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ショートショート 「誠心の精神科医」


「誠心さんどうぞ」看護師が僕を呼んだ。

診察室へ入ると、白髪混じりで細縁メガネをかけた小太りの精神科医がパソコンに向かっていた。

「どうぞ」と看護師が丸椅子を引いた。

座ると医者は調子はどうですかと聞いてきた。

「昨日も今日も嘘をつきました」と僕は言った。

医者はため息をはきチラリと僕を見た。

「なぜ?」と医者は言った。

「嘘つかないとやっていけないです」と僕は答えると、医者はキーボードを打ちはじめた。

「そうですか。それじゃあ次回は、嘘をつきたくなるシチュエーションをまとめてください」と医者は言ってキーボードを打ち続けた。

診察室を出ると看護師は次の患者を呼んだ。

まごころさんどうぞ。



時間を割いてくれてありがとうございました。

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