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【ノンネイティブの流儀5】【戸惑いのAPPARENT】【断定避けるニュース用語】

【写真】東京・JR渋谷駅前にて(撮影・飯竹恒一)

かつて古巣の新聞社で英字版のセクションに異動になってからまもなくの頃。英文記事を仕立てるネイティブのコピーエディターに原稿を出すと、しばしば副詞の apparently が書き加えられていることに気づきました。例えば、こんなくだりです。

The prime minister apparently thought he would have the backing of the United States.

首相が米国の支援を得られると「明白」に思った、と書いたつもりはなかったと思いつつも、直されたからには意味があるのだろうと想像しました。念のためにと思って辞書を引くと、形容詞の apparent には「明白」という意味合いのほか、「表面的」という項目がありましたが、それをこうした文にそのままあてはめても、いま一つ納得感がありませんでした。

まもなく分かったことですが、ジャーナリズムに出てくる apparent やその副詞形は、事実関係の断定を避けるために書き添えられる場合が多いのです。あえて言えば「表面的」の方の意味合いになりますが、「見た目だけ」というネガティブなニュアンスを積極的に読み取るというよりは、「見たところ」と軽く添えている感じです。以下は最近の例文です。

The president signed a decree in an apparent attempt to alleviate a demographic crisis in the country.

「大統領は大統領令に署名した。国内の人口危機を緩和するためだろう」という意味になり、in an apparent attempt to を「~する目的だろう」と読み解く点に注意です。これを「明らかに緩和するために」とか、「表面的には緩和するために」と読み解いてしまうと、ニュアンスをミスリードすることになります。

もちろん、apparent が辞書通りの意味になることもあります。ただ、ジャーナリズムでは、書き手が事実関係について、どこまで確信があるのかを正直に示すことが大切で、100%の確度と言い切れない場合に、apparent やその副詞が使われることが多いということでしょう。

日本語の記事でも、「~とみられる」と末尾に書き添えた文を見ると思いますが、記者が自分で取材をして裏が取れていれば断定したいところ、自信がないので緩めておく判断があります。あとで指摘されてトラブルになるのを防ぐ意味もあるでしょう。

断定の度合いを表す表現は英語でも日本語でも色々あり、そうした表現に着目して記事を読むことで、ニュースの信憑性が推し測れます。

(主宰講師・飯竹恒一)

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