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【経理】"1年後のワタシ" は、ほぼ別人。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

この時期、3月決算法人の経理さんは「年1回しかやらない作業」をやることが多いと思います。

今日は「年1回しかやらない作業の手順は忘れやすいが、1年後の自分が困らないように工夫をしよう」ということについて書きます。


年1回しかやらない作業の手順は、忘れるのが当たり前。

年度決算作業は12回目の月次決算ではあるものの、どうしても「年度決算のときだけやる作業」というものは出てきてしまいます

忙しい時期の作業で、しかも、年1回。

昨年もやったはずの作業であっても、手順を忘れたり、手順を間違ってしまってしまうことにより、想定以上の時間と手数をかけてしまうことも多いでしょう。

今日は、年1回の作業でも、"誤りによる手戻り" や、"改めて理解し直す作業" により無駄に時間を使わないよう、事前にできる工夫について書きたいと思います。

1年後の自分 or チームメンバーが困らないような工夫。

昨日も、お客様とお話しているときに「1年後の自分は作業をすっかり忘れているので、『ほぼ別人』ですよね」という話になりました。

記憶力が良い方で、来年も自分が作業することが確定している場合であっても、実際の作業時には誰かにお願いしなくてはならないこともあるかもしれません。「来年の誰か」が作業をしやすいように、今から準備をしましょう

①シンプルな手順書を整える。

王道ですが、「手順書を作る」というのが最初にやる作業になるでしょう。

細かい作業は昨年のファイルを参照すれば良いので、「どのような順序で取り組むか」ということを簡潔に明記しておくと良いと思います。

私の場合は、作成するExcelファイルの一番左に「手順書」シートを作成して、随時更新するようにしています。

左から順に、下記の順にシートを並べます。
手順書:作業の手順、事前に必要な情報を記載する。
・Summary:計算・検討結果のまとめを書く。重要な前提事項も記載する。
・詳細:「Summary」の計算・検討明細の記載、根拠資料の貼付けなど。
・元データ資料:「詳細」の基になった加工前データを置く。

さらに、実際の作業中にトラブルやアップデート(他部署との連携不足、監査法人や税理士法人からの指摘など)があった場合は、その内容を「手順書」シートに反映させておきます。

②確認が必要な時期に、必ず見る場所にメモを残す。

ただし、①の対処のみだと、実際の作業時期に手順書を見て初めて、「事前にこの資料・情報を依頼しておくべきだったのに、準備していない」ということになりかねません

そのようなことが起きないように、年度決算の準備が必要な時期に必ず見る場所に、「手順書を見る」指示をメモを残しておくことなどが有益です。

自分の場合は、例えば共有フォルダ上の「1月決算」>「月次レポート」フォルダに、「年次決算フォルダの〇〇ファイルの手順書を2/10までに確認!」という名称のファイル(中身はカラ)を置いておいたりします。そうすると、1月決算の月次レポート提出時に必ず見るので、忘れることがありません。

この方法でなくても、普通にカレンダーやTo doリストに反映させる方法でも良いと思います。ただ、個人のカレンダーやTo doリストだと、他のスタッフに作業をお願いした際にそのスタッフが気づけないことになってしまうので、誰が作業をしても、視覚的に簡単に気づける方法が良いと思います。

③レファレンス(参照記号)を付す。検討過程は残す。

よく見る事例ですが、昨年の資料は作成してあるものの、その数字がどの資料の何の数値を持ってきているのか、どのような検討過程を経てそのような結論に至ったかなどが、わかりにくいことがあります

このような場合、その資料を読み解くのに時間がかかり、「資料があるのに結局時間を使ってしまう」ということになります。

また、「昨年は該当があった項目でも、今年は該当がない」というときに、何のコメントもなしにその項目を削除してしまうことがあります。その場合、その翌年「実際はその項目が必要だったのに、気づかず、結果的に間違える」ということが起きてしまいます

「資料を見れば一目瞭然」「文章を書くのは時間がかかるので、資料だけの方が良い」「Excel内で元データから数値を参照する数式を入れれば大丈夫」と思って、説明のテキストを付さずに資料を作ってしまうことがありますが、それは単に「最低限やるべきこと」です。決して「他人にとってわかりやすいレポートではない」と思います。

1年後の自分やチームメンバーが困らないように、どの資料のどの数値を持ってきたのか、結論を出すにあたって実施した検討の経緯と詳細はどのようなものであったか、丁寧に記載しておくのが望ましいのではないでしょうか。

「忘れないような工夫」よりも、「忘れても大丈夫な工夫」を。

年1回の作業はどうしても忘れてしまいますし、むしろ「忘れないように注意しよう」という努力の方が、時間も手間も勿体ないと思います。

どちらかと言えば、「忘れてしまっても、作業時には無理なくできる」と言う方が効率的だと思いますので、年度決算の作業中・作業後に時間を作って、1年後の担当者が困らない工夫をしてみてはいかがでしょうか。

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ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。