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ミツバチ⑤オスバチ

「他のすべての生き物が、その本能において肉欲の熱にうかされるのに対し、ミツバチはその支配を受けず、より慎み深い方法で繁殖する。」by H・ホーキンズ


ミツバチの家族は働きバチ女王バチオスバチの3階層で構成されます。今回はオスバチのお話です。

オスバチの大きさは15㎜〜20㎜、重さは働きバチの倍以上あります。外で遠くから女王バチを見つけ、追いかけ回さなければならないので、大きな目(複眼)を持っています。女王が他のオスバチに囲まれていても見つけ出せるといいます。

オスバチ(写真中央)


コロニー(群)には一割ほどのオスバチがいて、あとは女王、働きバチ共にすべてメスです。女王バチから生まれることは他のハチと同じなのですが、なんとオスバチは染色体を一組持つ、未受精卵から生まれます。つまり、父なし子なのです!この半倍数性という生まれ方については、また別のお話にいたします。

体の大きなオスバチは、蛹も大きいので、羽化する前に蓋をされた巣房は盛り上がっています。それが並んでいると、ポコポコ押す「プッシュポップ」というおもちゃに似ていて、つい押したくなります。写真のポコポコ出ているところはオスバチの蛹で、平らに蓋をされているところはメス(働きバチ)の蛹です。

オスバチの蛹


プッシュポップ


巣の中でオスは何をしているかというと、ただじっとしていたり、歩き回ったり身づくろいをしたりしています。要するに、仕事と呼べるようなことは何もしていません。よく、”ニート”だの、”ドローン(怠け者)”だのと呼ばれています。

強いていえば、羽ばたいて巣の温度調節くらいはしているかもしれません。餌も、働きバチにねだって食べさせてもらいます。たまには自分で食べる時もあるようです。時々、働きバチに邪魔者扱いされて体をかじられたりします。

ここからがオスバチの仕事です。毎日、午後になると巣外へ飛び出していきます。地上50m以上、半径30〜200mほどの、オスたちの集合場所でたむろします。そこで新女王バチを待ち構えるのです。

女王が来ると、一斉に追いかけます。交尾に成功すると、”ポン!”と言う破裂音がして、女王の体内でオスの生殖器が膨張し、受精。オスの生殖器は腹部の組織もついたまま体からちぎれ、そのままに至ります。

交尾できなかったオスバチ(おそらく大多数)は巣に戻り、また次の日に挑戦します。やはり邪魔者扱いされるので、冬が近づくと巣から追い出されることもあります。追い出されて死ぬよりは、交尾に成功して死にたいでしょうね。

ところでまだよくわかっていないのは、オスたちの集合場所のことです。どんな基準でその場所が選ばれているのか。女王バチを追いかけてそのエリアから離れてしまうと、オスたちは追跡しません。不思議です。

また、巣の中で処女王バチに会っても、交尾は行いません。これまた不思議です。そして、一番不思議なのは、オスたちの集合場所など、どうしてわかったのですか?追跡したんですか?地上50mに?どうやって?誰か教えてー!

今回はオスバチの行動についてお話ししました。次回はいよいよ働きバチの出番です。お楽しみに。



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