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【ノンネイティブの流儀8】【文法と現実のはざまで】

【写真】スペイン・マラガにて(撮影・飯竹恒一)

文法は外国語のノンネイティブにとって頼りがいのある基礎資料です。しかし、文法からはずれた現実に遭遇した時は、かえって戸惑いの原因となります。最近出会った次の英文もその一例です。 

In 1941, all of Europe was either occupied, neutral or allied with Nazi Germany.

歴史を振り返れば、文意は明快です。「1941年、欧州全土はナチス・ドイツに占領されたか、中立の立場か、同盟関係にあるかのいずれかだった」となります。問題は通常、either は二つの事柄について言及する場合に用いられるというのが英文法の教えで、三つ以上の場合は any を使うことになっている点です。

Any of these books will do. (これらの本のうちどれでもよい)といった例文が某参考書に出ていました。やや手の込んだ例として見つけたのは、米国の歌手ビヨンセが2023年のグラミー賞に最も多くの部門でノミネートされたという内容の昨年11月のニュースの次の一文です。

However, the star has not won a prize in any of the three biggest categories (album, record and song of the year) since Single Ladies was named song of the year in 2010.

「シングル・レディース」が2010年に最優秀楽曲賞(ソング・オブ・ザ・イヤー)に輝いて以来、ビヨンセがアルバム、レコードを含めた主要3部門のいずれからも受賞が遠ざかっているという内容を綴るのに any を使っています。しかし、カッコを使って三つを並べているところをみると、やや苦し紛れという印象を受けなくもありません。

知り合いの米国人のネイティブに、この点を尋ねたところ、「こうした any を使う場合は、色々と考えて書く必要がある」と言った答えが返ってきました。そんな面倒なことをするくらいなら、正式な用法からずれるのを承知で、either を使うのが手っ取り早いという話でした。

要するに、any のこうした使い勝手の悪さから、either で代用するのがネイティブにとっても現実的な場合が多いのでしょう。私自身は英文ライティングの際、時折出会うこの言わば「例外の either」に手を出す誘惑に駆られつつも、結局ノンネイティブとして文法を尊重し、any を駆使して乗り切ってきた経緯があります。ただ、言葉は生き物です。冒頭のような例がいつの日が、英文法でも正式に許容される日が来るのかもしれません。

(主宰講師・飯竹恒一)

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