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Episode 067 「ステファンと僕。及び、ハンバーガーの解体、について」

さて、アデレードハイスクール(Episode023参照)にも少しずつ慣れてきた。学校では色々あったが、放課後はどんな具合だったのか、について思い出しながら書いている。

放課後は、頻繁にステファンの家に遊びに行った。彼の部屋にはドラムセットがあり、また裏庭の離れにはビリヤード台が置いてある部屋もあった。それまで、ビリヤードなんてろくに(または全く)やったことがなかったので、一からルールを教えてもらう必要があった。どれだけ上達したかはわからないが、一応、誰かと対戦できるようにまでは上達した。

ほぼ毎日だろうか、ステファンの家に行ってはビリヤードをやったり、近くの公園でサッカーをしたり、彼のBMXで遊んだり、また、それこそ初めてのビールもステファンから学んだのだった。ある夏の日、我々は外から帰って来て喉がひどく渇いていた。ステファンが冷蔵庫から缶ビールを2本取り出し、その内の一本を私に手渡すや否や、彼は慣れた手つきで缶ビールのフタを開け、うまそうにグビグビと飲み始めた。その一連の動きは、あまりにもスムーズだった。全ての動きに、無駄がなく、頭で考えて動いている様子が全く無く。まるで、シャワーから出てきて、スムーズにタオルで身体を拭く動作の様に。要は、頭で考えずに、身体が全ての動作を記憶して動いているような感覚、である。

或いは「男は黙ってCoopers」なのかもしれない。
とか令和に言うと、不適切!と指摘されたりして。

私も、あとを追う様に真似して飲んでみたのだが、全くもって美味しいと感じず、ひたすら苦いだけであった。結局、一口しか口にしなかったビールの缶をステファンに手渡し、私は代わりにジュースをもらったのだった。当時、我々は16歳、あたりだっただろうか。今から遡ること約25年、2000年頃の話だ。

尚、比較的最近(大人になって)わかったことなのだが、オーストラリアの(人口に対する)ビールの消費量は世界でもトップクラスらしい。因みに現在は、ビールは好きで、カールスバーグ、ハイネケンを好んでよく飲んでいる。日本のビールだと、SAPPOROの黒ラベルであり、その理由は、「大人エレベーター」という(SAPPORO黒ラベル)の広告が好きだから、である。

この広告のシリーズには、私が好きなミュージシャン(奥田民生を始め、細野晴臣、坂本龍一、くるりの岸田繁、エレファントカシマシの宮本浩次、斉藤和義などなど)からその他大御所ミュージシャン(Charや佐野元春など)も出演しており、なかなかセンスの良い広告となっている。

尚、ステファンとは、どの様にして友達になったのかは憶えていないが、気付いたら仲良くなっていた。初めて(学校以外で遊ぶ、という意味で)週末に遊びに行ったのは、彼が住むNorwoodというエリアにある、The Paradeという大きな通りのサブウェイだった。映画館や様々なお店、レストランなどが集まる賑やかなエリアだった。

アデレードはNorwoodという場所にあるThe Parade。このNorwood Placeという場所にはよく行った。手前の、赤いパラソルに赤い椅子があるCafeは「Cibo」というチェーン店。その昔イタリア人がオーストラリアに移民で来た際に始めたカフェブランドだとか。尚、アデレードのカフェ事情はCiboを筆頭にローカルの力が強く、あのスタバもアデレードに進出したが撤退を余儀なくされた。尚、今から10年ほど前、このCiboを経営している親会社に連絡し、日本にCiboを持ってこないか、と話を持ちかけた事もあるが、実現はしなかった。この親会社が運営する別ブランドなら考えても良いよ、との返事をもらったが、やはり私としてはCiboでないと意味がないと感じたのでその話は断った。

サブウェイと言えば、フレッシュな野菜などが摂取できるサンドウィッチとして人気だったが、ステファンはパンにミートボールのみを挟んで食べていた。その時は気づかず、後に知ることになったのだが、彼は野菜を全く食べなかった。例えば、マクドナルドなどのチーズバーガーにしても、食べる前にバーガーを(多くの人は、そんな事はしないのだが)解体するのだ。

始めに、上のバンズ(パン)を取り、先ずはピクルスを当たり前のように取り出す。そしてバンズの裏に、ケチャプに混ぜ合わさった状態の角切りにされた玉葱が、申し訳なさ程度にパラパラっとついているのだが、それらをもしっかりと(バンズをバーガーが包装されていた包みに押し付ける形で)全部取るのである。すべて(とは言っても、本当に少量である)の玉葱を取り終わった事を確認すると、バンズをバーガーの上に戻し、食べ始める。

その一連の流れは、あたかもそういう行いをみんなが行っているかの如く、何の戸惑いもなく行っていた。それくらい、徹底して野菜を食べなかった。それだけ(つまり野菜を全く摂取しないということ)が原因だったかは不明だが、案の定、ステファンは肥満気味だった。

しかし、スポーツ(例えばラクロス、BMX、レーシング(ゴーカートの大きさだが、ゴーカートを更に本格化させたマシンを用いて行うレース)など、様々なスポーツをこなした)は得意であり、太っている事がマイナスになっていないように見受けられた。そう、School of Rock(スクール・オブ・ロック)という映画で、教師役を演じたJack Black(ジャック・ブラック)の様に。

映画「School of Rock」の主人公のJack Black。面白い映画だった。

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