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📚【ノンネイティブの流儀9】【あえて「組み立て」で書き切るということ】

【写真】東京・神田駿河台のニコライ堂(撮影・飯竹恒一)

英文ライティングのあるべき形をめぐる議論でよく耳にするのが、「短文を重ねる」という立場です。関係代名詞などを駆使して複雑な文構造にするのを嫌うもので、確かに一理あると思います。

同じ議論は日本語でもあって、駆け出し記者のころ、無理に長い一文で書いていたのを、デスクが手際よく分割して仕立てていったのを、よく覚えています。

では、いま私がどう考えているかというと、少なくとも英文ライティングに関しては、やや立場が違います。英文記者としての経験なども踏まえると、逆説的ですが、「短文を重ねる」ことは簡単なようで、実は一番難しいからです。

というのも、短文は当然のことながら、一文ごとにパンチを効かせる工夫が必要で、主語をどう立てるかや、時制の調整も迫られるのに加え、述部で使う動詞の選択がいっそう決定的になります。さらに面倒なのは、文と文との前後関係をどう設定するかで、手っ取り早いのは接続詞(and, but など)や副詞(however など)を使うことですが、連発するとうるさくなります。

さらにそもそも、ノンネイティブの語彙や表現力はネイティブやバイリンガルにかなわないのは言うまでもありません。そんな絶望感から出発して私が行きついたのは、あえて「組み立て」で書くという発想です。

次の例は、短文を重ねた日本語をもとに英文を作った場合の「訳例」で、意図して実験的に一文で書き切っています。

【日本語】その国で何をしたらよいのか。さまざまなNGO(非政府組織)と話をしました。ですが、肌に合う組織はなかなかなかったのです。 というのも、私は日本の多くのNGOの活動について疑問を抱いていたからでした。

【訳例】Seeking what I should pursue in the country, I talked to a number of NGOs (non-governmental organizations), only to realize how difficult it was to find an organization that fit my expectations, given the doubts I had about the activities of many Japanese NGOs.

手先の単語や表現で書き綴るというよりも、料理の「お皿とその配列」(=組み立て)を考え、そこに「料理」(=事実関係、単語、表現など)を盛り付けていく感覚です。

この訳例は長く複雑すぎるという批判もあるでしょう。しかし、読み手は、seeking、only to realize、 given という言わば文を組み立てるための「小道具」たちをトリガーにして読むでしょう。そこに盛られた内容の完成度はともかく、構造として頭に入れてもらえるということです。読者に対し、あらかじめ「目次」を提示するようなものかもしれません。

「短文を重ねる」ことはある意味で理想ですし、ノンネイティブとしても、それを可能にする語彙力や表現力を磨くための「終わりのない旅」は続けるべきでしょう。ただ、構造重視の「組み立て」で書くために必要な勘どころは、実は意外に限られていますし、そのためのヒントはあちこちに転がっています。意識して身に着けておくと、時に頼りがいのある「土台」や「支え」となってピンチを救ってくれます。

(主宰講師・飯竹恒一)

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