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第十二話 NISAとは何か知りたい

「投資家には2種類の専門家がいる。一握りのアクティブ運用のトッププロと、市場に勝てるだけの専門チームを持たない残りの大部分のプレイヤーだ。」byチャールス・エリス”敗者のゲームより”


第八話、証券口座開設の回で、NISA口座を開設しましょうと申し上げました。今回はNISAについてもう少し詳しく説明します。

①NISA(ニーサ)とは

株などの投資の利益には2種類あります。”キャピタルゲイン=売買差益”と”インカムゲイン=配当益”です。キャピタルゲインは、たとえば株価30万円で買った株式が35万円になったときに売却すると、利益になった差額の5万円のことです。インカムゲインは株式では配当金、債券では利子、不動産では家賃収入など、資産保有中に得られる利益のことです。

働いて稼いだお金に所得税という税金がかかるように、通常は株などの利益にも税金がかかります。キャピタルゲインは譲渡所得、インカムゲインは配当所得となります。税率は、利益の20.315%です。NISAならこれらが非課税になる、少額投資非課税制度です。このように、NISAとは制度のことなので、NISA自体が投資商品というわけではありません。

NISAのモデルになったのは、イギリスのISA(アイサ)という投資非課税制度で、2014年に日本版がスタートとなりました。NISA(Nippon Individual SavingsAccount)というなかなか良いネーミングですよね。
日本政府がどうしてこのような制度を設けたかというお話をします。日本の経済は長いこと低迷していますが、みんなが貧乏なのかというとそういうことではなく、個人の預貯金を含めて家庭に眠っている資産は合計約2000兆円とも言われています。投資額の上限を定めて税制を優遇することによって、その眠っている莫大な資産を市場にめぐらせて経済を活性化する目的があるのです。

②今までのNISA

NISAは2024年から新しいルールに改定されることになっています。では、2023年まではどんな仕組みなのかお話しします。3つのNISAが存在します。

「一般NISA」
2014年にスタートしました。1年間(1/1~12/31)に投資できる額は120万円まで。非課税で運用できる期間は5年間と、意外に短いのです。投資できる商品は株、投資信託、ETF、REIT。ETFとREITのついて詳しくはまた別のお話し。投資の仕方は、一括でもいいし、積立でも良いことになっています。
「つみたてNISA」
2018年にスタート。特に少額からの長期、積立、分散投資を応援するための制度です。積立購入しかできません。年間の投資上限額は40万円。毎月同じ金額を限度額ギリギリまで投資したい人は月3.3万円という中途半端な金額になっていました。投資商品は、金融庁が厳選した長期、積立、分散投資に適した投資信託に限られています。非課税で運用できる期間は20年間です。
「ジュニアNISA」
2016年にスタートした、未成年のための制度です。運用は親などの親権者が行い、進学や就職といった子供の将来のための資産形成が目的の制度です。年間投資限度額は80万円で非課税期間は5年間。ただこの制度は、子供が成人するまで払い出しができなかったり、途中で払い出すとNISAにも関わらず利益に対して課税されるなど、使い勝手がよくなかったため人気がなく、2023年で廃止されることが決まっていました。
私は、息子に投資について学んで欲しくて、廃止されることは承知で彼に小学五年生からお年玉でジュニアNISAでの投資をさせています。月に一千円とか二千円とか、本当に少額ですが、投資の値動きを感じたり、お金に関する知識をつけるきっかけには十分だと思っています。

③これからのNISA

さて、2024年からは新しい仕組みのNISAが始まります。2022年に岸田総理が制度の改訂を発表してから、徐々にテンションが上がってきて、NISAという言葉だけは巷でよくきくようになりましたね。では今までのNISAとは何が違うのかお話しします。

金融庁HPより

今までのNISAは、つみたてと一般のどちらか一方を選択して利用していました。新NISAでは、NISA口座という一つの口座を開設し、その中に「つみたて投資枠」「成長投資枠」という二つの箱ができます。つみたて投資枠とは旧つみたてNISA、成長投資枠が旧一般NISAで、新NISAでは二つを併用することができます。

「年間の投資可能金額」は、つみたて枠120万円、成長枠240万円で、合計360万円の投資が可能になりました。12で割り切れる金額になりましたね🤭満額使い切らなくても、翌年に持ち越せるわけではなく、毎年リセットされます。

「非課税保有期間」は無期限化となりました。これはすごい事です!複利の効果をよりよく享受できることでしょう。ただし、「非課税保有限度額」といって、生涯を通じて非課税で保有できる上限が設定されています。元本の合計1800万円、そのうち成長投資枠は1200万円までです。

旧NISAと新NISAの違いで最も大きなポイントとなるのが、枠の再利用が可能になったことです。今までは年間限度額まで投資するとそれを売却したとしても翌年のリセットまではさらに投資をすることができなかったのですが、新しい制度では空いた枠で新たに投資することができるようになります。たとえば住宅購入資金や子供の大学進学などでまとまった資金が必要になって、NISAから売却した資産を引き出したとしても、売却した分をまたNISAで投資していけるということです。

④NISAでの注意点

投資可能額が増えて、いかにもこれからはガンガン投資していくぞー、という印象を受けたかもしれませんが、投資の考え方は今までと同じです。生活防衛資金と必要とわかっている資金は現金(預金)で確保した上で、無理のない金額でコツコツとつみたてをしていきましょう。

また、売却した分の枠の再利用ができるといっても、売買を繰り返すようなアクティブ投資のスタイルを取ってはいけません。投資の目的はなんだったかを忘れないようにしましょう。
また金融庁も注意喚起しているのですが、枠の復活の仕組みを悪用した勧誘は大いに考えられます。たとえば証券会社や保険会社などが、販売手数料目当てに短期間での乗り換え(回転売買)を勧めるなどです。繰り返し言いますが、より高い利益を狙ったり、損をしたり利益が出たところで何かアクションに出る戦略は、私たちのそれとは違うものなのです。

以上、NISAについてお話ししました。日本史上最高の制度の新しいNISA。良いところを最大限に活用できるかどうかは自分次第です。SNSなどの言葉に踊らされることなく、自分でよーく考えて行動する、もしくは行動しないで「気絶」していきましょう。




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