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戦前の学校制度(2) 高等学校〜帝国大学

前回は中学校までの話であった。


ここから後に紹介する学校は、戦後は大学になった。
それを旧制では高等学校とか、高等〇〇学校、〇〇専門学校などと呼んでいたから話がややこしいのだ。


戦前の高等学校


旧制中学卒業後はどうなるか、というと、その上は当初は高等中学校と呼ばれている学校があった。
高等中学校はのちに単に高等学校という名称になる。

旧制の高等学校は戦後の新制高等学校とは違い、今で言えば大学教養部にあたる学校である。
たとえば今の駒場東大は旧制第一高等学校である。

旧制高等学校では一般教養を教えるのみで専門はやらない。
だから基本的にはその上の大学に進学するのが前提の学校で、今と違うのは旧制高等学校を卒業するとどこかの大学に無試験で入ることができた。だから実質的に旧制高等学校入試が大学入試のようなものであった。
今も東大入試は第一高等学校入試のようなものである。

旧制専門学校


だが、戦前は経済的な余裕がなく、旧制大学まで行ける人はかなり恵まれている人である。
旧制の大学というのは今で言えば大学院に近いのだ。

だから旧制大学に行かず旧制専門学校に行く人もいた。専門学校といっても今の専門学校とは違う。今で言えばここが大学に相当するのだ。

旧制専門学校は旧制高等学校相当だが、一般教養をやるのではなく逆にほとんど専門科目ばかりをやる学校である。
高等工業学校、高等商業学校、高等農林学校、高等師範学校などの学校があり、これらは旧制中学卒業で入学することができた。

これらの学校は戦後地方国立大学の工学部、経済学部、農学部などの学部になっていく。だから高等〇〇学校という名称だが実質は今の大学にあたるのだ。そのほとんどは今で言う国立で、男子のみであった。

たとえば横浜国立大学という学校があるが、横浜高等工業学校と横浜高等商業学校に師範学校が合わさってできた学校である。旧制専門学校が主体になっている。いずれも名門校であった。

女子は高等女学校の後は国立では女子高等師範学校だけでそれ以外は公立、私立の女子専門学校、または私立大学というコースしか基本的になかった。
東北帝国大学は女子の入学を認めていたのでこれらの学校を卒業して入学が可能であったが、例外的であった。

ちなみに戦後にできた新制の高等専門学校、いわゆる高専という学校があるが、名前が似ているだけで別物である。これもややこしい。

細かいことを言うともっと色々あって、この高等学校、高等〇〇学校、後述する大学は基本的に今で言う国立大学の話で、公立、私立はまた別であった。
これも書き出すと訳がわからなくなるのでまたの機会に

帝国大学

で、高等学校の上は、と言うと、まず帝国大学があった。これも色々書き出すと訳がわからなくなるが、
東京、京都、東北、北海道、九州、大阪、名古屋と今はないがソウルと台北の9校があった。

旧制高等学校卒業生は基本、旧制大学に無試験でに入れた。

そんなことをしたら皆東京帝国大学に行きたがるだろうって?その通りである。
だから東京帝大だけは常に学科ごとに入学試験があった。
まるで今の進振りである。

他の帝大は、工学部、医学部は試験があることが多かったらしいが、文系は京大でも入試がないことが多かった。北大、阪大、名古屋大には文系自体がなかった。

単科大学


高等工業学校卒業生は卒業して就職するか、もっと勉強したければ工業大学、同様に高等商業学校卒業生は商業大学、高等師範学校に対しては文理科大学があった。(農業大は私立のみで少し違う。医学系も少し違う。)

これらの大学が戦後東京工業大学や一橋大学、東京教育大学(今の筑波大学)になるのだ。今で言えば大学院のような扱いである。
大学院重点大学の話が出た時も旧帝大、東工大、筑波大あたりが真っ先に候補になったのもそのためである。

ついでに言うと帝国大学の定員に空きがあり、試験に合格すれば高等工業学校などから帝国大学に進学することもできた。傍系進学と呼んでいたが実際に進学するのは困難なことが多かった。特に東大は定員割れがないので絶対無理であった。

逆に旧制高等学校から旧制東京工業大学や旧制東京商科大学(一橋大学)に進学することも可能であった。

今でも就職に関しては東京一工などと言うがこれもそれぞれのカテゴリーの企業就職トップ旧制大学を集めた形になっていて、別に最近の偏差値で括ったわけではないのである。

また、旧制神戸商業大学は今の神戸大学であり、旧制広島文理科大が今の広島大学である。これら大学が地方大学ながら他の大学と一線を画す名門なのも戦前から大学だったからだ。

医学専門学校、医科大学というのもあったのだが、医学に関してはまた別の教育システムであった。
それから小学校教員養成の師範学校というのもあったが、これもまた別のシステムである。
それは別の機会に。


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