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「強い経理」とは、何か。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

「強い経理を手に入れて長寿企業になるために、経理は何ができるのか」ということでnoteを始めてみましたが、この「強い経理」とは何かについて、改めて整理してみたいと思います。


強固な経営基盤

強い経理とは、会社が安定性のある高収益体質で、財務基盤が強固である状態だと考えています。具体的には、下記のような状態です。

【1.資金繰り】

・資金繰りが会社の命であるため、資金繰り対策に万全の対策を施している
・キャッシュフローを重視し、売掛金回収期間の短縮、与信管理、在庫圧縮に常に取り組んでいる

【2. 日々の情報伝達】

・社長や大番頭が、業績を常に把握している
・経理部の決算データとは別に、店舗別の売上高や来店客数などのKPIを即時に把握できる体制にしている
・稟議書など会社のアクションにつながる行動計画が経理部にも回覧されており、経理部が会社の行動の隅々まで把握している

【3. 経理部のパフォーマンスが高い】

・決算スケジュールと担当者割が明確に定められており、事務フローが「標準化」かつ「見える化」されている
・熟練の経理スタッフによって、定められた手順に従ってスケジュール通りに整然と決算作業が進む
・急な経理スタッフの退職によって経理作業が崩壊しないような仕組みが構築されている
・月次決算が非常に早く締まり、月初の早い段階で経営会議が開かれている
・月初の経営会議に提出される決算資料が非常に整然としており、会社の業績の動き、財務内容が経営者にとって分かりやすい
・経理部が会社のトピックスを理解しており、経営者や投資家からの質問を事前予想して回答を準備できている

不測の事態にも揺るがない経営

強固な経営基盤とは、不測の事態にも揺るがない経営基盤です。

ただ、何をもって「不測の事態」と呼ぶかという話もあるので、正直なところ、明確な不測の事態の定義付けはできません。日本は歴史的に、地震や津波などの自然災害による被害が多いからです。また、昨今のコロナウィルスによる企業活動への影響など、誰が予測できたでしょうか。

ただし、「予測できる範囲の不測の事態」(←変な表現ですが)はあると思います。例えば、下記のようなものです。
・主要取引先の倒産リスク
・経理担当者の退職リスク
・仕入先の地域や企業が偏ってしまうことによるリスク
・海外情勢の変化による仕入価格高騰リスク

少なくともこれらのような「予測できる範囲の不測の事態」が起きたとしても揺るがない、もしくは、対処できる、というような経営体制は「強い経理がある状態」だと言えると考えます。

また、「予測できる範囲の不測の事態」に充分に備えた結果、全く予測できなかった本当の不測の事態にも耐えうる経営基盤を築くことになる、というのも、数々の長寿企業の例が示していると思います。

会社の実態を正しく示す財務諸表

それでは、不測の事態にも揺るがない経営のためには、何が必要かということですが、それは会社の実態を正しく示す財務諸表でしょう。自社の今の姿を正しく捉えられなければ、先への進め方がわからないからです。

一昨年に亡くなった稲盛和夫さんは、京セラや第二電電(現KDDI)などを創業し、日本航空(JAL)を再建した方ですが、ご自身の著書「稲盛和夫の実学」の中で、下記のように書かれています。

社内に一対一の対応を徹底させると、誰も故意に数字をつくることができなくなる。伝票だけが勝手に動いたり、モノだけが動いたりすることはありえなくなる。モノが動けば必ず起票され、チェックされた伝票が動く。こうして、数字は事実のみをあらわすようになる。

稲盛和夫の実学 (日本経済新聞出版)

稲盛和夫さんは一つ一つの会計処理にこだわり、その積み重ねによる管理会計の在り方にこだわった方だと私は理解していますが、何よりもこの「経営者自身が、経理の在り方にこだわる」という姿勢自体が、非常に大切だと思います。企業のトップが変わらなければ、企業は変わらないからです。

「強い経理」のため、具体的に何をしたら良いのか。

「それでは具体的に何から手を付ければ良いのか」というときに、少しずつできることを考えていくために、このnoteを始めました。

前項で「企業のトップが変わらなければ、会社は変わらない」と書いたことと矛盾しますが、このnoteは中小企業の経理の方向けに書いています。中小企業の経理さんは、経営者と非常に近い立場にあり、折に触れ、適切な助言ができるからです。また、具体的な改善に実際に取り組みやすいのも経理の方だと思います。

些細なことであっても、少しずつ改善していければ良いなと思い、継続してこのnoteを書いていきたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。