見出し画像

短編小説 「ゲイかもしれないけど、女子に恋をした」


高校生活における恋愛なんて、結局、ただの一時の熱狂でしかない。そんなことを常々考えていた俺、二宮恭平。人々が言うところの「恋愛」とは何か、それが全く理解できなかった。

同級生の女の子と一緒にいて何が楽しいんだ?ただ、キャーキャーうるさいだけの生物じゃないか。

俺は孤高の男として厳しい社会を生きていくんだ。

男の中の男として、カッコいい男に憧れる俺が好きなんだ。


ところが、ある日、その日常が少しだけ揺らいだ。

「二宮くん、放課後にちょっといい?」授業が終わり、隣の席の美月がこちらを見て言った。彼女はクラスのアイドルで、男子からの人気が絶えない。しかし彼女が俺に話しかけることはほとんどない。

「あぁ、いいよ」俺は軽く頷いてさらっと答えた。

「それじゃあ、放課後」彼女はにこやかな笑顔で手を振って教室を後にした。


うぅ〜わぉ!お母さ〜ん、俺、クラスのアイドルから放課後、誘われちゃったよぉ〜。
やばいよぉ〜、息が止まりそうだよぉ〜。どうしよう、やっべぇ〜!放課後が待ちきれないよぉ〜。


放課後


待ちに待った放課後がやってきた。

ようやく放課後だぁ〜、もおぅ〜授業なんて耳に入らなかったよぉ〜。もうなになに美月ちゃ〜ん俺になんの用があるのぉ〜?
声かけられただけでも心臓がバクバクしちゃうのに、放課後に呼び出されたら、心臓…止まっちゃうよぉ〜。

教室は俺と美月だけになった。彼女は恥ずかしそうに、俺の袖口を掴んで校舎裏に連れて行った。俺は何が始まるのか全く予想できなかった。

「二宮くん、私、あなたが好きです」彼女は言葉と共に右手をまっすぐ俺に向けて差し出してきた。


ハァー、フゥ〜、ハァー、フゥ〜、暑いよぉ〜、涼しいはずの校舎裏が真夏の砂浜のように暑いよぉ〜。
ハァー、フゥ〜、ハァー、フゥ〜、腕が震えてるよぉ〜、目の前が揺れているよぉ〜。
お母さ〜ん、産んでくれてありがとぉ〜!


「あぁ、そう、俺も好きだよ。じゃあ、俺たち付き合おう」彼女は大きく笑った。そして、俺はそっと彼女の手を握りしめた。


あ〜やべぇ〜、美月ちゃんの右手触っちゃったよぉ〜!美月ちゃんの右手温かくて柔らかい。あぁ、俺もう一生、右手洗わない。


「断られなくてよかったぁ〜。二宮くん、ゲイなんじゃないかって女子の間で噂になってたから、私になんかに興味ないと思ってたから」

あ〜、俺はそれを聞いて、あながち間違ってもいないなとも思った。


その日から、俺の恋愛が始まった。

孤高な俺を理解し、ゲイの可能性がある、いや、ゲイだと思う俺を受け入れてくれる美月に、俺は少しずつ惹かれていった。暗闇に漂っていた俺の心に、美月は一筋の光をもたらしてくれた。

恋愛が一時的な熱狂であるという考えは変わらなかった。でも、その熱狂の中に身を投じる勇気が、今の俺にはあった。だって、それは美月という光を引き寄せる力があるからだ。

まあ、これが俺の恋愛なんだろうなと、あたしは思った。



貴重な時間を割いてくれて、ありがとうございます。

この記事が参加している募集

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?