチ
「昆虫とは、生きている無限である。」byミシュレ
働きバチ、オスバチ、女王バチの3階層は、人間になぞらえると女王バチが頂上にいて、他のハチは女王の独裁に振り回されていると考えがちですが、実際は全ての階層は持ちつ持たれつの関係であります。
働きバチは、女王を育てるための特別な巣房”王椀”を作ります。
写真のお椀のような形が王椀です。
王椀が大きくなって、いずれ女王になる卵が入ると、蓋をして”王台”と呼ばれるものになります。写真の、ピーナッツのようなものが王台です。
王台という特別な部屋で、女王の幼虫はたっぷりの”ロイヤルゼリー”(王乳)に浸ってそれを食べて育っていきます。栄養満点で一生女王の餌となるロイヤルゼリーについては、また別の回に解説したいと思います。
いよいよ羽化です。写真下部の、お腹が赤くて大きく、長いのが女王蜂です。
体長20〜25㎜、女王バチはこのあと交尾飛行に出かけます。数十匹のオスと交尾をして、精子を集めます。なにしろ、1日に1500〜2000個の卵を2年から4年の寿命の間産み続けるのですから、十分に精子をため込まなくてはいけません。
女王バチの仕事は卵を産むこと。働きバチとの違いは体の大きさのみならず、後脚の花粉採集器、巣作りのためのミツロウの分泌腺、幼虫の食べ物を分泌する下咽頭腺などは退化しています。脳も小さいのです。
巣の中の全てのハチの母でありますが、コロニーを仕切っているわけではありません。産卵のスピードが落ちてくると、女王の座は追われてしまいます。とはいえ、コロニー全体の行動に影響を与えていることは間違いありません。
女王バチの子は女王バチの性質を受け継ぎます。コロニー全体の雰囲気にも個体差(あえて個体と呼びますが)があります。個体と呼ぶわけは、下部のリンクより別記事をご覧ください。
また、女王バチは色々なフェロモンをコロニーに広げています。例えば、女王バチの健康状態が良いことを知らせるフェロモンなどです。コロニーは女王の状態を把握し、良い状態ならばぐんぐん大きくなります。(フェロモンの話もいずれ詳しくお話しします)
そして、何かしらの変化に働きバチが気付くと、”分蜂”に備えて王椀を用意します。分蜂とは、新しく女王バチを誕生させ、それまでの女王は約2/3の働きバチを連れてお引越しをして新しいコロニーを作ることです。
新女王バチの候補たちが羽化します。しかしコロニーには女王バチは1匹だけ。死闘を繰り広げ、他の女王候補を殺した勝者が新女王バチとなり、交尾飛行に出かけます。コロニーに戻ると、生活の続きが始まるのです。
ちなみに、”養蜂”の巣箱では、人工的に分蜂させたり、または分蜂を防いだりのコントロールをします。養蜂の回をお楽しみに。
以上が女王バチの生活です。小さい体にどれだけのエネルギーが内包されているのか、本当に不思議ですね。次回はオスバチについてお話しします。
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