雨奈川ひるる | 短編小説

こんにちは、2022年11月11日から小説家デビュー。毎日1200字程度の短編小説を投…

雨奈川ひるる | 短編小説

こんにちは、2022年11月11日から小説家デビュー。毎日1200字程度の短編小説を投稿しています。ちょっとした時間に、さっと読める物語をお届けします。こんな恋愛したい、こんな日常を過ごしたいなど、心温まる小説を投稿しています。いつもの日常に、少しの非日常をお届けします。

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  • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ

    夢の中で喋るウサギとの不思議な出会いの物語です。

  • 短編小説|タコとイカの大冒険

    タコのタンクとイカのインクが主役の驚きと感動溢れる冒険小説をご紹介します。海底世界の絢爛とした背景に描かれた彼らの挑戦と友情は、読む者を深海の魔法に引き込みます。絆を深めながら未知の領域を切り開いていく二人のストーリーは、あなたの心を確実に掴むでしょう。

  • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ

  • 小説 「少年シリーズ」

    書いた小説の頑張る少年の話をまとめました。

  • 小説「この世界にごきげんよう」

    絶望と希望が渦巻く世界で生きる女性の物語

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短編小説 「建設現場のポニーテール」

その日は、梅雨が明けたのかと思うほど、お日様が憎たらしく輝いていた。雲ひとつない、空はとにかく青かった。いつもなら、そんなお日様や空を見れば嫌なことや悩みごとがスッと消えていくものだが、その日は違った。お日様と空が、この世からなくなればいいと思った。だけど、それを思ったのはその日が最後だった。 大学生の僕は建設現場の短期バイトをしていた。人手不足で、仕事はきつくて、口の悪いオッサンばかりで、汚かったけれど、金を稼ぐにはうってつけの場所だ。ただ重たい道具や資材を運ぶだけで、一

    • 短編小説 「タコの正義」

      海の中でタコの僕はボウズと呼ばれていた。正義のヒーローになることを夢見て、毎日海の安全を守るために一匹で自警団を結成し、パトロールを続けていた。海底の街は静かで美しかった。サンゴ礁が色鮮やかに輝き、小さな魚たちが自由に泳ぎ回っていた。僕はその美しい街を守るため、常に目を光らせていた。日々のパトロールは僕にとって使命であり、楽しみでもあった。 そんなある日、僕の住む街に大王イカが現れた。体は赤く巨大で、腕は長く、ギョロッとした目玉に、鋭い吸盤が並んでいる。その姿は圧倒的な威圧

      • 短編小説 「ベッドから散歩」

        ベッドから外を覗くと青白い空が広がっていた。すこし、窓を開けてみたら、湿気がこもったぬるい風が吹いてきた。散歩日和だと思うけど、窓を閉め、分厚い黒いカーテンを閉めた。 膝の上のiPhone13の真っ暗な画面を触れると、朽ちたデススターが現れた。YouTubeを開くとトップに「まずは散歩から」とサムネイルが表示された。「いゃあ、散歩はしないよ」と、興味なしと表示を消した。暇をつぶすのは簡単、適当に読みたい漫画や観たいアニメを検索すればすぐ出てくる、それを楽しめばいい。 違法

        • 短編小説 「宇宙人の恋愛」

          リビングのソファーに麻美が座っていた。黒髪ロングに前髪ぱっつん、母親譲りの優しいたれ目をした彼女は、柔道着に茶色ローブを身につけ、手にスポックのフィギュアを持ち、母親が構えるビデオカメラに向かって微笑んでいた。家の中に柔らかな光が差し込み、リビングは温かな雰囲気に包まれていた。 「誕生日おめでとう。何歳になった?」母親の声がカメラの向こうから響く。 「25」麻美は少し照れながらも、はっきりと答えた。視線は左に向いていた。壁に掛けられた家族写真が、彼女の幼い頃からの成長を感

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        短編小説 「建設現場のポニーテール」

        マガジン

        • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ
          3本
        • 短編小説|タコとイカの大冒険
          3本
        • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ
          2本
        • 小説 「少年シリーズ」
          5本
        • 小説「この世界にごきげんよう」
          3本

        記事

          短編小説 「ニートと医者」

          火曜日の朝、ミヨコが夜勤明けで帰宅した。彼女は救命救急医で、病院では常に緊張感にさらされている。風呂に入ってすぐにベッドで眠りにつく彼女を見送り、僕は静かにアパートを出た。今日はスーパーに行って唐揚げの材料を買う予定だ。 僕の名前はリョウ。25歳、ニート。僕にとって、ミヨコは理想的だった。彼女の家に住む代わりに、毎日彼女のために料理を作り、洗濯と掃除をする。それが僕の日常だったり ミヨコとの出会いは本当に不思議なものだった。僕たちが初めて出会ったのは、料理教室だった。ミヨ

          短編小説 「ニートと医者」

          短編小説 「プリントのお届けに向かいます」

          その日、中学校のテストプリントを森田に届けた。 六時限目の授業が終わって教室を出た時、赤いジャージ姿の中村先生に呼び止められた。 「これ、森田に届けてくれるか?」と、先生はテストプリントを僕に見せた。 森田は『引きこもり』だった。彼を最後に見たのは小学校六年の夏休みが明けた最初の登校日、それ以来一年以上彼の姿を見ていなかった。夏休み前は普通に登校していたし、普通に遊んでいた、なのに突然、彼は姿を見せなくなった。 「先生が届ければいいじゃないですか」と、僕は断った。それ

          短編小説 「プリントのお届けに向かいます」

          短編小説 「徒競走」

          その日、中学校の徒競走でビリッケツになった。 小学校一年生の時から徒競走で負け知らずだった、僕は女の子から注目の的だった。小学校では足が速いやつか顔がかっこいいやつがモテた。僕は足が速いということでモテていた。体格も他と比べて大きいわけでもなく、頭もいいわけでもない。むしろちょっと悪かったかもしれない。 徒競走以外にサッカーもすこし得意だった。得意といってもフォワードを任されるような能力は僕にはなかったけど、そこそこチームには必要な存在だった。 毎年のバレンタインデーに

          短編小説 「徒競走」

          短編小説 「湯船の彼女」

          その日、彼女は僕の目の前に座った。 大学の授業とアルバイトでくたくたに疲れた体を、自宅アパートの風呂で癒していたときのことだ。水面に浮かぶ薄い湯気が、室内の灯りに照らされて優しく揺れている。まるでその温かさが、僕の日常の重荷を少しずつ溶かしていくようだった。 そんな穏やかな時、ドアが静かに開いて、彼女のアイリが入ってきた。すぐさま僕は、手で股間を隠してしまった。まさか、彼女が突然入ってくるとは思わなかった。彼女は何事もなかったかのように、イスに腰をおろしてシャワーを浴び始

          短編小説 「湯船の彼女」

          短編小説 「満月」

          その日は、夜空に大きなヤマブキ色の満月が咲いていた。 自宅のカビ臭いガレージで古本を整理している時、小さな天窓から満月は見えた。その月の光が、何か古い記憶の扉を開けたかのように、僕の心に静かに降り注いでいた。それはまるで、時間を超えて、あの日の彼女との思い出が蘇ってくるようだった。 彼女の名前はミカ。大学時代、古書店でアルバイトをしていたときに出会った。彼女は文学部の学生で、僕と同じく古い本に魅せられた魂の同志だった。僕たちの関係は、その古書店の奥深くにある文学の森で育っ

          短編小説 「梅雨の海」

          僕たちは勝浦の海に来ていた。東京から二時間近くかけて、腕時計の針は午後三時を指していた。降りそうで降らない、梅雨の空の下、海は静かに時を刻んでいた。 海辺に着いたとき、彼女は茶色の髪を風になびかせながら、サンダルを脱ぎ、砂浜に足を踏み入れた。その瞬間、彼女の顔に広がる笑顔を見て、僕もつい笑みがこぼれた。どんなに気分が沈んでいても、彼女がいれば、何となく明るくなれる。 彼女が突然「海に行こう」と言い出したのは、今から二時間前のことだった。バイト終わりに彼女がそう言った。僕と

          短編小説 「梅雨の海」

          短編小説 「その日、ナプキンを盗んだ」

          その日、私はナプキンを盗んだ。ドラッグストアの生理用品の棚から、かさばらない小さいやつをカバンに入れた。グミとみかんジュースとウェットティッシュをセルフレジで会計を済ませて外に出た。ナプキンなんてたいした値段じゃない、買えるだけのお金もあったし、パパに頼めば買ってくれた。だけど私は盗んだ、もしバレたら早稲田大学の受験はきっと無効になる。 すぐにドラッグストアから離れ、近くの格安衣料品店に向かった。腿にじんわり温かいものを感じながら、黒のストッキングを履いていてよかったと思っ

          短編小説 「その日、ナプキンを盗んだ」

          短編小説 「深夜のお客さん」

          深夜のコンビニはいつも静かだ。LEDの明かりが冷たく降り注ぎ、時折、車のライトが差し込んでくる。僕は床を掃いてた、一方、レジにはマユが立っていた。彼女と僕はシフトが重なることが多かった。僕は時給が高いから深夜のシフト入れていた。マユはお客が少ないから深夜を選んでいた。 時計の針が夜の深さを告げる中、黒いパーカーに赤いジャージのパンツを履いた、20代くらいの女性が入店してきた。女性は入ってすぐ右の雑貨コーナーに向かった。僕はその様子を天井の鏡越しに見ながら床を拭きながら、女性

          短編小説 「深夜のお客さん」

          短編小説 「エレベーターの小言」

          エレベーターのドアが閉まる音が、またしても僕の耳に響く。八階までの短い距離だけれど、毎日のようにこの小さな箱の中で繰り広げられる会話が、僕にとっては一日の中で最も長く感じる時間だ。 「おはよう、今日もいい天気だね」と、隣に立つのは佐藤。 彼は会社で僕と同じくらいの立場で、仕事が好きで、それなりに優秀だ。そして、彼の口癖は「職場の人妻に恋してるから、仕事しに来てる」だ。この一言に僕はいつも苦笑いを返すしかない。何しろ、僕にとって仕事はただの義務であり、できれば避けたいもの。

          短編小説 「エレベーターの小言」

          短編小説 「カエルの日記」

          夕方、コンビニでのちょっとした買い物の帰り道、道端にアマガエルの緑色が、アスファルトの灰色に鮮やかに映えていた。 子供のころ、田舎でよくカエルを追いかけて遊んでいた。その頃の記憶が蘇ってきて、何となく、枝でカエルをつついてみたくなった。近くに落ちていた枝を拾い、そっとカエルをつついてみた。しかし、カエルは僕の期待とは裏腹に、ぴくりともしなかった。どうやら、動く気配はない。 「面白くないな」と思いつつ、何とかこの小さな生き物に何か反応を引き出したい一心で、コンビニで買った水

          短編小説 「カエルの日記」

          短編小説 「天使のことわり」

          空から地上を見つめることは、僕にとって日常の一部だ。人々の顔は小さく、彼らの営みは遠く霞んで見えるが、その心はまるで手のひらに載せた小石のように感じ取れる。僕は天使、人間界の不遇な人々に希望の光をもたらすために派遣された存在だ。 だが、この日はいつもと違った。 まるで呼び声に導かれるように、悠久の間へと足を運んだ。この場所は時が停まり、永遠が一瞬に凝縮される空間であった。光がすべてを覆い、静寂が支配する中、足音一つ響かせずに大天使が現れた。大天使の姿は壮麗で、翼は朝日を浴

          短編小説 「天使のことわり」

          短編小説 「ホワイトボードを買った日」

          今日、ホームセンターでホワイトボードを買った。4種類あったなかから、木の枠の裏面がコルクボードになってるホワイトボードを選んだ。アルミ枠のホワイトボードもあった、けど、軽いから木の枠のボードを選んだ。青と黒のペンも一緒に買った。ただ、黒板消しは買わなかった。理由は、余ってるよれた着なくなった服で拭けばいいと考えたからだ。 リビングの壁にかけた新しいホワイトボードに、僕は心地よい緊張を感じつつ、ペンを走らせ始めた。60×90センチの白い空間は、僕の頭の中を整理するための舞台だ

          短編小説 「ホワイトボードを買った日」