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【経理】"補足"と"蛇足"は、似て非なるもの。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

世の中はゴールデンウィーク中ですが、3月決算法人の経理部の方は仕事をされている方も多いかと思います。

今日は「"伝えるべき事実" と "自分の考え"は全く別のものなので、区別して伝える」ということについて書きます。


通訳するときの"補足"と"蛇足"は、似て非なるもの。

先日、食事のために蕎麦店に入ったのですが、注文に時間のかかっている席がありました。

英語を話す外国からいらした方2名と、日本語を話すホスト役の2名の合計4名のグループでしたが、その英語を話す方のうち1名は食事の制限があるとのことで、その内容をホスト役の女性が通訳して店員さんに説明をしようとしていました。

大きな声で話されていたので聞こえてしまったのですが、次のような食制限とご希望でした。
・魚アレルギーがある。
・グルテンアレルギーがある。
・冷たいものは体調を崩しやすいので、あまり好まない。
・それでも、日本蕎麦をざるで食べてみたい。

一方、それに対して通訳の方が、英語を理解できない店員さんに伝えていたのは、次のような内容でした。
・魚アレルギーがあるが、そばつゆは魚出汁が入っているはずだから、代わりに醤油か塩かレモンを用意して欲しい。
・グルテンアレルギーがあるが、十割蕎麦ならグルテンフリーなので、十割蕎麦にして欲しい。
・ざるそばを食べたいが冷たいものが苦手だから、最後に一回湯通しして温めて欲しい。

良かれと思ってご自身の意見を加えられたと思うのですが、アレルギーの度合いや注意点を深くヒアリングせず、また、店側の都合も聞かずに注文しようとしていたので、ちょっとやり過ぎかなという印象でした。実際のところ、その店舗の十割蕎麦は「ごくわずかだが、つなぎにグルテンが含まれる可能性があり、グルテンアレルギーの方には適さない」ということがわかり、さらに混乱に陥っていました。

ご本人の伝えた内容を補足するのは、通訳の現場では必要とされることだと思いますが、ご本人が言っていないことまで追加してしまうのは、混乱の原因になるでしょう。伝えるとしても、「これは自分の意見なのですが」と前置きするのが望ましいのではないかと思います。

伝えるべき事実関係は、徹底的に調査する。

これは自分自身もいまだに課題ですが、「報告すべき事実は、徹底的に調査すべき」とだと思います。

経理・会計・税務などに関わる人が「事実」と呼ばれるものを調査するとき、関連数値を確認したり、関係資料を確認したり、関係者にヒアリングしたりして、事実関係を整理しようとすると思います。

当然ですが、関連する数名がすべて共謀して不正を働いた場合、その数名が作った数値・資料・説明内容を検証しても、不正の事実は判明しません。共謀していない人の客観的説明を聞いて初めて、事実関係が整理されることになります。

そして事実関係を徹底的に調査して初めて、それは報告すべき事実になります。

伝えるときも、急がば回れ。

中小企業の経営者はせっかちな人が多いので、端的な報告・説明を求められることが多いと思います。

そのため、本来は「徹底調査した事実→自分意見」の順で報告すべき内容を、時には「事実のみ」、時には「自分の意見のみ」、という報告になってしまうこともあるかもしれません。

経営者がそれに気づき、「ちゃんと意見も言ってくれ」「意見の前に、事実は何なの?」と言ってくれれば良いのですが、気づかず経営判断に進んでしまうこともあります。

中小企業では、「経理部の報告は経営者の判断の基礎」になります。充分に留意した方が良いのではないでしょうか。

区別して、話す。

うまく話す必要はなく、単に「これは調査した内容ですが」「これは自分の意見ですが」という前置きをすれば充分でしょう。

是非、「事実」と「自分の意見」は区別して話すようにしてみてはいかがでしょうか。

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ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。