ミツバチ③超個体とは何か
「日本に独裁者がいないのは、日本が個人からなる国家ではなくて、ミツバチの集団のようなものだからだ。」 by丸山眞男
ミツバチは、数万匹が一つの群れ(コロニー)を形成して暮らしています。その家族構成についてはこの記事の下のリンクより別の記事もご覧ください。
ミツバチのコロニーは、多数の個体が集まり、コロニー全体が一つの個体のように振舞います。それを「超個体」と呼びます。今回はそれが具体的にどういうことなのか、ご説明します。
「動物」を示す行動は、基本的に3つの機能にあらわれます。①餌をとる②危険を避ける③繁殖 です。3つの機能それぞれについて考えます。
①餌をとる コロニーにおいて餌をとる仕事は働きバチの役目です。花の蜜や花粉を集めます。集めたそのハチの食事にもなり得ますが、その役割は、最年長の寿命残り少ないハチが担うので、ほとんどは自分自身の飢えとは関係なく起こります。
②危険を避ける 巣が危険にさらされた時、働きバチが針で刺し、毒を注入します。それは働きバチにしかできません。そして、針は簡単には抜けず、抜くときに働きバチのお腹が破れて、そのハチは死んでしまうのです。その仕組みの詳しくは別の回にお話しします。
③繁殖 コロニーにおいて、子を産む仕事はコロニーに1匹しかいない女王バチが一手に引き受けます。成長したコロニーには、2〜8万の子供達と、すでに役割を終えて死んでしまったたくさんのハチがいるのです。そして、交尾が仕事のオスバチは、交尾の際に死んでしまいます。
コロニーは女王バチの産卵のスピードが落ちてくると、新しい女王を誕生させて、古い女王と2/3ほどの働きバチがよそへ引っ越しをする”分蜂”をします。超個体の観点から見ると、ミツバチにおいて繁殖とは分蜂の時と言えるかもしれません。
もしこの3つの機能を、生物における社会の構成単位としての個体に当てはめるなら、ミツバチやアリは、いずれか一つの能力しか備えていません。女王バチ、たくさんの働きバチ、オスバチが揃って初めて社会の構成単位となります。
コロニーは一個の「超個体的個体」ということができ、「社会」とは言い難いものなのです。”個体”~Indevidual~という言葉は、”分けられない”~In-dividuum~ という意味のラテン語が語源になっています。ミツバチのコロニーは分けてしまっては存在できません。
以上が、ミツバチのコロニーが超個体と呼ばれる驚きの理由です。なんとも言えない愛おしさを感じます。この後もミツバチについてのお話をたくさんしていきますので、楽しみにしてくださいね。
参考文献
「ミツバチの話し」 ピョトル ソハ
「ミツバチ」 大谷 剛
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