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ミツバチ11. 分蜂(ぶんぽう)

「Just Bee Yourself」


ミツバチの巣の中では、ミツバチがたくさん生まれて巣が大きくなる時期に、女王バチが新しく生まれる女王バチにその巣をゆずり、ある程度の働きバチたちを連れてお引越しをする「分蜂」という現象が起こります。どのように行われるのかを見ていきましょう。

1.きっかけ
巣の中はザワザワしています。「なんか最近狭くない?」「まだまだ沢山生まれるのに、増築する場所が足りないのよね。」「この前新しい女王様のお部屋(王台)を作ってたみたいよ。」「そこのオス、邪魔!どいてどいて。」

誰かがもうそろそろお引っ越しなんじゃないかというウワサを流しました。そのウワサは巣のあちこちに広がって、お引っ越しムードに染まってきました。ミツバチたちの中の、経験豊富な外勤バチが言いました。「ではそろそろ準備を始めましょう。」

2.合図
そのハチは「パイパー」といいます。ハーメルンの笛吹きに登場するパイパーから名前を取っています。パイパーは引っ越せそうな場所を探しに出かけます。だいたい良さそうな場所の見当をつけて巣に戻ったパイパーは、働きバチを集めます。

「今からいうことをよく聞いてくださーい。貯蔵庫のハチミツを、お腹いーっぱい食べておいてください。それから、翅は動かせますか?胸と背中の飛翔筋を動かす練習をしておいてください。」

引越し先では巣を1から作らなければならず、食料もありません。当面耐えられるようにエネルギーを確保しておくのです。そして、みんながパイパーのように飛ぶことに慣れたハチばかりではありません。飛ぶには練習が必要なのです。

パイパーの呼びかけで出発の準備が整いました。パイパーの合図が始まります。パイパーは翅を激しく動かして唸りをあげ、巣板の上を駆け回ります。いよいよ出発です!

3.飛行
女王バチ、パイパー、そして巣の中の半分から2/3の働きバチたちが一斉に飛び立ちます。「みんな、はぐれないようについてきてね!」飛ぶことに慣れていないハチは、一生懸命についていきます。

ハチたちは、パイパーがだいたい見当をつけた場所の近くまでやってきました。でも、実際にどこに巣を作っていくかははっきりとは決めていませんでした。「さあみんな、ここにひとまず集まって!」と、女王バチを中心に大きなかたまりをつくりました。そのかたまりは、木の枝に大きなしずくのような形でぶら下がります。

”ここで皆さんにお願いがあります。ハチたちは、一時的にこのようなハチのかたまりを木の枝の下や、建物の軒先などに作ることがあります。もしこのようなハチの大群のかたまりを見ても、駆除をしたり、追い払ったりせずにそっとしておいていただきたいのです。ハチたちはそのうちいなくなります。安全な場所を見つけるまで、少しの間そこにとどまっているだけなのです。そういう時のハチは、新しいお家を見つけるのに手一杯なので、攻撃性も低く、あまり襲ってはきません。間違っても殺虫剤をかけたりしないように。ハチも人間も大パニックです。”

4.偵察隊
さあ、なるべく早くに新しいお家を作らなければなりません。すぐに何匹かのハチが、偵察隊に名乗りをあげます。「小さすぎず、大きすぎず、屋根があって、隠れられるところを見つけてきてね。」「わかった!やってみる!」

ちょうど良い場所を見つけた偵察ちゃんは、みんなのところに戻ると、”尻振りダンス”をして場所を知らせます。(尻振りダンスについては、ミツバチ⑩情報伝達の回をご参照ください)そうすると、別の偵察ちゃんが見に行ってみます。「お願いね!」「行ってきまーす。」

「うん、いいわね。」そう思うと、みんなのところに戻って、尻振りダンスをします。そしてまた、別の偵察ちゃんが見に行ってみます。相当慎重なのです。ところが今度見に行った偵察ちゃんは、「うーん、ここは雨が入りそうじゃないかしら。」と、その場所は気に入りません。

その場合は、別の場所を選んでからみんなの元へ。そしてダンスをして他の偵察ちゃんが見に行って…。だいたい80%くらいのハチが同意すると、決まりです。今度はやっと良い場所が見つかりました。

5.引越し完了!
「さあ、みんなこれからまた忙しくなるわよ!」前に住んでいた巣の生活の、そっくり続きが始まります。どんな生活なのかは、よろしければ他の記事も読んでみてくださいね!

新しい場所を、まるで議会で多数決をする人間のように決めるハチたち。群全体で考えるところが非常に面白いです。一定数の賛成が得られることを定足数反応といいます。

さて、今度は何をお話ししようかな。


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