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【経理】売掛金管理ツールには、こだわりたい。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

今日は、「売掛金管理ツールを選定するときは、めちゃくちゃこだわった方が良い」ということについて書きます。


「売掛金管理ツールを利用しなくても良い仕組みづくり」が、大前提。

企業の売上代金の回収状況を把握するのに、売掛金管理ツールは必須です。自社の売上代金が早期に、かつ、確実に回収されて現金収入を得るからこそ、事業を継続できるからです。

もちろん、この「売掛金管理ツール」がなくても、全く問題ない場合があります。

例えば、代金の支払いが先で、その後に商品販売・サービス提供する場合です。代金決済がされなければ売上は決して立たないので、これ以上に良い仕組みはありません。この場合、売掛金管理ツールは特別に用意する必要はない、ということになるでしょう。

売掛金の回収状況の把握は、商品販売・サービス提供後に代金を回収する場合に必要な作業となります。そのため、この管理作業を避けるための仕組みづくりは、ビジネスを進める上でも、非常に重要なことになると思います。

売掛金を管理するなら、「1対1」が原則。

売掛金の管理ですが、「1対1」が原則です。

例えば、A社に対し、4月に2件の請求(①税込11万円、②税込33万円)をしたとします。売掛金は44万円です。どちらも5月末が入金期限です。

<会計処理>
①売掛金 11万円 / 売上高      10万円
            / 仮受消費税 1万円
②売掛金 33万円 / 売上高      30万円
          / 仮受消費税 3万円

その後、5月にA社から入金がありましたが、その金額は20万円です。この会計処理は、どうなるでしょうか?

<会計処理>
現金及び預金 20万円 / 売掛金 20万円

経理初心者の頃、何の疑いもなく、私はこのような仕訳を切ってしまっていました

ただし、これは、どの売掛金の回収かわかりません。「①の11万円+②うちの9万円」かもしれませんし、「②のうちの20万円」かもしれません。

  ”全額ではないけれど、とりあえず入金されたし、良いよね?”

このような甘い考えで、普通に仕訳を切ってしまっていました。ところが、このような杜撰な考え方が売掛金管理の煩雑さを増やしてしまい、回収遅延も招きます

売掛金管理の原則は、「1対1」

どの売掛金が回収されたのか、金額は正しいか、回収期限に間に合っているか。すべての項目をクリアして初めて、仕訳を切れることになります。

私はこのことを、当時の経理部の先輩から説明頂きましたが、その先輩の理解は稲盛和夫氏の書籍から来ていることを、後年になって知りました。


望ましくない例。

会社の状況にもよりますが、よく見る「望ましくない例」があります。

それは、会計帳簿の「売掛金補助元帳」や「取引先元帳」で売掛金管理をすることです。

非常に簡単ですし、本当によく見る例です。

もちろん、売掛金補助元帳や取引先元帳であれば、取引先ごとの売掛金残高を確認することができます。

ところが、その残高の明細は、元帳を見直さないと確認することができません。特に良くないのは、会計帳簿は会計事業年度で情報が切れてしまうことです。現在の残高が前会計事業年度の明細を含んでいることもあり、その都度、前会計事業年度に切り替えて見直さなければなりません。

毎月、問題なく売掛金が回収できる会社であればこの方法でも良いのですが、回収状況に問題がある会社ほど、この管理方法をしていることが多いです。

売掛金回収状況の把握に悩んでいて、「売掛金補助元帳」や「取引先元帳」で回収管理をしている会社さんは、今すぐ、その管理方法を見直すことをおすすめします。

迷ったときは、Excel管理。

それでは、どのような管理方法が良いかというと、すぐに良いツールが見つからない場合には、Excel管理をおすすめしています。

そもそも、売掛金補助元帳や取引先元帳で売掛金管理をしているのは、利用している会計ソフトに「売掛金管理ツール」が装備されていないから、ということがほとんどです。海外の会計ソフトと比較して日本の会計ソフトは非常に特殊で、会計ソフトに売掛金管理ツールが標準装備されていません

したがって、売掛金管理ツールを導入するにはコストも手間もかかるので、良いツールが見つかるまでの間はExcelにした方が、管理体制を簡単かつ適切に移行できることが多いです。

Excelが得意な人であれば、請求情報と回収状況を一覧に反映するプログラムを組むことができます。また、Excelにデータとして情報が一括で取り込めれば、売掛金の年齢表も作成できますし、経営者への報告も簡単になります。

Excelも良いけれど、会計ソフトの標準装備になると嬉しい。

とは言え、Excelの作業能力は、人によって全く違います。

Excelの資格があるかどうかにかかわらず、Excel作業における「経理のためのセンスのようなもの」は、千差万別です。Excelの技量があることは、必ずしも企業経理で役に立つとは限らない、ということです。

例えば、作業をした本人は正しい集計作業だと信じていても、他の人が検証できない集計作業は、企業経理では意味がありません。第三者が単純明瞭に検証できて初めて、それは価値のある数値になります。能力がある方にとっては不服かもしれませんが、簡単に検証できない高度なExcel作業をやっても、評価されないことになります。

一方、そろそろ「Excelが全くできなくても、間違わない経理ができる時代」が近づいてると感じています。

例えば、クラウド会計ソフトの世界では「マネーフォワードクラウド」や「freee」が有名ですが、どちらも売掛金回収管理が標準装備になっています。(どこまでを「標準装備」と呼ぶかの判断はありますが、「お金を払えば、連携がスムースで無理なく使える」という意味合いで書いています。)

これらのクラウドソフトは、「この入金は、この請求分の回収ではないか?」という推定で、明細単位で売掛金の消込をするツールですので、売掛金管理の原則である、「1対1の原則」をベースにしていると思います。(過去の未回収売掛金情報の取り込みに難があるなどの不満はあるものの、現時点では、安価で利用できるという点も含め、抜群に他の会計ソフトを凌駕していると思います。)

このような売掛金管理ツールが標準装備されている会計ソフトが、もっと増えたら良いのにな、と思っています。

売掛金管理から、自由になろう。

売掛金管理は、企業のキャッシュフロー管理に必須です。

だからこそ、売掛金管理に時間をかけている経理さんは非常に多いと思いますが、この時間から解放されれば、次のステージが待っています

是非、売掛金管理から自由になれるよう、ツールの工夫をしてみてはいかがでしょうか。

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ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。