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習い事、お稽古事の心得

「稽古とは 一より習い十を知り 十よりかへる もとのその一」 by千利休(茶人)


稽古というのは、初めてを習う時と、まで習い元のに戻って再びを習う時とでは、人の心は全く変わっているものです。まで習ったから「これで良い」と思った人の進歩はそれで止まってしまい、その真意をつかむことはできない、との教えです。

お習字をしていた頃に教えていただいた言葉です。本当にその通りだと思います。
何かを自分のものにしたい時、いくら言葉で説明されたことを頭で理解できたと思っても、本当の意味では理解できていません。
何度も何度も、実行してはああでもないこうでもないと繰り返し行ったり来たりするのです。そうして自分の中に少しずつ落とし込んでいって、やっと理解し始めます。時に膨大な時間を要することもあります。

全部を理解しようとしない方が良いのです。がむしゃらにやっている最中は全部なんて理解できないんです。一度忘れたり、捨てたりしなくてはいけない時がきます。元の一に戻る時です。

習い事を始めてから、ある一定期間、あるいは一定レヴェルまでは面白いように上達したのに、それからどんどん自分が上達しないどころか、下手になっているように感じたことはありませんか?そんな時は元の一に戻るチャンスです。まず深呼吸をして心を落ち着かせ、基本に立ち戻ってみると、今まで見えなかったものが見えてきます。

”上級者への道のりは 己が下手さを知りて一歩目”という言葉があります。下手になったと感じることは上達のためになくてはならない過程なんです。やっと下手になれたんです。それまでは、自分が上手か下手かもわからない状態なのです。

私のところには生徒さんがピアノを習いにきてくださるのですが、これを伝えるのがなかなか難しいです。何しろ、実践した人にしかわからない感覚なのですから。
以前、ある生徒さんから「私は上手くなっているんでしょうか。」などと質問されたことがありますが、返事には本当に困りました。彼女の中で起こっていることは私にはわからないことですし、彼女の心次第でもあります。

とにかく深いお稽古の世界、是非迷走してみてください。


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