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ミツバチ⑧ハチミツ

「巣箱の利益にならざることはミツバチの利益にもなりえず」by マルクス・アウレリウス


”ハチミツの歴史は人類の歴史”といわれています。約一万年前には採蜜(さいみつ:人間がミツバチからハチミツを採ること)が始まっており、約5000年前には養蜂(ミツバチを飼育すること)が始まりました。

こんなに長いことミツバチの恩恵にあずかっているのですね。でも、ハチミツって一体なんなの?とか、砂糖を加えないでこんなに甘いの?と、よくご存知ない方もいらっしゃるので、今回はハチミツについてお話します。

ミツを集めてくるのは働きバチの役目です。働きバチたちは蜜源となる花を訪れて、花の蜜腺からストローのような口吻で吸います。吸ったミツは「蜜胃」と呼ばれる食べ物を消化する胃の前にある器官に一旦溜めます。

お花によって色、香り、味が違います

蜜胃にミツが溜まると巣に戻るのが習性です。一度に運べるミツの量は0.04g。働きバチの体重が0.1gなので、体重の約半分のミツを運んできます。巣の中の内勤バチは、外勤から帰ったハチから口移しでミツをもらいます。

口移しをするときに、「インベルターゼ」という転化酵素を含む分泌液を混ぜて渡します。この酵素はショ糖(スクロース)を分解する働きがあります。ショ糖というのは、いつも私たちが使っているお砂糖の主成分です。

ショ糖は分解されるとブドウ糖(グルロース)と果糖(フルクロース)になります。こちらについては後で詳しく説明しますが、ハチミツにはほとんどショ糖(お砂糖)が含まれていない、ということになります。

ミツをもらった内勤バチは、巣の壁に貼り付けていきます。ミツが溜まると翅で風を起こして水分を飛ばします。水分が20%以下になるとハチミツとなり、ハチたちは蝋で薄いフタ(蜜蓋)をします。

巣房の中にミツがたっぷり溜まっています

お花のミツはショ糖約20%、水分約80%で、先ほどのインベルターゼにより分解、さらに水分を飛ばして濃縮されることで糖分(ブドウ糖と果糖)80%、水分20%と、逆転します。人間は砂糖を摂取すると、消化管でブドウ糖と果糖に分解してから吸収します。でもハチミツはすでにブドウ糖と果糖の単糖になっているので、吸収されやすいのです。素早くエネルギーになるので、疲労回復に効果的です。

カロリーは100gあたり、砂糖:384kcal ハチミツ:294kcal。ハチミツは果糖を多く含むので、甘味は砂糖に比べて1.5倍です。そして、ブドウ糖の比率は低いので、血糖値が上がりにくいという特徴があります。

なんだかハチミツの良いところばかりが目立つようですね。私はすっかりミツバチとハチミツ信者になっているので、ひいきしてしまう傾向がありますが、まだまだ続きますよ。

私たちの体の免疫系にも良い作用があるようです。血液中の白血球の中の”好中球”という細胞は、動き回って細菌を食べて(貪食作用と言います)殺してくれるのですが、ハチミツはその好中球を動かし、活性化させて貪食作用も高められるのだそうです。

また、”マクロファージ”というこれまた様々な機能を持った免疫細胞があるのですが、そのマクロファージの機能そして、抗体を産生する機能を高めることがわかったのだそうです。

さらに!免疫過剰な炎症状態では、ハチミツは炎症を抑制する抗炎症作用を示すこともわかっています。なんだか出来過ぎですね。

私は専門家ではないので、詳しくお話しすることはできませんが、免疫については「はたらく細胞!!」で楽しく学ぶことができます。おすすめです。

追い打ちをかけますが、ハチミツは糖分が80%以上あり、浸透圧が高く、細菌は繁殖できません。抗菌作用も注目です。ハチミツは基本的に腐らないんです!ただし、芽胞細胞だけは芽胞という固い殻のように包まれて、生き延びることができます。ボツリヌス菌が食中毒として発症することがあるので、1歳未満の乳児にはハチミツは与えない方が良いということです。

その他、ハチミツにはタンパク質、ミネラル、ビタミン、ポリフェノールなどの栄養素も豊富です。抗酸化作用と言って、活性酸素を除去してくれる効果もあるので、老化防止になります。カリウムという成分は血圧を下げてくれるのだそうです。

大丈夫ですか?めまいがするほど魅力的なワードがたくさん出てきましたね。ハチミツはハチたちが自分達の栄養源として蓄えるのですが、それを分けてもらうわけです。これもひとえにミツバチのおかげなのです。小さな働きバチが一生のうちに集めるハチミツは、実は小さなティースプーン一杯だけ。貴重なハチミツをもたらすミツバチを、私たちは大切に守っていかなくてはなりません。

参考文献:蜜蜂と蜂蜜の秘密を探る!蜂蜜と免疫 竹内 実著



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